夏休み編

『今の素直な気持ち』

晴香の企み

「聞いて欲しいことって、何なの?」

「ふふふ…それはだね奏美くん…うふふっ」

「あのー、その若干気持ち悪い笑い方やめよ?」

「えー、今どっかの博士風に笑ってみただけなのにー」

「どっちかっていうとストーカーみたいだった」

「うそーん」

「で、早く教えてくれない?」

「ふふっ…実はね奏美くん

 私は今、夏休みスペシャル大作戦を練っているのだよ…」

「夏休みスペシャル大作戦??」



さっぱり訳が分からなかったが、

とりあえずその作戦とやらを聞いてみることにした。



「佳月くんと智也って仲良しじゃん?」

「まあ、二人は幼馴染だしね」

「なんだかんだ言いながら、いつも一緒にいるじゃん」

「そうね、なんだかんだ言いながら」

「でもなんか、最近智也の様子が変なんだよね」

「変?どんなふうに?」

「こう…そわそわしてるっていうか」

「そわそわ…?」

「あれ、絶対佳月くんのこと気になってるんだ!って思って」

「…え?」

「だから、いっそのことくっつけちゃお〜って…

 「ちょっと待って?」 え?なに?」



ん?えっと、え?

思考が全く追いつかないんだけど。

それはつまり…



「智也は佳月のことを好きなんじゃないかってこと?」

「いやいやいや、そこまでは言ってないけど」

「くっつけるって?そのまんまそういう意味?」

「そういう意味」

「…ええ?」

「どお?いいカンジでしょ?」

「いや…その…」



呆れてものも言えない…。

そういうのって大体、

「あの二人、もう付き合っちゃえばいいのに〜」

みたいな人達にやるやつでしょ?

智也はさておき、佳月はそういうの嫌がりそうだし…。



「っていうか、晴香は佳月のこと好きだったんじゃないの!?」

「うーんなんかね…自分でもよく分かんないんだけど…」

「結局は推しだったってことね」

「まあそんな感じかな!」

「別に四人で遊ぶのは全然構わないけど…」

「じゃあオッケーってことで!」

「そうなる!?」

「なるなる♪」



じゃあね〜!と軽やかに

晴香は電車を降りて行った。



┉┉┉┉┉┉┉┉┉┉┉┉┉┉



次の日。私は、智也の様子を観察することにした。

晴香が言っていた「様子が変」というのは少し気になるからだ。



「おはよう、奏美」

「佳月、おはよ

 智也もおはよう」

「おはようー!」


「ねえ奏美」

「ん?」

「首の跡、消えてきた?」

「ああ、これ?うん、まあだいぶね」

「そう…よかった

 暑くなるしさ、気になるじゃん?」

「ありがとう、気にかけてくれて」


「………」



首の跡と言うのは、耳の下くらいある電流痕のこと。

あんまり思い出したくないけど、六月に誘拐されたとき

スタンガンで犯人に付けられたものだ。



「佳月!自販機行こうよ」

「え?俺飲みもの持ってるけど…」

「いーから!

 奏美!ちょっと借りてくね〜」

「あ、うん!」



うーむ…。



「どお?怪しくないっ?」

「おぉ…びっくりした…

 まあ確かに、なんか視線を感じるような…」

「でしょでしょ?

 私なんてこの前、怒られたんだよ?」

「怒られた?」

「いつも通り佳月くんに話しかけてたら、

 佳月が迷惑してるだろって」

「まあ間違ってはないと思うけど…

 でも珍しいね、智也って割と晴香と似てるじゃん」

「え〜?それはなんか嬉しくないなぁ…」

「それはさておき、智也はなかなか怒らないからね?」

「でしょ??やっぱり何かあるんだよー

 すこーしは、気になるでしょ?」

「うんまあ…すこーしは?」



気にならないと言えば、嘘になる。

もし二人が本当に付き合ったら

それこそ学校中がパニックになるだろうな…。



「なーにコソコソ話してるんだよ」

「あっ、佳月」

「今ねー、奏美と恋バナしてたんだ〜」

「恋バナ!?やっぱり奏美…お前…」

「いやいやいやっ、違う違う!!」


「………」

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