第三十四話 見よ、これが勇者のステータスだ!
運動したお陰で全身から汗が出た。
まあプロレスに近い運動だが、エロい方のではなくガチな方の。
「はぁはぁ……そんなに……んくぅ、帰り……たい……の」
全身をピクピク痙攣させながら、ベッドの上で顔と足が逆さになった天使が、裸で哀れもない姿のまま本心を探ろうとしているつもりなのか上目使いで俺と目を合わせる。いや、そんなことしなくてもお前心読めるだろ!
「そう……だね。ジンくんは……怖いからかつての王国に帰りたいんだ、ね」
汗だくのまま、新体操選手のように体を回転させ姿勢を元に戻した。最初からそう言ってるだろ。それともう一度言っておくが俺は『虫』相手に欲情はしないし合体もできない。
「そっか……くすん、残念」
と涙を一ミリも流していないのに落ち込みながら、天使が異空間からプロジェクターのような装置を出して起動させ、天井に何かを映した。そこには俺の名前が書かれていて各種ステータスが表示されていた。
《カミバライ=ジン》(人間・勇者)
ATK 9999
《神聖剣シャイニング・スター・ソード》+90000
《スキル》
光変化(この剣のATK以下のDEFを持つ敵を光に変える)(※ただし自身のステータス以上の敵は爆発する可能性大)
DEF 9999 《ウェディングリング》+1
《スキル》
恋愛神の護加護(妻以外の女性に対し、この指輪を装備した人間による恋愛パターンの阻止)
SPD 9999
MP 9999
《スキル》
勇者Lv99。天使の加護。地獄王の加護(笑)。キングボ◯ビーの加護(運−999)。ペテ◯ギウス・ロマ◯コンティの加護(サイコパス+999)。惣◯・ア◯カ・ラン◯レーの加護(ツンデレ+999)。うち◯マダラの加護(闇堕ち+999)。スーパーマ◯オの加護(残機9666)。超回復。
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「自分事だが、相変わらずひっでぇスキルだな。ほぼゴミスキルだろこれ」
このスキル自体は勇者になる前の最終試験でランダムに選ばれたスキルだが、他の同期の皆はまともな勇者っぽいスキルだったのに対し、俺だけが勇者とは全然これっぽっちも関係の無い別次元のスキルを身につけたのだ。
まあスキル『スーパーマ◯オの加護』のおかげで残機が残っている間は死んで元の場所から生き返れたりできるが、それでも他のスキル片寄りすぎだろ。特に運−999とサイコパス+999とツンデレ+999と闇堕ち+999ってなんだよ。勇者に必要無いスキルだろ!
「そうだね。くすくす。可笑しなスキルだよね。ジンくんこんなステータスでパワーアップしたエンペラーゴブリンに挑むつもりなの?」
腕を胸で挟みながら、吐息がぶつかる距離で話しかける天使。近い近い。
「いや、俺戦わないで元の世界に帰してほしいだけなんだが……」
「そうだよね、エンペラーゴブリンに挑んでもすぐ殺されるだけだもんね」
「うん!」
曇りのない眼で元気よく返事をした。だってー、エンペラーゴブリン、フリー◯様最終形態のような姿になっていたしー、絶対ステータスも上がっているだうしー、今までは聖剣の力で戦ってきたけど流石にもう勝てないよなー。うん。
「くすくす。ジンくんの思っている通りだよ。今のエンペラーゴブリンのステータスはね〜、こうなっているよ」
プロジェクターをいじくり、天井にステータスが新たに映し出され、俺のステータスのすぐ隣にエンペラーゴブリンのステータスが並べて表示される。
《エンペラーゴブリン》(魔物)
ATK 530000
DEF 530000
SPD 530000
MP 530000
《スキル》
魔王の加護。帝王のオーラL v53。大地の加護。帝王の波動。超々回復。守護ゴブリンの加護。全属性ダメージ激減。状態異常激減。物理攻撃激減。魔法攻撃激減。斬撃無効。ミスリルボディ。守護のオーラLv53。槍の名人。攻撃力超々強化。防御力超々強化。素早さ超々強化。(※一部スキル統合・吸収・合体済み)
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マジもんの宇宙の帝王様やないかーーい!!
天使が抱きつきながら耳を咥えてきたが、そんなことが一切気にならないくらい絶望的なステータス差だった。
勝てない。そう思うまで一秒も掛からなかった。
「ちゅ、だよね。ちゅちゅっ、こんな化け物相手にジンくんのステータスで勝てるわけないよね。ちゅっ」
体を引っ付けながら、上から下へと俺の体にキスしていく天使。もう少しで俺のナニを咥えようとしたところで俺は天使を押し出し引き離す。
「ああん惜しい。でもいいのジンくん? このまま元の世界に帰ったら、今の世界にいる人物はみーーんなエンペラーゴブリンに殺されてしまうよ」
「う……問題はそれなんだよなぁ……」
正直ミイナ達と出会っていなかったらそれでも帰るとゴネていただろう。でもサダンさんはともかく、未来の嫁であるミイナが死ぬと分かっていたら、頭では帰りたくても、体がそれを拒否して帰れなくなるのだ。
べっ、別にミイナが大好きなだけなんだからね。そこんとこ勘違いしないでよね。
「むぅー。『大好き』だなんて嫉妬しちゃうな」
心を読み頬を膨らます天使。
その瞬間、指輪の呪いが発動したのか、ずっと無反応だった俺のナニがバルーンのように大きくなり、天使の胸の谷間に挟まった。
「ナニッ!?」
「きゃっ❤️、ラッキー! んふふ〜。いただきま〜す」
手で髪をまくりながら下を向き、アイスの棒を咥えるように色っぽく口を大きく広げる天使。
「させるかぁあああああああ!」
天使がナニを咥えようとするのをギリギリで阻止し、ミイナだけを助けて元の世界に帰る方法を、ナニを咥えられない代わりに顔中天使にキスされながら真剣に考えていると、俺の頬を掃除機のように吸いながら天使が悪戯っ子っぽい笑顔で。
「んちゅーんちゅーそれなら〜、唯一エンペラーゴブリンに勝てる方法が〜、んちゅー、あるよ。んちゅ❤️」
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