第四十四話 国王からの手紙
「「せーーのっ!」」
ボコッ
「ありがとう。助かったよ」
ミイナと天使が同時に引っ張り、そのおかげで俺は壁から無事脱出する事ができた。
俺はベッドに戻り、愚痴るように天使へ。
「まったく、天使のせいで散々な目にあったぜ」
「ジンくん。あのね――」
「それは違うわよジン!」
天使の言葉を遮り、椅子の上に立ったミイナが腕を組みながら俺を見下ろし。
「こうなった原因はジンが天使を殴ろうとしたからでしょ。ダメよ、いくら相手が天使だからって、女の子に暴力を振るおうとしたり、あまつさえ殴ろうとした天使のせいにするのは」
とオカンのようにミイナが説教を始めた。
やれやれ。ミイナに怒られる日が来るなんてな。
俺はベッドの上にひざまづいて座り。
「深く深く反省しています」
とミイナへ土下座して謝罪する。
が、しかし。
「な、ん、で、よ!」
ミイナはますます怒りながら、椅子からベッドの上に飛び降りて、土下座している俺の体を天使のいる位置へと動かした。
「私に土下座しないで天使に土下座しなさい!」
「え? なんで?」
「なんでって、そんなの当たり前じゃない」
「当たり……前?」
「なんで疑問形なのよ!」
バンっと怒りながらベッドを叩くミイナ。
ミイナが怒っている理由が分からない。
天使に土下座する? why。意味不明デース。
「あの、ミイナさん」
「ちょっと待ってなさい、天使。今からジンに土下座させるから」
「くふふ。ミイナさんは優しいね」
「はへぇ!?」
天使が後ろからミイナに抱きつき、変な声を出しながらポカンとするミイナの横へと並ぶように座りながら。
「ミイナさんが怒ってくれるのは嬉しいけど、もういいの。
だって私は、そんな自分勝手なジンくんも心から愛しているから」
ふわり、と天使を中心にピンクの風が吹いた(ような気がした)。
恋する乙女の顔になり、まるで物語のメインヒロインが最終回にするような告白をしてきた天使。
「天使アンタ。そんなにジンの事が……」
ポタポタ。
「あれ、涙が勝手に……」
ミイナの瞳から涙が落ちる。
この展開。普通のアニメやラノベだと、天使が俺のヒロインになる路線まっしぐらだろう。
だがまあ。
天使がどんなに告白してこようが、俺はミイナ一筋約一、二週間の男なので。
「そーなんだねー。
俺、知らなかったよー」
小指で耳をほじりながら、天使の告白を左から右へと受け流し、赤と緑の帽子を被る兄弟が活躍するゲームのキノコキャラのような裏声でテキトーに返事してやった。
すると。
「ジン……アンタって男は!」
そんな俺の態度に、告白した瞬間固まって涙を流していたミイナがハッとなり、目に涙を浮かべながら俺の胸をぽこぽこ叩き出した。
「天使からの勇気ある告白をそんないい加減に――!」
「はぁん❤️ ジンくんが私に無関心すぎる。素敵❤️」
「ええっ!?」
涙目で天使の為に怒るミイナに対し、テレビでアイドルを応援するようなテンションで、自身の体を抱きながらくねらせ一人で盛り上がる天使。
そんな天使の身勝手な態度に、ミイナはやっと天使の性格が理解できたようで、涙を拭いてベッドから降り、椅子に座りながら片手を額に置いて「やれやれだわ」と呆れていた。
5分後。
「あっ、そうだジン。国王様からの手紙を早く読まないと」
「国王様からの手紙……ああ! そんなのあったな。いろいろありすぎて忘れてたぜ」
「忘れないでよ!
……じゃあ手紙を開けるわよ」
素人が見ても高そうな封筒の中から、豪華な刻印のついた二つ折りの手紙を取り出して開くミイナ。
「この独特な文字の形。本物の国王様の字ね」
「「どれどれ〜」」
俺と天使も左右からそれぞれ手紙の中を覗くと、そこには力強い字でこう書かれていた。
【勇敢なる国王の悪友サダン。その娘ミイナ。メイドのマカ。あとジンとかいうミイナの旦那よ。
そんなお前達の働きに、お祝いを兼ねて盛大におもてなしをしたいから、この手紙を読んだらすぐ国王のいる王宮まで来てほしい。国王との約束だぞ。
ただし、王宮まで来ていいのはサダンの娘であるミイナと、メイドのマカと、ミイナの旦那のジンだけだ。国王との約束だぞ。他にも連れてきたい人がいても一人までなら許可するぞ。それは国王が約束してあげるからな。
……少し不安だから、一度国王と指切りしておこうか。
ゆ〜びき〜りげんまん♪ 嘘ついたら首切ってお家をつ〜ぶす♪ ハイッ! 指切った!
よし、これで約束したからな。いいか、もうシンプルに書くけど、来るならサダン抜きで王宮まで来いよ。国王との約束守れよ!
以上。
エクスカリバ王国。四代目国王『ドラゴ=ペンドラゴ=アサオ』からのお手紙でした。バイバ〜イ。
PS
この手紙はサダンには絶対に見せないでくれ。読んだらすぐ焼いて証拠も残さないように頼む。国王からのお願いだぞ。
じゃないとサダンに国王は―されてしまう。
それだけは嫌だ! 国王まだ死にたくな――――――――――――――――――――――――】
PSの途中と最後の部分は文字が荒れていて全然読めなかった。
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