第 三 章 高校 最後の夏

第十二話 Night Knight Takato

2001年8月1日、水曜日

 午後9時を過ぎようとするプール場。そこには香澄と詩織以外の水泳部員は誰もいない。

「ネェ~~~、香澄。そろそろ私達も、切り上げましょう」

 彼女達はどちらも国内記録保持所の為、学校側から時間外のプール場、使用許可が認められていた。

「エ~~~ッ、ネエ、もう少しだけ泳いでからにしようよ」

〝まだまだ練習したりない〟という表情で香澄は幼馴染みにそう返していた。

「駄目です、関東大会はもう直ぐなのですよ。無理して、体の調子悪くしたら元も子もないでしょう?」と正論を言って香澄がこれ以上続けようとするのを止めた。

「ムぅ~~~、分かったわよ」

 不貞腐れながら詩織の言葉に彼女は従った。

それから、彼女達はシャワー室で体を洗い流し制服に着替え、戸締りをきちんと確認してプール場を後にした。

「アぁ~~~、もう、泳ぎした後の髪のお手入れは大変です」

 まだ半乾きのロングの髪を触りながら彼女、詩織は不満を漏らし、

「だったら切ればいいじゃない」とそんな不満を漏らす詩織に香澄は面白そうにそう言っていた。

「香澄、意地悪を言わないで下さい。私がこの長さ、お気に入りしていますことをお知りになっているはずなのに・・・、酷いです」

 その言葉を口にしてから彼女は顔を膨らませながら香澄を見た。

「アハハッ、ゴメンしおりン」

 他愛のない会話を交えている内に彼女達は校門近くまで辿り着く。部活専用プールから校門までの距離は学校自体も大きいことが相まって結構あり徒歩で一〇分近く掛かってしまう。

「しおりン、見て、あそこに誰かいない?」

 分かりにくいくらい、僅かに表情を恐怖に強張らせ、訝しげに香澄が校門前に人影があることに気づき不審に思って詩織に尋ねた。

 彼女がそう言うと詩織は前方に見える人影を確認した。

「貴斗君ッ!」と呼び自分の恋人だとわかると嬉しそうに急に走り出した。

「エッ、貴斗だって?・・・、待ってよ、しおりン!」

 香澄も詩織を追いかけそちらへと向った。

 詩織がその人影の前に立つと、すぐに彼女の幼馴染みも追いついてきた。

「遅かったな」

「貴斗君、もしかしてずっとここでお待ちになっていたのですか?」

「ほんの僅かな間だ・・・、隼瀬も一緒だったのか」と無感情のまま、簡単に答える彼だった。

「何で、アンタがココに居るのよ?」

「隼瀬には関係ない」と質問してきた彼女に面倒臭そうな表情でそう答えるだけだった。

「何よ、それ?アンタ説明するのが面倒だからって、その言いようはないんじゃないの」

 貴斗のその言いに香澄は顔を膨れさせながらそんな彼を見ていた。

 そして、そんなやり取りをしている二人を隣で見ていた詩織は小さく笑う。その後、彼の代わりに彼女が香澄に説明をし始めたのだ。

「大会も近いし、8月に入りましてから、遅くまで練習することを夏休みお入りした後、彼にお話したのです・・・、そうしたらですね、一人で帰路を歩きますのは危ないでしょうからお迎えに上がってくれますと、貴斗君が言ってくれたのですよ」

 上機嫌で彼女が香澄に事の経緯を教えていた。それを聞いた香澄が貴斗をからかうような表情を向け言葉をかける。

「アラァ~、貴斗クン、おやさし~~~ことぉ。詩織姫のナイトになった気分はどう?」

「だっ、黙れ」と言われた彼は頬を軽く紅く染めぼそっと呟くと歩き出した。

「聞いています私も恥ずかしです」と言って歩き出した彼を追いかける彼女。

「アッ、待ってよ、二人ともぉ~~~!」

 置いていかれそうになる自分に気づき香澄もまた二人の後を追った。それから、二人に追いついた彼女は話を続けていた。

「でも、貴斗ってこう言う所とっても気が利くわね」

「どういうことですか?」

「いくら彼氏だからって、態々こんな時間に迎えに来てくれないわよ、普通は。学校が家から近くてもね」

「ハッ、もうしわけございません、貴斗君」

「オマエが気にすることじゃない。俺が勝手にしている事だ」

 彼は無愛想に詩織にそう言って聞かせていた。

「ウン、有難うございます貴斗君」

「今のアンタ、不器用だけど、ちゃんと考えながら行動しているみたいね。変わらないね、アンタのその優しさ、むかしっから・・・・・・」

 最後は聞き取れないくらい小さな声で彼女は呟いていた。

「ネッそうでしょ、しおりン」

「はいッ。香澄の言う通り、私もそう思います」

「アぁ~~~、なんだか、こんな時間に貴斗と一緒に帰っているとあの時の事を思い出しちゃうワぁ!」

 香澄は苦笑いを浮かべながらそう言葉にした。貴斗が何の事を言っているのか気付く。

「まだ、あの時のこと気にしているのか?あんなこと思い出さない方がオマエの為だ、さっさと忘れてしまえ!」と淡々と彼女に口にしていた。

「何の事をお言いになっているのですか?」とどちらに問いかけているともなく彼女が二人に尋ね、其れに返すように、

「ある事件を切掛けに今の貴斗とよく話す様になった事よ・・・・・・・・・、しおりンにはちゃんと話しておくべきだわ。

その出来事がなかったら今頃、こうしてしおりンと貴斗が一緒になる事なんて無かったかも知れないしね」

 香澄がいつになく冷静な口調で言い切った。貴斗は黙って香澄を見つめる。彼女の意志の強そうな瞳に負けて、彼女の言動を制止する事を諦めた。それを理解した彼女がその出来事について話し始めた。


*   *   *


 それは4月の終わりごろ遅くなった部活から帰ろうとする香澄のことだった。

「アぁ~~~ん、もうこんな時間」と腕時計を確認する彼女、時刻は午後7時32分。

「無理して 、こんな時間までやるんじゃなかったぁ~、しおりンと一緒に帰ればよかったよぉ」

 そうボヤキながら、誰もいない学校を後にしようとする。この時間、街灯は有る物の学校の回りは鬱蒼とし静寂だけが周りを支配していた。

「アぁ~~~、なんかこの感じ嫌だヨォ」とそう呟きながら、小走りする彼女。

 人前では勝気な彼女も怖いものはある。心霊やお化けと言ったオカルト物はとても苦手だった。

 学校帰り、しかも辺りが真っ暗だと、ツイツイそんなことを思い出してしまうのが人間の記憶の不思議な所である。そして、彼女も例外ではなかった。

『ガサ、ガサッ!』

 桜の瓣の散った木々の枝が風に揺られて少しザワメク。それに脅えた彼女の歩調はいっそう早くなっていた。

「うぇ~~~ん、怖いヨぉ~~~。しおりンの馬鹿ぁ、一緒に帰ろう、ってもっと強引に言ってくれれば、あの時、アタシもこんな時間までむりして練習しないで一緒に帰ったのにぃ」

 後悔する様に独り言を口にして、彼女は下を見ながら早歩きで歩いていた。幾つめかの路地を過ぎ去ろうとした時、突然暗闇から人影が現れる。それに気づいた彼女はそちらの方に振り向くがその瞬間、言い様の痛みが彼女の首筋を襲った。

「ウゥっ!」とそう言ってそのまま彼女は気絶してしまう。当て身をした人物は倒れた香澄を路地の暗闇へと引きずる。

「コイツが隼瀬って奴なのか?」

 ペンライトで彼女の顔を確認する男が一人。

「・・・、確認取れたぜ、間違いない」

「大丈夫なのか、マジでこんな事、して?」

「見つかんなきゃなにやってもいいだよ」

「あの人の命令だ、仕方がない」

 当て身を喰らわした人物がそう呟く。

「さて、好きにしていいってあの人に言われたけど。どうする?」

「バぁ~~~カ決まってんだろ!」

 四人いる内の二人の男がニヤニヤしながら気絶している香澄にいやらしい視線を送っていた。

「オイ、気絶しているところを犯っても、面白かねぇから起こしてくれよ」

 その四人の中で一番屈強そうなその男は何も言わず香澄の背中の丁度中央を両手で強く押すと彼女は息を吹き返した。

「ハッ!」と香澄は気が付き次の言葉を発しようとすると、すかさず一人の男が口に何かを詰めその声を抑えた。

 両腕は後ろに回され押さえられたままだ。

 香澄はどうにか切り抜けようとじたばたしようとしていたが、いくら彼女の腕っ節が良くとも男四人に対して女一人ではどうすることも出来なかった。

「隼瀬ちゃん、君に恨みはないけど楽しませてもらうよ」

「いいから、早く犯っちまおうぜ!」

「ウンがなかったな」とそれぞれ不気味な笑顔で彼女の体を触り始めた。

 香澄が危険に晒され様としている丁度その頃近くの坂道で何かを探している男がいた。

「シットッ!クソっ、何処に落とした!」

 その男は学校の帰りに落としたと思われる財布を探していた。マグライトと呼ばれるアメリカでFBIや警察が使っている警棒代わりになる大型の懐中電灯で辺りを照らしながらそれを捜していた。

「デムッ!大枚が入っているときに限ってこうだ」

 その男は一人呟きながら真剣に当たりを照らし自分の財布を探していた。

 色々な所をライトで照らし地面を探っていると彼の財布以外の何か大きなものが地面に落ちている事に気が付いた。

 それを不審に思った彼はそこへ駆け寄って落ちている物に目をやりる。それは香澄のスポーツバッグだった。しかし、この時、彼はそれが彼女の物であると言うのを知るはずもなかった。

 ライトを照らし落ちていたものを訝しげな目で見ながら拾い上げそのバッグを確認した。

「ウンッ?このバッチ何処かで見たことある様な・・・?」

 少し考え込むとそれは自分の通っている聖稜の校章バッチだと気づく。

「何でこんなものココに?」

 不審に思って周りを見るが誰もいない。その男はもう一度確認する。しかし誰もいないし気配も感じられなかった。

「気のせいか?」

 その時、彼は何か呻き声らしき物を聞いた。彼の耳はかなりいい方である。それは彼自身も認めていた。

「何か今、聞こえなかったか?」

 そう自問自答する。彼は自分の直感に任せ、その声が聞こえて来た方へと走り出した。

 辿り着いた彼はその場の光景を見て、一瞬取り乱すがすぐに冷静になる。平静な声で、

「お前等、そこでなにやってる?」

「アンッ、今取り込み中、あっち行ってろ」

「なんだ、お前も俺等の仲間に入れて欲しいのか?」

「そろそろ、打ち込んでもいいんじゃないのか?」

 部外者が居るのを気づいているのか、いないのか、気にも留めず香澄を捕らえている者達は己の欲求に身をまかせていた。

「だったら俺も、混ぜてくれ」

 抑揚のない淡々な声で言うとズボンを下ろそうとしていた男の首を掴んで勢いよく後方へと投げ飛ばした。その行動でやっと他の連中も異質な彼の存在に気づく。

「なっ、なっ、なんだぁ~、手前はぁ?」

「・・・。サぁ、なんでしょうかねぇ?俺も自分の事よく分からないし」

「なめてんのかっ!」と言って二人がかりで彼に襲い掛かってきた。

 淡々とした口調の男は二人の攻撃を難なくかわし、連続で二人の顔面と腹部に蹴りを入れる。さっき突き飛ばした男が起き上がり、ポケットから警棒取り出す。それを伸ばしマグライトを持った男に襲い掛かった。

『ガシッ!!』

 殴りかかられた男は自分の持っていた大型ライトでそれを受け止める。さすが鉄フレームで作られたライトだけあって難なく、相手のそれを受け止めていた。

「ナッ!」とその男は驚愕の色を浮かべる。

「さすが、メイド・イン・ユナイテッドステーツだッ!」

 暴漢の攻撃を受け止めた男はそんな風に小さく呟いていた。彼は相手が驚いている一瞬の隙を突き、警棒を持っていた方の手を蹴って、それを落とす。それから、自分の持っていたライトで思いっきり相手の大腿を殴りつけた。

『バスッ!』と音を立てて男の太腿にそれはヒットした。

「ウグェッ!」と殴られた相手はそう呻き太腿を押さえながら蹲って地面に伏せた。

「ヘヘッ~~~、やるじゃん、オマエ」

 香澄の首筋に手刀を食らわした男が不敵な笑みを浮かべながら突然現れ、三人をあっという間に倒した男を睨んでいた。

「血が騒ぐ!いくっぜぇ~~~」と気合を叫び入れると彼との間合いをいっきに詰め殴り掛かってきていた。

 香澄のピンチに現れたその男はそれを先ほどと同じく難なく回避する。相手は幾度となく拳や蹴りを放つが彼は避けるばかりで攻撃しようとしない。彼は相手から少し遠のいて様子を伺う。

「てめぇ~~~、なめってんのかっ!」と苛立ちの形相無愛想な表情の相手を睨みつけた。

 攻撃をかわすだけのその男は頭をポリポリと掻ながら仕方なしという感じに構えを取ろうとすると、サッキまで倒れていた男の一人が彼を羽交い絞めにした。

だが、彼は全然動揺するそぶりも見せない。

「俺が押さえているからささっと殺っちまえよ」

「そいつすげぇーーーっ、むかつく。そのまま押さえてろよっ!」

 相手は間合いを詰めようとダッシュした。

「羽交い絞めは身長差がある程度ないと意味がない」

 長身の男はそう呟くとタイミングを計ったように後ろの相手に背負い投げをした。投げられた相手は勢いよくダッシュしてきた相手に両足で踵落としをする状態で前に投げ出された。

「グファッ!!」と一番体格のいい暴漢仲間の一人はそれを頭部にまともに喰らって地面に崩れ落ちる。

「ウッ!」と投げられた方は地面に叩きつけられ呻きながらのた打ち回る。

 だが、頭部に踵落としを喰らった男が頭を押さえながら、すぐに立ち上がった。

「痛っ~~~!」と立ち上がった男は頭を摩りながらすまし顔の相手を睨んだ。

「タフだな。まだ続ける?まだやると言うのなら・・・・・・、さっさと、そいつ等、連れてココから消えろッ!」と言って、拳に力を入れ様な姿を見せると凄く冷酷な目で暴漢達を睨んだ。

「チッ!覚えてろよッ!!」

 お決まり捨て台詞を言って他の奴等と起き上がる気配のない一人を抱えながらその場を去っていった。

(後日、徒党を組んで本当に仕返しに来たが本気を出した彼の前になすすべなく病院送りとなった。彼は軽い怪我を負ったくらい)

 去って行く男達を彼は確認すると、香澄を助けたその男は呼吸を整えるために口を開いた。

「フゥ~~~ハぁ~~~」

「ひろゆきなの?な分けないわよね、声違うし・・・」

「何か言ったか?」

 助けてやった女の子が何かを呟いていたが、その男にはよく聞き取れなかったようだ。

 彼のその問いにその少女は答えを返してくる事はなかった。

 四月も、もう終わりだというのに彼の口からは白い吐息がもれる。まだ夜は寒い事を意味していた。息を整え、襲われていた女の子の方に近づいたが・・・、目のやり場に困った彼は直ぐに背を向ける。

 彼は自分の着ていたパーカーとワイシャツを脱ぎ、振り向かないで彼女に渡した。

「着ろッ!」

 白い吐息を漏らしながら半袖になったガタイの良い男は無愛想な口調で見えない香澄に自分の服を着るようにと投げ渡した。

 香澄の方からその男が白い吐息を漏らしていることが確認できる。

「それじゃ君が・・・」

「心配ない・・・、自分の心配をしたらどうだ。そんな格好じゃ、目のやり場に困る・・・」

 感情の篭っていない言葉で彼は答えていた。

「アリガトォ・・・」

 無残になった自分の制服上を脱ぎガサ、ゴソっ、と音を立てその男から借りただぼだぼな服を着始め、其れが終わる。

「こっち、向いていいわよ」

 着替え終わった彼女は暗くてまだハッキリと顔の見えない男の人に向かってそう言葉を投げかけた。

 依然として地面に座ったままだが、それを聞いて彼は香澄の方を振り向く。そして、振り向いて彼の顔を確認した香澄は、

「イッ!フジワラ、藤原貴斗君よね?」

 驚きながら月の初めに転校してきたばかりのクラスメートの名前を呼んだ。不審に思った貴斗が冷静に彼女に尋ねた。

「なぜ、俺の名前を知っている」

「エッ!分からないの?カ・ス・ミ!」

 彼は首を傾げながら思い出そうとしたが分からない様子だった。

「同じクラスじゃない3年C組の隼瀬香澄」ともう一度、彼女は自分の名前を告げた。

「スマン、クラスにいる奴の名前も顔もまだ良く覚えていない」と彼は淡々とそう彼女に対して謝罪するだけだった。

「それじゃ、今からアタシの事、ちゃんと覚えてねっ?」

 今まであった事など忘れたかの様な笑みで彼女は助けてくれた彼にそう言った。

「努力する」

 そんな香澄のお願いに彼は簡単に答えるだけだった。そして、その答えを聞いた彼女は笑いながら、口を動かし、

「ハハッ、なによ、それって」

 だが、笑っていながも一向に立とうとしない香澄を貴斗は不思議に思って躊躇せず、彼女に手を差し伸べていた。

「立てるのか?」

「エッ、アリガト」

 その女の子は彼の手を握る。それを確認すると彼女の腕に負担が掛からないように引き起こしていた。しかし、立ち上がらせたのも束の間、彼女は再び地面にまた座り込んでしまう。

「ハハッ」と空笑いしてその女の子は下を向いてしまった。

 立って歩ける状態でないのが分かった彼は彼女に背を向けしゃがみ込むと、声を掛け、

「のれっ!」

「でっ、でも・・・」

 その女の子は恥ずかしくて躊躇するがそんな彼女を無視して彼は勝手に香澄を背負い始めた。

「キャッ」

 吃驚した彼女は声を上げてしまったけど、

「有難う、タカト」と言って彼に背中にピッタリとくっ付いた。

 そして、それを確認した彼が自分のペースで歩き出す。

「何処に向かえばいいんだ?」

「三戸駅」と甘えるような口調で彼女は貴斗に行き先を告げた。

「了解」と彼は答えを返して方向を定めて歩き始める。

 途中置き去りにされていた彼女のバッグも忘れずに彼は拾って行ってく。

「ネェ~、タカト?アンタは寒くないの?」と心配そうな声で彼女は彼にそう尋ねた。

「死ぬほどじゃない」

 彼はその女の子を背負っている為それ程、寒さを感じていなかった様だ。

「なによ、それ。ハハッ」

「今まで全然話したことない。俺の事を名前で呼ぶとは、ご挨拶だな」

 香澄は彼の言った言葉に疑問を感じて、

「全然、話したことないか・・・」と呟いた。

「名前で呼んじゃ駄目?」と駄々をこねる口調で彼女は彼にそう尋ねていた。

「・・・、お前の自由にしろ」

 その後、駅に到着するまで会話は無かった。

 何度かすれ違う人達に冷やかしの視線を浴びせられていたが貴斗は一向に動じることもなく、香澄は香澄で嬉しそうな表情を浮かべていた。彼は彼女を背負っていたからどんな表情を香澄がしているなどと知る由もなかった。それから、しばらくして二人は駅の改札口に辿り着いた。

「もう大丈夫、ココでいい」

「そうか」

 抑揚のない声で彼は香澄にそう答える。そういうと彼はユックリとしゃがんで彼女を下ろす。彼女の方に振り返った。しかし、彼女は一向に立つ事が出来なかった。

「・・・、ニャハハハッ」とその女の子は苦笑すると下を向いてしまった。

「フッ」と香澄を鼻で笑うと、

「何処の駅だ?」と降りる場所を聴いていた。

「でっ、でも・・・」

「さっさとしろ!」と急かす様に彼女に要求し、

「くっ、国塚駅」とそんな彼の言葉に彼女は申し訳なさそうな顔で答えをかえしていた。

「そこで待っていろ」と口にすると彼は切符の自動発券機の方へ走っていった。

 貴斗は駅の名前と料金を確認し小銭入れから有り金、全部を出して二人分のキップを買い香澄の所へと戻ってくると無言のまま彼女に背を向けしゃがみこんだ。

 今度はその行為を素直に彼女は受け入れ、彼に身を委ねた。それから、貴斗は香澄が背に乗った事を確認した。まばらにまだ人が居る駅内の視線など無視して有人の方の改札口へと向かう。

「有難う、タカト」と彼女は小さく呟く。

 彼は自動改札を通らず、駅員に2枚切符を渡しスタンプが押されるのを確認すると国塚方面のホームへと向かった。

 香澄は貴斗が駅員に切符を渡そうとした時、定期券を持っている事を言おうとした。でも彼の好意に甘んじることにした。二人は電車に乗り国塚駅へと向かった。

 国塚駅到着後、電車を降りる際、貴斗は香澄に歩けるかどうか確認してきた。彼女が車内で首を横に振ると彼は国塚駅からも彼女を背負って行くと言ってきた。

「どっちに向かえばいい?」と彼は背中に乗せている香澄に行く方向を尋ねた。

「あっちぃ~~~」と彼の背中から彼女は腕を伸ばし向かう方向を教えた。

 暫くしてから彼の事を知りたくて彼女から急に話し始めた。

「ネエ、タカトここら辺の風景見覚えない?」

「何で急にそんな事を聞く?」

「いいから、答えて!」

 彼の性格は全然違うけど彼女が知っている幼馴染みと同姓同名だったから、ただそれだけの理由でそう聞いてしまっていた。

「ない」と再び、無感情に答えを返すその男

「そっ、そうなんだ」

 彼の即答を聞いたその女の子は淋しそうな口調で残念そう答えていた。彼女は話を切り替え別のことを聞き始める。

「ネエ、どうしてクラスで誰とも話そうとしないの?」と彼女にとって最も知りたかったその事を彼に尋ねた。

「・・・・・・・・・・・・、記憶喪失」と小さく呟く様に彼がそう彼女に答えを返す。

「エッ?何?今何って言ったの」と彼の呟いた言葉にその女の子は耳を疑った。

「記憶喪失って・・・、それどういう事?」

「言葉どおりの意味だ」

「そうじゃなくて、どうして記憶喪失なの?ッて聴いたの」

「今日、初めて話した奴に教えられるはずもないだろ」

「どうしてヨッ!教えてくれないと、首絞めるわよ!」

 そう口を動かすと彼女は裏に倒れる様な感じで彼の首を絞め始めた。

「お前程度の力で俺が落ちることはない」と言ったのも束の間だった。

「ゥッグ!」

 彼女を背負っている事も相まってさすがの彼もやばい状態に陥りそうになる。

「言う気になった、タカト?」

「それに、お前って呼び方、女の子に対して失礼だと思わないの?」

「隼瀬、分かったから緩めてくれ」

「分かればよろしいぃ~~~」

 香澄は不敵な笑みで貴斗にそう答えた。だが、彼にそんな表情をしている彼女を見る事は出来ないのだが・・・。

「ゲホッ、ゲホッ、隼瀬、オマエ強引だ」

「フフン、残念だけどアタシが強引なのは生まれつき」

「もう一度聞くわよ、どうして貴斗は記憶喪失なの?」

「・・・・・・・・・、俺にも分からない」

「エッ、何よぉ、それ全然、答えになってないじゃないっ」

 その返答に訝しげに香澄は貴斗に問いただした。

「自分の名前だって覚えていなかった」


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「俺がこれから言うこと信じるか信じないかは、隼瀬、自分で判断しろ」

「うん」

 彼女は彼の言葉に小さく頷く。彼は不満そうに過去の回想を語り始め、物語は更に時間を遡る。

2001年3月22日、木曜日

 新東京国際空港、気が付くと藤原貴斗は成田空港の入国検査入り口前で立っていた。

 彼の隣で一人の女性が携帯電話を使って誰かと連絡をしている。

「エぇ~、たった今到着して入国管理局の前にいる処よ。大丈夫、ちゃぁ~んと彼、保護しているわ。彼を無事に家まで届けたら今回の任務は終了でいいのよねぇ。うんじゃっ了解!」

 そういい終えてから、その女性はセルラーフォンを切った。

「ゴメンね、待たせた?」とニコヤカな顔で彼女は待たせていた貴斗にそう聞いてきた。

「アナタはいったい?」

「エッ、なにを言っていの貴斗ちゃん?そんな、冗談言ってお姉さんを困らせないで」

 そう口にしながらも不思議そうな顔つきでその女性は彼を見ていた。

「タ・カ・ト?・・・、それが俺の名前なのか?」

「どうしたのよ、急にそんな事を言い出して?本気でお姉さんを困らせる気?」

 神妙な顔つきでその女性は貴斗を見つめるがしかし、彼は呻き頭を抱えていまう。

「オッ、俺はいったい誰なんだ?」

 貴斗はそう口にするとその場で意識を失った。それから、暫くして彼は目を覚ます。

「っう」と言って体を起こし周りを眺める。

 彼の目の前にさっきの女性がラフな格好で座っていた。

「ここは?」

「気が付いたのね。気分はどう?君、自分は誰だか分かる?」

 貴斗はその女性の質問に軽く首を横に振って答えた。

「そう」

 彼の答えに落胆したように彼女が簡潔に言葉を返していた。

「OK、私の自己紹介からするわね。」

「私は神宮寺麻里奈。それと、ココは貴方の新しい住まいよ。分け合って職業は言えないけど、勘弁してね・・・、歳は24歳、スタイルはB91・W58・H93。ヘヘッ、中々なスタイルでしょ」

 そう麻里奈と名乗る女性は自慢するが貴斗の反応は冷ややかだった。

「何よ、その態度はお姉さんに失礼よ」

〈神宮寺麻里奈、UNIO(ユナイテッド・ネイション・インベスティゲイト・オーガニゼーション)国連調査機関に所属する捜査官。UNIO(ユニオと発音する)は国連常任理事国によって密かに組織された軍事兵器抑止及び調査機関として設立された物、平たく言えばアメリカや各国の軍事国家の軍事強化を抑える機関。他にもICPO(国際刑事警察機構)と協力して行う捜査もある。麻里奈の階級は特殊第二捜査官(第一級と第二級の間)補則終わり〉

「ゴメン・・・・・・、なさい」

「素直で、可愛いわ、許してあげる」と言いながら麻里奈は貴斗の頭を撫で撫でする。

「かっ、からかうな。それで、俺の名は?」

「お姉さんの言うこと聞いてくれたら、教えてもいいかも」

「それなら、遠慮する」となぜだか身の危険を感じた彼はすかさずそう答えていた。

「そっけないわね、全く」と彼女は彼をからかうのをやめ本題に入る事にしたようだ。

「君の名前は藤原貴斗、今年の9月で18歳、弱冠17歳にしてキャリフォルニア大学バークレイ校、工学部4年生に籍を置く・・・、置いていた、秀才。身長188㎝、体重78㎏、身長の割に痩せ方。空手、柔道、剣道とそれ以外にも幾つか格闘技を習っていたから均整の取れた体格。顔立ちは・・・、私好み」

 そう口にして麻里奈は嬉しそうに貴斗を見つめてきた。だが、そんな彼女をまた彼は冷ややかな目で見返していた。

「貴斗ちゃん、そんな目でお姉さんを見ないで・・・・・・、悲しくなっちゃうわ」

「オッホン!」と態とらしい咳払いをして話を先に進めさせようとした。

「つれないわね・・・。お姉さん、悲しいわ・・・、まあ、そんな事、今はどうでもいいわ。で、私の言った事に偽りはないからね」

 麻里奈は言葉をそこで止めるとパスポートらしき物を貴斗に見せてきた。それを確認してから、彼は言葉を口にした。

「名前、生年月日は本当らしい」

「他の事も嘘じゃないのよ」

「証拠は?それに俺自身がそんなに優秀な男だったと実感できない」

「そんな事いっちゃ駄目よ、本当に貴斗ちゃんは優秀な子なんだから。でも、ゴメンね、貴斗ちゃん。それは職業上答えられないの」と申し訳なさそうな顔で彼女は答えた。

「企業秘密って奴ですか・・・・・・・・・、追求しても駄目なんだな」

 そう言葉にすると直ぐに彼は簡単に諦めた。

「物分りのいい子で助かるわ」

 そう言ってから彼女は少し間を置いて真剣な表情でまた麻里奈は話し始めた。

「貴斗ちゃん、今からお姉さんが話すことは君にとって悲しいことだと思うけど・・・、ちゃんと聞いてね」

「アッ、ハイッ」とその真剣な彼女の表情を見て貴斗は少し緊張した表情で答えていた。

「残念な事だけど、貴斗ちゃんの両親とお兄様がなくなられたわ」

 一瞬、彼女の顔は深く悲しみに包まれたが、貴斗には気づく事さえ出来なかった。

「・・・、理由を教えてくれないんだろう」と彼は余り驚いていない表情で彼女に聞いた。

「ゴメンなさい・・・、それより余り驚いていないのね」

「何も、覚えていないから・・・、悲しみがわいてこない」と沈んだ声で麻里奈に答えた。

「そう・・・、誰か貴方の記憶に覚えている人はいる?誰でも良いわ」

 その問いに貴斗は横に大きく首を振ってかえした。

「そう、完全な記憶喪失のようね。記憶喪失の原因も分からないのね。手がかりなしか・・・、困ったわ、どうしたらいいのかしら?」

 真剣な表情で麻里奈は考え込んだ。だが、しかし、名案が浮かばなかったのか彼女は重要なことを彼に話した後、4月からの学校のことなどこれからの事について指示をした。

「お姉さんがいったこと、出来るだけ守るように・・・、いい、わかった?」

「努力する」

「それじゃ、私、これから仕事に戻らなくちゃいけないから、ここらへんでおいとまするわね」

「仕事、頑張って下さい」

「アリガト。貴斗ちゃん、記憶喪失だからってふさぎ込んじゃ駄目よ。前向きにネ!」

 別れの際に玄関口でウインクをして麻里奈はその場を出て行った。


                ・


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「・・・・・・これで俺が覚えていることは全部だ」

 彼は香澄に覚えている事、総て話した積りだった。

「・・・ゴメン。嫌なこと思い出させちゃったね」

 彼の両親が亡くなっている事を知って酷くショックを受けた彼女はそうとしか答えられない。

「隼瀬が謝ることじゃない」

「でっ、でも・・・」

「いいんだ、気にするな、俺も隼瀬にこの事を話して少し気分が楽になったような気がする」

「・・・そう、よかった」と安堵した口調で貴斗にそう口にしていた。

「ネエ、貴斗、話し戻すけどさ・・・、何で友達作らないの?」

「自分が誰とも分からない俺みたいなヤツに友達が出来ると思うのか?」

「そんなの作ってみなきゃ分からないじゃない」

「出来たとしても俺の事、本当の友達とは思ってくれないさ・・・・・・、本当は違う。怖いんだ、思い出をなくすのが・・・」

「それ、どう言う事なの?」

「仮に友達が出来たとして月日が経ち色々な思い出を共有する仲になったとする。だが、ある日突然、記憶を取り戻し今まで過ごしてきた日の事を全部忘れてしまう・・・・・・、悲しすぎる」

 香澄はそれを聞いて少し怒った口調で貴斗を諭し始めた。

「どうしてそうなるのよ?そんな事分かりっこないじゃない」

「・・・、わからない・・・、でも、そう感じてしまう」

「馬ぁッ鹿じゃないの、そんなことあるわけないでしょう」

「酷い言われ様だ、俺、ハハッ・・・、分かった、少し前向きに考えてみる」

「うん、うん、そうしなさい、そうしなさい」と彼女は強い口調で貴斗を励ました。

〈しかし、翌日の貴斗はその言葉とは裏腹に全然変わっていなかった〉

 香澄がそういい終えると彼女の家が目に入って来た。

「あそこ、がアタシの家!貴斗、もう少しだから頑張って!」

 無邪気に彼の背中で彼女はそう言葉にしていた。

「フ~~~、やっとこの騒々しさから開放されるのか」

「なによぉ、それぇ」とイジケタ口調で香澄が答えると丁度、彼女の家の前へと到着した様だ。

「着いた、下ろすぞ?」と言葉にして、心配しながらそっと彼女を地面に立たせ様とした。

「・・・、もう平気みたい。ねえ?貴斗。あっちのお屋敷見てどう思う?」

 そう彼女は尋ねて、正面の大きな屋敷を指差した。

「何にも」

「そう・・・」 彼女は淋しげにそう口にしていた。

 彼女は彼が自分の幼馴染みであると確信するのにさして時間は掛からなかった。何故?その事は既に彼女の両親にある人物から伝わっていたからだ。そんな彼女の言葉に貴斗は不思議そうな顔をしたが、彼は何も言葉にはしなかった。

「ちょっとここで待っていて、この服返さないとね!」とそう言い残すと彼女は微笑みながら家へと入っていた。

「ただぁいま~~~」

「ずいぶんと遅かったのね、心配していたのよ」

「ゴメンね、お母さん、私、貴斗に・・・」

 そんな会話を聴いた彼は安心して彼女が出てくる間も無くその場を去って行ってしまった。帰る電車賃も無くなった貴斗は線路沿いを歩いて数時間かけて帰宅したのであった。それから翌日、彼女は勝手に帰って行った事を追及し色々と彼を詰っていた。


~ ~ 澄の回想から現実へ ~ ~

「それで、その次の日、詩織が拾った貴斗の財布をアタシに見せてくれたのよ」

 彼女は詩織に自分の憶えている事を全部話し終えた。

「・・・申し訳、御座いませんでした。なんだか辛い事を二人に思い出させてしまったみたいですね、わたくし」

 沈んだ表情を作り彼女は香澄に謝っていた。

「しおりン、何謝ってるの?とうに吹っ切れてる事だから、気にしないでぇ~~~」

 あっけらかんとした表情で彼女は詩織にそう答えていた。香澄がこう蟠りなく答えることが出来るのも彼女を助けたのが元幼馴染みの貴斗だったからかもしれない。他の人間だったら今の彼女は居ないかもしれなかった。

「ホラッ!貴斗、アンタもなにか言ってあげなさいよ」

「詩織、隼瀬もああ言っている。お前が気に病むことない」

「ウン。でも・・・、ずるいです、私の知らない所で香澄、貴斗君にそのような事をしていただいていた何ってずるいです」

 彼女は可愛く膨れた顔を作って貴斗と香澄にそれを見せていた。

「だったら、しおりン、貴斗に頼めばいいじゃない。アタシも抱っこ、してってねぇ~~~!オォ~~~ホッホッホッ」

 香澄はからかいの笑みで詩織を見る。それを聞いた詩織は自分が何を言葉にしたのか気付き、瞬間湯沸し機の様に頭から蒸気を噴出し顔を真っ赤にし、少し涙目な状態で香澄をボコポコと叩きながら彼女をなじっていた。

「香澄のいじわるぅうぅうぅうう」

「ハハッ、しおりン、痛いよ」と痛くも無いのに詩織にそう言って笑って返していた。

「貴斗、しおりンを何とかして」

 彼はそんな二人を見てやれやれという表情を見せた。

「ネエ、話変わるけど、貴斗?」

 そう言ってベソヲかいている詩織の頭を撫でながら彼に何かを訪ねる言葉を掛け、

「しおりンを迎えに来る事にしたのは、アタシがあんな事にあったから?それで、しおりンの事が心配になったからよね」

「それは・・・」

 貴斗の紅くなりながら口ごもっていた。

「あ~~~、いいなしおりン、こんなにも心配してくれる彼氏がいて」

「ハイッ!」と先程までの態度とは裏腹に彼女は顔を綻ばせ、上機嫌で返事をした。

「貴斗、もしアタシがしおりンと同じように迎えに来てって頼んだらOKしてくれた?」

「お断り」

「何よぉ~~~、即答する事ないじゃない、なんで~~~」

 彼女は顔を膨らませながら彼に問いただす。

「隼瀬の性格を良く知ったからだ」

「ひっどぉ~~~い、貴斗、アタシの事どういう風に見ているのよぉ~~っ!」

 嘘泣きをするポーズを彼女はとって見せた。

「そんなポーズとっても教えない」

 彼等のやり取りを聞いていた詩織は可愛らしく笑いながら恋人に言葉をかける。

「貴斗君、その様な事をお口にしたら香澄に失礼ですよ」

「そうだ、そうだ!」と自分を慰めるかの様に貴斗に追い討ちをかけるようにそう言葉にした。

「あぁ~、俺が悪かった、チッ。だったら、隼瀬も彼氏作ればいいだろ」と最後ボソッと呟く。

 それを聞き逃さなかった香澄はねだる様に口を動かす。

「だったら誰か紹介してよ、貴斗」

「残念ながら、俺の男友達は隼瀬も良く知っている宏之と慎治だけ」

「しってるわよ、そんなこと。からかって言ってみただけ」

「アッ、そうですか」

 そして、無愛想にしているその貴斗は香澄に冷やかされながら帰路を辿って行くのだった。

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