第二十五話 勝利と声

「いかん! ランサーゴブリン我の後ろに隠れろ」


「ガーくん!?」


 光の斬撃からすぐガーディアンゴブリンがランサーゴブリンを庇う。そして。


「ぬぉおおおお!」「きゃああああ!」


 斬撃にはガーディアンゴブリンのスキルで耐えたが、それによりポッカリと大きく地面に空いた穴の中へと二人は落ちていった。くっくっく計算通り。


「ヒャハハハやった! 地獄に落としてやったぜ! 俺の勝ちだあああああ!」


 リア充が目の前から消えたことにより、満足した俺の心からドス黒い何かは消え、俺は普段通りの俺に戻り自身のイメージする勇者のようにかっこよく聖剣を掲げて勝利の叫びを上げた。


「もう倒したの。ジンやるじゃない」


「ジン様凄い」


 ナイトメアゴブリンと激しい戦闘をしていたミイナとマカが称賛をおくる。


「嘘ぉ。あの二人がやられるなんてぇ」


「私達も負けてられないわねマカ」


「はい」


「それはこっちのセリフよぉ。あの二人の仇はとらせてもらうわぁ『ゴブリン流星群』」


 ミイナとマカへと空からゴブリンの形をした岩が降り注ぐ。


「その顔気持ち悪いのよ『ホーリーライトキャノン』」


 ミイナの剣先から光のレーザーのように斬撃が岩を貫き破壊する。

 だがしかし、光は落ちてくる石に比べて細く、破壊してもまだ形の大きいまま地上に降り注ごうとしていた。


「お嬢様援護します『パワービルドアップ』」


 マカが呪文を唱え、ミイナの体から出ていた光が更に大きくなる。


「これなら『連続ホーリーライトキャノン』」


 強化された光のレーザーを連続で出し、大半の岩を地上に落ちる前に破壊する。


「残りは無視してもよさそうね。ありがとうマカ。あなたは降ってくる破片から自分を守って」


「かしこまりました『マジックバリア』」


 マカの周囲にバリアが展開しそれにより落ちてくる岩の破片を弾いた。

 ミイナは細かい破片をまるで紙屑のように剣で振り払う。


「あなたの魔法はその程度なの?」


「あらあらぁ。困ったわねぇ」


 ナイトメアゴブリンが頬に手を置いてため息を吐く。


「『ゴブリン流星群』でも倒せないなんて、この勝負長引きそうだわぁ」


「それはどうかしら」


 ナイトメアゴブリンがミイナ達と戦っている今がチャンス!

 俺は気づかれないよう聖剣をナイトメアゴブリンに向けた。


「くらえ『シャイニング・スター・スラッシュ』」


「あらぁ? なにこの光は――嘘でしょ!? 私がこんな不意打ちで――いゃあああああああ――!」


 斬撃に飲まれ、ナイトメアゴブリンが爆発した。


「呆気ない最後ねナイトメアゴブリン。でも勝負は私達の勝ちよ」


 剣をしまい、ミイナが俺に向かってお礼を言う。


「ありがとう助かったわジン」


「おう、これで残る四天王はあと一人だな」


「それなら心配ございませんよ。あちらをご覧ください」


 マカが案内嬢のように手を向ける先には。


「ぬるい。弱すぎるぞゴブリン四天王」


「ガハッ……」


『超回復』でも追いつかないくらい身体中がボロボロで瀕死のままサダンさんに頭を掴まれているキングゴブリンがいた。


「パパ!」


「ミイナ。マカ。どうやらそっちも終わったようなだな」


 ボロボロのキングゴブリンをゴミのように地面に投げ飛ばし、俺達のもとへサダンさんが歩いてきた。


「最後はジンのおかげでね。ジンったら凄いのよ。ゴブリン四天王の内三人も倒したんだから」


「なに!? この害ちゅ――こいつがか!?」


 敵はもう倒したはずなのに俺へ戦闘体制のまま至近距離でメンチ切るサダンさん。そのプレッシャーはゴブリン四天王なんかより恐ろしく、俺は今にも泣きそうだ。


「パパ。ジンを怖がらせたらダメって言ったでしょ!」


「!? ぬぅ……」


 ミイナに背中を蹴られ、ショックを受けたサダンさんが項垂れながら俺から離れた。助かったミイナ。ありがとう。


「さあみんな。戦闘も終わったことだし帰りましょう。私達の家に」


「はいお嬢様。ほーら。行きますよ旦那様」


「む」


 項垂れるサダンさんの手を握りマカが引っ張る。

 二人の関係を知らないミイナは気にしていないが、そのおかげかサダンさんは少し元気を取り戻していた。

 やっぱりあの二人はそうゆう関係か。俺が二人を見ているとミイナが俺の顔を覗き込み。


「パパとマカを見てどうしたの」


「うわっ! なんでもない。なんでもないぞ」


「ふーーん。まあいいわ。とっとと帰って休みましょう」


 ミイナが欠伸しながら屋敷に向かって歩いたので、俺もミイナの背中を追いかけるように歩いた。

 すると頭に突然声が聞こえてきた。


『ホッホッホッ。戦闘はまだ終わってませんよ人間』

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