第四十三話 天使とサダン(お義父)さん
コンコン。
扉を叩く音がして、極道風の着物を着たサダン(お義父)さんが部屋の中に入ってきた。
「害虫に餌やりは順調か『もう一人の娘』よ」
「あ、はい。今日も美味しそうに食べてくれてますよ『オヤジ』」
「そうかそうか。それはよかったな」
「はい。えへへへへ」
俺の知っている魔王のような雰囲気ではなく、まるで聖職者のように穏やかな笑みを浮かべながら、
記憶の無い一週間の間に、天使しか扱えない奇跡とやらで再生させたらしいが、そのことがきっかけとなり、サダンさんは天使のことを『もう一人の娘』と呼び、天使はサダンさんを『オヤジ』と呼び合う仲になっていた。
「パパ。この天使に会う為だけにここに来たの」
天使がサダンさんに優しくされているのが気に入らないのか、不機嫌そうに声色強めで話しかけるミイナ。
娘の凄みにビビりながら、天使の頭から手を離し。
「ち、違う。ミイナ……と害虫の二人宛に『国王』の野郎から手紙が来てたんだ」
「国王様から!?」
「俺宛に!?」
「誰が勝手に喋っていいと言ったかコラァ!」
「ごめんなさいっすーーーーーー!」
視線だけで俺死ぬんじゃないかと思わせる迫力で睨まれた。
ううう、天使にはあんなに優しいのに、なんで俺だけ。
「大丈夫。ジンくんには私がいつでも優しくしてあげるから」
「むぐぅ」
「なっ!?」
子供をあやすように、「よしよし」と天使が胸を顔に押しつけながら抱きついてきた。
「ちょっと天使、ジンから今すぐ離れなさい!」
ミイナが天使の体を引っ張るがピクリとも動かない。
「くふふ、鎧装備の無い『お猿さん』レベルの力ではジンくんは離しませんよ」
「だ、誰が『お猿さん』ですって!? きーーーー!」
『お猿さん』と言われ、悔しそうに天使の背中をポカポカ叩くミイナ。俺は天使の胸に顔を埋めながら、(真の天使のミイナに『お猿さん』は失礼だろ。この『虫』風情が)と天使に伝える。
すると天使は色っぽく「あぁん❤️」と声を出しながら、愛おしそうに優しく、かつ力強くぎゅっと俺を抱きしめ。
「私が『虫』でジンくんもオヤジにとっては『害虫』だから一緒だね。嬉しい❤️」
チュッと頭にキスをしてきた。
カチーン。
キス+天使からの害虫発言により、俺の怒りは臨界点に達した。
そろそろここらで暴力的に誰が上か教えてやるぜ、
「おりゃ!」
「きゃん」
俺は力づくで天使を引き離した。
俺の心を読んでいるから何されるか理解している天使は、頬を染めながら「はぁぁん、はぁはぁ」と呼吸を荒くして、目をハートにしながら「いつでも……シていいよ」と四つん這いになって胸を前面に出しながら伝えてきた。
そうかそうか。それならお望み通り。
俺は拳をグーにして、この一撃に全てを込めるようなパンチを天使の胸へと打つ!
「誰が『害虫』だぁああああああああ!」
「貴様だ、この害虫がぁああああああ!」
「ぶへぇえええええっ!」
ドオォン!
横からサダンさんに殴られ、前衛的なアート作品のようなポーズで部屋の壁にめり込んだ。
「ふぅ。危なかったな、もう一人の娘よ。怪我はないか」
「……はい。助けてくれてありがとう。オヤジ」
「そうかそうか。よかったな」
殴られてないのに若干落ち込む天使の頭を撫で、笑顔のままミイナの頭も一緒に撫でながら。
「ミイナ。手紙を渡しておくから読んでおけ」
「う、うん。パパ」
「よしよし。じゃあパパは自室に戻る。
害虫への餌やりは程々にな、ミイナ。もう一人の娘」
爽やかに手を振り、壁にめり込む俺には死神のような殺気を放ちながらサダンさんが部屋から出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます