第四十話 1000万のゴブリン軍団
ジンくん。スルト様より今はエンペラーゴブリンを倒さないと。
「……そうだな」
これ以上気にしてもしょうがないので、何事も無かったかのような態度で地上に戻ると、エンペラーゴブリンくんが幽霊を見たかのように驚いていた。
「あり得ない。何故生きてるのですか!?」
「オレが最強だからだぜ」
答えになっていない返答を返し、拳に太陽のような光を纏わす。
「これがオレの『聖拳』だ!」
「ぐはっ!」
天使と合体した事で『聖剣』が使えなくなる代わりに、『聖拳』となった拳でエンペラーゴブリンくんの腹を殴る。
本来なら殴った部分が光となって消滅するはずだが、エンペラーゴブリンくんの持つスキルのお陰で普通に殴ったように体が凹んだ。
ならば!
「オレはスキル『城之◯くんの闘志』を発動するぜ」
その効果により、エンペラーゴブリンくんを守るスキルをポンコツ化させた。
「バカなぁぁぁ! 私のスキルが消え…………いや、違う。ふざけた能力になっているだとぉぉぉぉ!」
「その通りだぜ。
更にオレの攻撃。『シャイニング・スター・フィンガー』」
それっぽい技名を名乗り、さっき殴ったお腹に掌底をくらわせたら今度はちゃんと光となって触れた部分が消えた。
「ぐあぁぁぁ!」
絶叫するエンペラーゴブリンくんの頭を、リンゴを潰すように掴み。
「終わりだぜ。エンペラーゴブリンくん」
「ぎゃぁぁぁぁ!」
『聖拳』の効果で線香花火のように、キラキラ光となって消えていくエンペラーゴブリンくんの丸い頭。
ようやくこれで終わりか。
そう思って一息つこうとした。
その時。
「こうなったらお前も道連れだぁぁぁ!」
エンペラーゴブリンくんがどこからかビー玉サイズの黒い宝石を取り出し。
「私の命を代償に。生まれなさい『ゴブリンワールド』」
宝石を握り潰し、エンペラーゴブリンくんの体が突然闇の炎に飲まれて消え。
「なんだこの闇は! うわぁぁぁ!」
同じようにオレの体も闇の炎に飲まれていく。
そして。
「……なんだここは」
気がつけばオレは、天井が180度星空になっている謎空間にいた。
神秘的な光景に思わずため息が出そうだが、ため息が出る前に聞き覚えのある声が空間全体から聞こえてきた。
『ホッホッホ。ようこそ『ゴブリンワールド』へ』
「『ゴブリンワールド』だと」
『そうです。ここはゴブリンだけの世界。故に――』
地面から次々と、数え切れない数のゴブリンの大軍が突然現れた。
『こうやって100万のゴブリン軍団を生み出してあなたを始末する事も可能なんですよ』
『お行きなさい!』というエンペラーゴブリンくんの声で一斉に襲い掛かる100万のゴブリン軍団。
あまりの数の多さに、合体する前のオレなら確実に逃げて追いつかれてすぐに殺されていただろう。
だが。
「オレはその程度でやられたりしないぜ! くらえ『シャイニング・スター・フラッシュ』」
両手からベジー◯のファイナルフ◯ッシュのようにエネルギー波を放ち、たった一度の攻撃で周囲にいたゴブリンと正面の攻撃した範囲にいたゴブリンを全て消滅させた。
「まだまだいくぜ! 『シャイニング・スター・キャノン』!」
今度は両手からダダダダダッ。と連続でエネルギー弾を放ち、僅か10分で100万のゴブリン軍団は消滅した。
「ふっ。100万の軍団だが知らないが、その程度の数ではオレの相手にはならないぜ」
『なかなかやりますね。なら今度は
「なに」
エンペラーゴブリンくんがそう言うと、本当に200万もの数のゴブリン軍団が地面から現れた。
『さあ200万のゴブリンの皆さん。お行きなさい!』
ワラワラと虫のように押しかけるゴブリンの大軍。
だかオレは冷静に両手にエネルギーを溜め。
「倍の数で攻めて来ようがオレには関係ないぜ! 『シャイニング・スター・か〜め〜は〜◯〜波ーーーーー』!」
両手に溜めたエネルギー波を思いっきり解放してまとめてゴブリンを消していき、今度は倍の20分で200万のゴブリン軍団を消滅させた。
「ふぅ。どうだ」
『ホッホッホ。素晴らしい。では今度は300万のゴブリン軍団でお相手しますよ』
「まだ増えるのか!?」
300万もの途方もない数のゴブリン軍団が地面から現れた。
「キリがないぜ『シャイニング・スター・元気◯』」
この空間を覆うくらいの巨大なエネルギーの塊を両手に集め、たったの一撃で300万ものゴブリン軍団を消滅させた。
威力は大きいが、この一撃でかなりのMPを消費した。
「はぁはぁ。どうだ」
『いいですよいいですよ。では400万のゴブリン軍団。現れなさい』
「そんな……まだ続くのか……」
地面から現れた400万のゴブリン軍団を『シャイニング・スター・フラッシュ』、『シャイニング・スター・キャノン』、『シャイニング・スター・かめはめ◯』や威力の落ちた『シャイニング・スター・元◯玉』で消滅させること一時間。
MPを使いすぎたオレは、地面に片手片膝をついて倒れていた。
「はぁはぁはぁはぁ」
ジンくんしっかり。
『おやおや。もうギブアップですか』
「まだ……まだだぜ」
気力で立ち上がるオレ。
『素晴らしい。そんなあなたの勇姿に免じて、次で最後にしてあげましょう』
「嘘じゃないよな」
『もちろんです。
ゴブリンよ、現れなさい』
地面から無数のゴブリンが現れた。数えるのも億劫になる数だが、エンペラーゴブリンくんの言葉が真実ならこれで最後だ。
「何百万体現れようが相手になってやるぜ!」
ゴブリン軍団に対し拳を握るオレ。
『ホッホッホ。やる気になってくれて私も嬉しいですよ。
では
「なに、1000万……だと」
想定外の途方もないゴブリンの軍団が、ワラワラと巨大な波となりオレ目掛けて一斉に襲いかかってきた。
ヤバいって。オレのMP残り一割程度しか残ってないのに。
「こんな数相手にどうやって戦えばいいんだ……」
絶望的な数にオレの戦意は消えかけつつあった。
だがここで、奇跡が起こる。
《神を召喚しますか? 【はい いいえ】》
《【召喚条件】1000万の魂》
と頭にモニターが現れた。
絶体絶命の今、神の召喚はまさに天からの助けだ。
なのでオレは迷わず【はい】を選択する。
「オレの倒したゴブリン『1000万の魂』を生贄に――」
ここで頭に召喚する神の名前が頭に浮かび、驚愕する。
「なん……だと」
恐怖でオレの全身は震え、足は生まれたての子鹿のようになる。
「しょっ、召喚するのか。こ、この神を……」
正直ゴブリン1000万の軍団が可愛く思える恐怖だったが、他にこの状況を打破する方法が思い浮かばず、この神に頼るしかオレに道はない。
さんざん葛藤するがもう1000万の軍団は目の前まで迫っていた。
ジンくん早く! もう時間が――!
「ああもう!」
恐怖とパニックと天使の声がごちゃ混ぜになった結果。
「オレは召喚するぜ! この神を!」
プルプルと全身を震わせながら今世紀最大の勇気を振り絞り、その神の名前を呼ぶ。
「地獄の王にして最強の死神! 『ハデス』召喚!」
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