第十五話 異世界なの忘れてた(笑)
「私はゴブリン四天王とまた戦うから今回特に話すことはないけど、誰か意見とか案とかある人はいるかしら」
「では私が」
手を上げたのは左目を眼帯で隠し、顎には槍で抉られたような傷跡のある兵士だ。
「私は以前ゴブリン四天王の一人と戦った事があります。当時の私は剣の大会で優勝する腕前でした。自分は王国一の剣士だと自信もありました。
ですがゴブリン四天王の一人である槍使いと戦い、私の剣技は一切通用せず私は左目を失い、当時の上官を含む数100人近い兵士が殺されました。
奴らは化け物です。この街で太刀打ちできるのは王国最強の【九大将】であり領主のサダン様か、その娘であるミイナ様くらいでしょう」
この兵士の言葉に他の兵士達も皆うんうん頷いた。
それを真似して俺も頷く。特別意味はないけど。
「確かに、私とパパならゴブリン四天王だろうが互角に戦える自信はあるわ」
実際戦ってたしな。
「でも私とパパが戦って勝って街が救えたとして、一流の兵士であるあなた達はそれでいいの?」
『もちろんです』
兵士達は曇りなき眼で、打ち合わせをしてたかのように同時に返事を返した。
おいおい。街を守る兵士としてそれでいいのか?
ミイナも俺と同じ気持ちだったようで少し戸惑いながら。
「そ、そうなの? じゃあ戦闘に関しては私とパパ、ここにいるジンとマカの四人ってことでいいかしら」
『意義なし』
「じゃあ戦うメンバー決めはこれでお終いね」
パチパチパチパチ――。
兵士達が祝福をするかのように拍手してきた。
すると左隣のミイナから。
「戦闘一緒に頑張ろうね。ジン」
右隣のマカからは。
「ともに精一杯戦いましょう」
と学園祭で同じ競技に出るようなノリで声かけをもらう。
あまりにも楽観的すぎて俺は心配だ。
まあ、でもきっと今回もなんとかなるだろう……なるよな?
その後も住民の避難についてや戦闘後の処理など主にミイナを中心に話し合い、ここに来てからたったの30分程で話し合いは全部終わり。
「これでゴブリン四天王対策会議を終了するわ。今日はありがとう」
『いえいえ、こちらこそ』
「この後はそれぞれの仕事に戻ってね。では解散!」
『お疲れ様でした』
解散の一言で次々と席を立ち兵士達が部屋を出て行く。
最初はどうなるかと思ったけど、何事もなくあっさり終わってよかった。
最後の兵士が部屋を出るのを確認したミイナは、席を立って待つ俺とマカへ。
「私達も帰ろっか」
「そうですね」
「だな」
来る時と同じようにミイナを先頭にして歩き、兵舎の外に出た所でミイナが。
「帰りどこか寄って行く?」
「いいですね。行きましょうか」
「俺もいいぞ。ちなみにどこ行くんだ?」
「最近街の入り口付近に新しい服屋ができたみたいなの。そのお店に行こうと思ってるわ」
「私は街役所の近所にある美味しいコーヒーやスイーツの食べられる喫茶店に行きたいです」
「スイーツか〜。いいわね。
マカ。ジン。まず最初にその喫茶店に行きましょう」
「お嬢様。まだ午前中です。食べすぎたらお昼ご飯が食べられなくなりますよ」
「それもそうね。なら先に服屋に行きましょう」
「ではお昼は私の行きたい喫茶店にしましょう」
「賛成。
そうだ、ジンはどこか行きたいお店とかある?」
放課後遊びに行く店を聞くようにさりげなく尋ねてきたミイナへ、俺はつい高校時代を思い出しながら。
「そうだなー。ゲーセン行って次にカラオケとかがいいかな」
「「ゲーセン? カラオケ?」」
ミイナとマカは知らない外国語で話されたようにキョトンとしていた。
忘れてた。この世界にゲーセンもカラオケもないんだった。
俺は変な奴だと思われないようにすぐ謝った。
「ごめん。今のは忘れてくれ。
俺は行きたいところは特にないからミイナ達について行くよ」
「そ、そうなの。じゃあ決まった事だし、早速服屋へ行くわよ」
「おう」「はい。お嬢様」
ガキ大将のように元気なミイナを中心に、俺とマカは子分a、bのように左右に並んで街を歩いた。
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