第 二 章 DESIRE(強き願い)
第六話 新しいホープ
春香ちゃんがご入院してから既に一年が過ぎようとしていました。
彼女はいまだにお目覚めになる事はありません。彼女の代わり一生懸命、翠ちゃんの姉をしていつもりでいます。香澄のあの件もありましたから・・・。
「詩織センパァ~~~イ、応援に来てくれたんですネェ」
言葉にしながら駆け寄って来ますのは翠ちゃん。本日は彼女の高校初、部活の関東大会です。彼女はその実力をお買われになり直ぐにレギュラーとなったのです。
既に第二の香澄とも囁かれているようですね。翠ちゃんはそうお呼ばれされる事に対してとても嫌がっていました。なぜなら現在、彼女は香澄の事を酷く嫌厭していましたから。
「翠ちゃん、体調は万全かしら?」
「ハイッ、勿論です!」
「詩織先輩の為に優勝狙っちゃいますよ!」
「嬉しい事を言ってくれますわね、頑張ってください」
「そう言えば、貴斗さんは来てくれないんですか?」
「貴斗君、今日のバイト外せないから無理だって申しておりました」
「残念ですぅ」
言葉にし、悲しそうな表情を翠ちゃんはお浮かべになりました。それを見た私は何とか元気付けようと思いまして彼女が喜びそうな言葉を選びそれを掛けて差し上げます。
「そんなお顔しないでください。貴斗君が、ですね」
「もし、翠ちゃんが〝優勝したら何かご褒美やる〟と言っていましたわ」
「ホントですかぁ?」
「エェ、本当ですとも!」
彼女の表情が一変して明るくなりました。実際、貴斗君はその様なことを口にしてはいません。私の出任せです。ですから心の中で〈貴斗君ゴメンなさい〉と謝罪しました。
「先輩見ていてくださいね、ぜぇ~ッたい、優勝して見せますから」
私の言葉が功を奏した様で彼女は満ち満ちた表情でガッツポーズを見せてくれました。
それから暫くして大会が開始したのです。
翠ちゃん、彼女は他の選手より三頭身分もの距離を離し決勝戦へと駒を進めました。
彼女のその実力を目の辺りにして、第二の香澄といわれるのも納得いくのですけど。
私は、翠ちゃんがそう呼ばれています事に、
〈私だって香澄と同じくらいだったのに〉と独りでぼやいてしまいました。
自分でそう思っていて、はぁーーーっ、なんだか虚しいです。
@ 決勝戦前のお昼休み @
翠ちゃんは私の隣で昼食を摂っていました。横から彼女のお弁当を除くと、少な目の量でしたがバランスの取れていそうな内容でした。
彼女も大会の時のお食事の量の配分はちゃんと考えている様でした。
「翠ちゃん、そのお弁当ご自分で作ったのかしら?」
「ハイッそうです。先輩ほどジョウズくないけど」
彼女のその言葉は自嘲しているようですけど表情は笑っていました。
「そのような事ないと思いますけど、バランスよく見えますわ」
「先輩には敵わないですぅ、あぁ~一度でいいですから詩織先輩が作ってくれるお弁当食べてみたいなぁ」
彼女は可愛らしく私に懇願してくれました。
「フフッ、そうして差し上げたいのは山々ですけど、貴斗君の許可を戴かない事には」
そのような全然関係ない事を翠ちゃんに口にしてしまいました。
「ハイ、ハイ、ご馳走様ですぅ」
やはり私の言葉に彼女は呆れる様子です。
「フフッ、ご冗談ですよ、次の機会にでも作って差し上げますわよ」
翠ちゃんの昼食が終わりますと休憩中、彼女とずっとお喋りをしていました。
お話内容はとても男の方にはとても申せる事ではありません。休憩も終わりに近づき彼女にハッパを掛けながら見送りました。
「ソロソロ、時間ですよ、決勝戦も頑張ってくださいね!翠ちゃん」
「ハァ~~~イッ」
翠ちゃんはそう元気よくお答えを返してくれますと手にしていましたお弁当箱を持ってその場から選手控え室の方へと向かっていきました。
午後の大会も無事終了し、翠ちゃんの大会の結果はともうしますと・・・・・・・・・、彼女の宣告通り優勝を収めましたのよ。
翠ちゃん、彼女を命一杯、お褒めしてあげました。それと同時に貴斗君にも勝手なお約束をしてしまって〈ゴメンなさい〉と深く謝罪。でも、貴斗君ならお許しになってくれますよね?アハッ。
〈本当にゴメンなさい〉
今一度心の中で謝りました。
貴斗君にお逢いした時そのことをお話しました。ですが結局、色々と愚痴をおこぼしになりましたけれど、最後に 〝渋々〟とです、けど承知してくださいました。
私の言動をお許しになってもくれました。私の恋人はとても理解のある人。とてもうれしくおもいますのよ。
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