第五十四話 猫のコスプレおっさん(国王)!? 登場

「アンタ達。いちゃつくなら別の場所でしなさい」


 仁王立ちで上から睨みつけるミイナ。その体からは怒りのオーラが溢れている。


「はぁい。お姉ちゃん」


 頭に山のようなタンコブのある天使が、ひざまづきのまま、子供のように片手を上げながら返事をした。


「違うんだミイナ! 俺は天使なんかこれっぽっちも興味はないんだ!」


「はいはい」


「信じてくれよ!」


 同じく頭に山のようなタンコブがあってひざまづきされている俺は、天使との関係についての誤解を解こうと必死に訴えるが、ミイナはまともに取り合ってくれない。


 なんでだよミイナ。こんなの……こんなのあんまりだろ……。

 ほのぼのした態度の天使と、必死な態度の俺に、ミイナは呆れながら、ため息を吐き。


「いい。ここは王宮なのよ。一応この国で一番神聖な場所なのよ。アンタ達も子どもじゃないんだから、態度とか行動とか気をつけなさい」


「はぁい」


「ジン、返事は?」


「……わかったよ」


「じゃあアザセル起こすから、大人しくテーブルについているのよ」


「はぁい」「……おう」

 

 最後にそう注意をした後、メイドから少し大きめの紙をもらうミイナ。

 なにする気だろう。

 俺の疑問に答えるように、ミイナは紙を縦に折り畳んでいき――。


 「よし完成。

 アザセル、いい加減起きなさい!」


 パシン!


 紙で作ったハリセンで、アザセルの頭を叩いた。

 それにより、石のようになっていたアザセルの体にヒビが入ったような錯覚とともに、意識を取り戻す。


「ハッ! 私は…………………………コホン」


 周囲を見渡して、なにもしていない俺と天使を見て安心したアザセルは、動揺を隠すように咳払いを一つして、キリッとした表情で口を開いた。


「では、陛下の御前へと案内いたします。私についてきてください」


 アザセルの言葉に従い、俺、ミイナ、天使、リンリンは後ろからついていく。

 が、俺はリンリンのステータスを見た後だったので、リンリンから10メートルは離れて歩いていた。


「ジン。なんでそんなに遠いのよ」


「ジン様。どうかしましたか?」


 ミイナとリンリンが離れて歩く俺を見て、不思議そうな顔をしながら声をかけてきた。

 リンリンもミイナに負けず劣らずの美少女だけど、エンペラーゴブリン以上のステータスを見た後だから、今はリンリンの背後に巨神兵が待機しているように思えて怖くてしょうがない。

 とは本人には言えないよな……。

 困っていると、俺の心を読んだ天使が――。

 

「ジンくんは王様に会うから緊張しているだけなの。だから気にしないでって言ってるよ」


「ふうん。そうなの」


「そうなのですね。流石は天使様、ジン様の心を読んだのですね」


 天使が心を読めるなんて教えていないのに、あっさりと正解を言い当て、天使に賛辞を送るリンリン。

 やっぱりスゲェなリンリン。本当かどうかは知らないけど、英雄と認められる人間は伊達じゃないな。

 ……ちょっと怖いけど。


 数分後。


「到着しました」


 豪華そうな扉の前に立ったアザセルが、深呼吸をした後、大声で言う。


「陛下! 客人をお連れ致しました!」


「おお、来たか! 入って入って!」


「失礼致します!」


 国王の態度がフランク過ぎてアザセルとは全然違うが、アザセルは気にしていないようにうやうやしく扉を開ける。

 部屋の中は、ザ・玉座の間って感じで、一番奥には国王が座っており、周囲は兵士が武装して立っている。

 が、俺達が部屋の中に入ってすぐ、その一番奥にいた国王が席を立ち、笑顔でこちらに近づいて来た。

 そして、ミイナの前で立ち止まり、嬉しそうに話しかけてきた。


「よく来た。会うのは数年ぶりだなミイナ。父親に似ず、母親に似てますます美しくなっているじゃないか。国王は嬉しいぞ」


「ええ、国王様こそお変わりのないようで嬉しいですわ」


 丁寧なお嬢様言葉でミイナは返答する。


「はっはっは。お世辞が上手くなったなミイナ。国王は嬉しいぞ」


「うふふ。光栄ですわ」


 笑顔で再会を喜ぶ国王とミイナ。一見それは普通の微笑ましい場面のように見えるが――。

 しかし。30代半ばくらいの年齢で、ガタイのいい国王の頭には何故かメイド喫茶とかで見るような猫耳が生えており、お尻からは猫の尻尾が生えていた!

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