夏休みスペシャル大作戦①

夏休みが始まって一週間。



「私、このために宿題を一週間で終わらせたんだからっ」

「あーはいはい、すごいねー晴香ちゃ〜ん」

「ねえ、それは馬鹿にしてるよね完全に」

「バレた?」

「うえーん!」

「ごめんごめん」


「おーい」

「やっほー」

「あっ!来た来た!!」



私たちは、いつも使う鉄道沿線のアミューズメント施設に来た。



「俺、ボーリング初めてかも」

「ほんと?じゃあ三本智也が教えて差し上げよう」

「奏美はやったことあるか?」

「うん、一回だけね」

「じゃあ奏美に教えてもらおうかな」

「おい!俺は!?スルーなの!??」

「わ、私なんかより智也の方がずっと上手いんじゃない?」

「じゃあ、上手く教えろよ〜」

「分かってるって」



ちなみに、私は以前

佳月に告白されている。

まだ私と将にいのことは

三人に話せていないから、

当然佳月も知らないわけで。



「きゃっ」

「おっと、大丈夫?」

「あ、ありがと…」

「うん…」



未だに時々、

なんとなくぎこちない感じになってしまう。

それこそ、今日こうして遊ぶのが

かなり久しぶりなのだ。

ちゃんと友達に戻れているのか、不安だ。



「ああー、私がビリだああ」

「初めてだけど芦野よりは上手かったな」

「智也はさすがの高スコアだね」

「奏美も二回目にしてはなかなかですぞ」

「もうー悔しいー!もう一回!!」

「げ、まじか」

「よっしゃ!やるぞー!」



勢いに乗って2ゲーム目。

晴香も私の真似をして、少し上手くなった。



「きゃー!見て見てストライク!!!」

「晴香すごい!!やったじゃん!」

「俺まだストライク取ってない…」

「あれれー?あんなに自信満々だったのにー?」

「うるさいなあ、そういう佳月だって……あれ?」

「俺もう二回目取ってるよ、見てなかったの?」

「静かすぎるんだよー!

 ストライク取れたらもうちょっと騒ぐだろっ」

「俺は騒がないタイプなんだよ」

「あーもうっ、絶対取ってやる」



カランカランっ



「あっ…」

「智也それ…スプリットじゃん…」

「スプリットって?」

「ピンとピンが隣合わずに離れて残ってる状態のこと」

「えっ、それってすごい難しいやつなんじゃない?」

「任せろ、俺はスプリットに愛された男なんだ…」

「そういや中学んときからそれ言ってた気がする」

「おりゃあああっ」

「「「おおー!」」」



見事、四回連続スペアを達成。

でも未だストライクは無し。



「よし!私もストライク!」

「すごい!次でターキーじゃん!」

「智也には負けないよっ」


「いいなーいいなー、私もそこに混ざりたいなー」

「俺たちは人生で2ゲーム目なんだし、

 無理すると肩壊すぞ」

「それも嫌だ…」



三本と冴島、熱戦の末に勝ったのは…



「佳月…お前……」

「なんか、新しい才能を発掘したみたいだね、私達」

「ストライクいっぱい取れちゃったんだよね…」

「だから静かすぎるんだよ!!」

「はあああ、結局佳月くんもそっち組じゃーん」

「晴香だってさっきよりスコア上がったじゃん!」

「でもさあーー」



初心者に連続2ゲームはかなり堪えたらしく

二人そろってベンチでぐったりしてしまった。



「佳月、大丈夫か?」

「ああ、平気平気」

「もう〜旦那が心配してるじゃん」

「はあ!? 旦那って何だよ…」

「芦野の言うことだ、気にしない気にしない…」

「ちょっと佳月、寝ちゃわないでね?」

「奏美がいるのに寝ねぇよ…」

「なんだよそれ、俺の前だとグースカピーのくせに」

「それは智也だからだよ」

「こらこら〜お二人とも夫夫喧嘩はよして♪」

「ふ…ふう、ふ……」

「さっきから何言ってんだー」



晴香がかなり攻めているが、佳月は全く動じない。

対して智也は、あからさまに狼狽えている…?



「と、とりあえず私、飲みもの買ってくるよ」

「あ、俺も行く」


佳月が即座に腰を上げた。でも


「いや!俺が行く」

「え…?ああ、そう」

「奏美、行こ」

「えっちょ、智也っ?」



まるで佳月から私を遠ざけるみたいに、

手首を掴んでグイグイ引っ張られた。

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