第二章 名のある討伐者たち
第9話 迷宮都市
第二章開始です。
どんな内容になるかは……見切り発車の作者にもまだわかりません。ぇ
◇――――
傭兵団の鏡花水月と共に、街道脇にある石造りの休息所を出発し、順調に街道を進んでいく。
「迅人、そろそろ迷宮都市が見えてくるぞ」
ガーベラの見ている視線の先を見ると、視界を遮っていた森が開けた先には……巨大な石造りの外壁が見えてきた。
「あれが私達が住んでいる町、アルファング共和国の首都がある『王都エレメンタリア』だ。神々の迷宮都市へようこそ」
「うわぁ、めっちゃでかいんだけど」
迅人が驚く姿を見て、ようこそと笑いながら歓迎してくれる団員達。
まるで中世ヨーロッパに出てきそうな、頑丈な石造りの高い外壁があって、遠目にはお城のような建物まで見える。魔物の居る世界だと、あんなに立派な外壁が必要なのかなぁ。
馬車の旅を一緒にしている間に、色々な話しを聞いた所によると……。
この大陸は四方を海で囲まれていて、危険な海の魔獣が潜んでいる。内側には、神々が作ったと言われる迷宮の傍に大きな都市や街が3つあり、資源が豊富な王都からは、別大陸への交易船が出ているみたいだ。しかし、人々が暮らしている領域は小さく、大陸内にあるほとんどが『未踏破地域』と言われる、危険な魔物の住処になっている。
有名な場所だけでも……『大鬼の住処』と言われる、先程通ってきた街道の反対側方面にある、自然そのままといった感じの巨大な木々や植物が生えている大きな森や、守り人達が暮らしているという『迷いの森』、さらには高い山々が連なる『竜の住処』など、多くの危険地帯があるみたいだ。
アルファング共和国には国王がいて、他には守護の一門と言われる、魔物の脅威から人々を守ってきた、有名な5つの武家の人達がいるようだ。
出会った時にガーベラや団員達にも聞かれたけど、黒髪に武家風の衣装を着ているせいで、初めはどこの武家の人なのかと聞かれて、別大陸の遠い地からきた旅人だと、誤魔化しながら説明するのに苦労した。
首都に入ったら、何度も間違われないように、ちゃんと服装にも気を付けないとなぁ。
大きな門構えがある首都の入り口には、迷宮都市の守備隊という人達が居て、魔物の脅威がないか常に警戒しながら、あやしい人が居ないかチェックしているみたいだ。
魔物の討伐者のような、武器や防具を装備した人々がちらほらと見える門に近づいていく。
「こちらは傭兵組合所属、4等級の傭兵団、鏡花水月。私は団長のガーベラだ!」
「うむ、お勤めご苦労。通ってよし」
ガーベラが胸元に隠していた証明書を取り出して、入り口の門番へと見せながら会話をする。
きびしい入場の検査があるわけでもなく、軽く馬車の中や通過する人々の身分証の確認をするだけで、わりとあっさりと通してもらえるみたいだ。
大きな薙刀のような形状をした武器を持つ門番達に見送られながら、迅人も入口へと向かう。
「門番さん、初めて首都に来たんですが……私は身分証を持っていません。首都で討伐者組合に加入すれば大丈夫だと聞きました」
「うむ。では、仮の身分証を渡すので、受け答えに正直に答えるように」
入り口のすぐ横にある所で、名前と出身地、首都に来た目的について答えるだけで、すぐに名刺のような四角いカードを渡されて、無事に入場する事が出来た。
名前については、苗字の神楽木というのは隠して、迅人とだけ答えた。出身地は、適当にヤマトって言っちゃったけど、大丈夫だったかなぁ。
この国では、供用語の文字として……何故か日本語の『ひらがな』が伝わっているみたい。うちの家のご先祖様も、この異世界でずっと暮らしていたみたいだから、何か関係があるのかなぁ――
「ようこそ、王都エレメンタリアへ」
「はい、ありがとうございます」
迅人は門番へと丁寧に挨拶を返し、傭兵団のみんなの元へと駆け出す。
「待っててくれてありがとう。無事に入れたよ」
「ふふっ、よほどあやしい奴でもなければ大丈夫さ。それじゃさっそく、うちの傭兵団の経営してる宿屋に向かうよ」
時刻はいつの間にか夕暮れ時。迅人は傭兵団のみんなと一緒に、夜になる前に宿屋へと向かう。
本当は、始めて来た迷宮都市の中を、色々と見て回りたい気持ちはある。それでも……夜中にあせってもしょうがないので、まずは紹介された傭兵団の宿屋で一泊してから、これからの事は決めようかな。
鬼の討伐をした時に、手助けのお礼としてもらった銀貨3枚のお金。さらに宿屋では、休憩所での訓練で、珍しい技術を教えてもらったお礼として、無料で宿屋に泊まらせてくれる事になるなど、本当に傭兵団の人達には助けられる事ばっかりだ。
人と人の繋がり、この傭兵団との良縁は大事にしていきたいなぁ――
「団長っ、お帰りなさい!」
「おう、ただいま。みんな無事に帰ってきたぞ」
他の鏡花水月の団員達が待つ、宿屋へと帰ってきた一行。
どこかほっとするようなアットホームな感じの雰囲気に包まれながら、迅人も他のメンバーに紹介されながら、みんなの輪に加わる。
「迅人は客人として、いつでもうちの宿屋を使っていいからな!」
「はい。まだ来たばかりでわからない事だらけなので、とうぶんはお世話になります」
さすがに、無料で宿屋に泊まるっていうのは申し訳ないから、早く仕事を探してお金を稼げるようにならないとなぁ。そんな事を内心で思いながら、さっそく大広間で始まりだした宴会へと、迅人は引っ張られていく。
まだまだ異世界に来たばかり。
まさか転移してきた初日から、こんなにも濃い一日が待っていたなんて、迅人は予想もしていなかった――
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