第10話 優季とアンデッドたちの日常②

 優季がバルコムに助けられてから2年半がたち、優季は12歳になった。身長は147cmに成長し、胸も大分膨らんで女の子らしい体つきになり、ますます美しくなった。


 今、優季はマヤに髪を梳かしてもらいながら、魔力を体に巡らせている。2年間の訓練で、魔力を体に巡らせることができるようになり、いくつかの魔法も使えるようになった。


「ありがとうマヤさん」


 マヤは優季に似合いそうな可愛らしい服を出してきたが、「今から、助さん格さんと訓練だから」と言って、練習着に着替えた。


 この2年間、優季は毎日欠かさずに体を鍛え、剣や魔法の訓練に勤しみ、空いた時間はバルコムが差し入れてくれる様々な本を読んで勉強している。そして、暇を見つけては望のお墓参りをして、その日あったことや面白かったこと、悲しかったことを語りかけるのであった。そして、最後に必ず


「お姉ちゃん。お姉ちゃんからもらったこの命、大切に使わせてもらっているよ…」と伝えるのだった。


「今日は格さんか、手加減しないよ」

『フフフ、この無敵の拳を味わってみなさるか』


 格さんから繰り出される無数の突きを剣で躱しながら、優季は間合いに近付こうとする。しかし、格さんはそれを許さず、蹴りを入れてくる。まともに受けた優季は間合いの外に吹き飛ばされ、地面にしたたかに体を打ち付けてしまう。


「う、ぐうっ…」

『うはは、その程度か!』

「う、ぐぐっ…」


 起き上がった優季は覚えたばかりの魔法を使う。格さんに向けて突き出した手から漆黒の霧が生み出され、格さんの周囲に広がった。


『うぬう! 猪口才な!』


 視界を奪われた格さんは、優季の位置をつかむことができず接近を許してしまうが、拳士のカンで優季を攻撃してくる。優季は何発かくらいながらも接近し、ついに格さんに一撃を入れる。


「やった! 格さんに勝った。初めて勝った!」

『お見事でした。魔法を使われると圧倒的に不利になりますな。戦いに当たって魔法が使えるのと使えないのでは雲泥の差が表れます』


「うん、でもあまり魔法に頼らないように、もっと体を鍛えたいな」

『その覚悟、お見事ですぞ』


 ある朝、優季はお腹がじくじくとして中々寝台から起きられなかった。心配したマヤが優季の部屋に来てみると、泣きそうな顔をしてマヤを見つめている。


「マヤ~、お腹が痛くて、お股から…。どうして? ボク病気なの…」

 

 察したマヤは優季を起こし、トイレに連れていく。そして、密かに準備していたヘソまである亜麻布と羊皮紙で作った生理用品、地味パンツを持ってきて、優しく優季に教えるのだった。


『ユウキ様、大丈夫ですよ。ユウキ様は大人になって、子供が生めるようになったのです。じきに慣れますよ。ただ、しばらくは運動を控え、おとなしくしていてください』

 

 マヤの話を聞いて、優季は改めて自分は女の子なんだと感じた。男であった年月より女として生きる年月の方が長くなる。少し悲しくなったが、覚悟は決めている。


 マヤに付き添われ、リビングの椅子に腰かけて本を読むことにしたが、お腹がじくじく痛んで集中できない。青い顔をした優季を見て助さん格さんが絡んできたが、マヤに怒られ、這う這うの体で逃げて行った。


 ある日、バルコムが訪れ、『こんなものが手に入った』と掃除のコロコロに似た魔具を置いて行った。何でも、依然調べた廃城から手に入れた荷物の中に紛れ込んでいたものが出てきたらしい。調べたら古代の美容器具のようだとのこと。


『ユウキが使うがよい。わしには不要なものだ』


 早速、その晩のお風呂でローラーになった部分を体に当てて転がしてみた。びっくりしたことにロ-ラーを当てた部分のムダ毛がきれいになくなり、肌がつるつるになったではないか。優季は面白くなって、体中にローラーを這わせて楽しんだ。最近、キレイになることに抵抗がなくなってきている。布の面積が小さい下着も平気になった。


『お嬢様、あまり長く風呂に入ると体に毒ですぞ』


 格さんから声がかかるまで、長風呂をしていることに気づかなかった。



「いやあああ!」


 気合とともに優季が横薙ぎに木剣を振るうが、助さんはその軌道を読み、木剣を当てて躱す。優季は横に薙いだ勢いで体を回転させると、袈裟懸けから切り上げ、突きの3段技を打つ。


『お嬢! 大分できるようになったな! だが、まだまだだ』


 優季の技を防いでいた助さんが攻勢に転じる。凄まじい速度の剣戟に優季は防戦一方になる。(このままでは押し負ける。なら!)優季は覚悟を決め、視界を封じるべく、漆黒の霧を放つ。


『なんの!』


 しかし、助さんは素早く漆黒の霧の効果範囲見切り、霧を躱すと優季に切りかかる。


「くっ!」

 優季は横っ飛びに躱すと同時に優季めがけて木剣を振りぬいた助さんに闇の力で体を縛り付ける魔法を放つ。


『おおっ』

 体の自由を奪われた助さんは勢いあまって地面に転がる。動きを封じられた助さんに木剣を突きつけ、勝利を高らかに宣言した。


「私のかちー!」


『見事だ。だが、魔法を放つタイミングがまだまだだな。勝負は引き分けだ』

「何でよ!」

『動きを封じる魔法を放つ直前、俺の剣がお嬢に届いていたのさ』


 優季が下を向くと訓練服の胸の部分がブラジャーまで切り裂かれており、かわいい胸が丸見えになっている。


「うきゃあああああああ!」

 黒の大森林に優季の悲鳴が響き渡るのであった。


 ある雨の日、優季はマヤと一緒に自分の部屋にいる。マヤは優季を着飾るのが何より好きなので、優季の訓練のない日はこうして、自作の服を着せてファッションショーをするのだ。優季はもともと男の子だったので、しばらくは激しく抵抗していたが、マヤが悲しそうな顔をするので、付き合っているうちに、段々「女の子」らしさに目覚めてきていることもあり、マヤが喜ぶならよいかと思うとともに自分も楽しむことにしている。


「今日はどんな服を用意したの?」


 マヤは『むふふ』と笑うと沢山の下着を出してきた。


「ま、まさか…」

 

 色とりどりのブラジャーやパンティ。どれも可愛いワンポイントリボンやフリルが付いている。そしてパンティは明らかに布の面積が少ない。

 

「いや、これは…。マヤさん、無理だよ無理~」

 

 全力で抵抗するものの、結局はマヤに押し切られ、かわるがわるマヤ自作の下着を着させられるのであった。

 そして、下着をつけ、恥ずかしさのあまり真っ赤な顔で泣きそうになっている優季を陰から覗き見る助さんと格さんは、満足そうに頷きあうのだった。

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