第七話 【六皇】の部下で【四天王】だと!? 多すぎΣ੧(❛□❛)

「ミイナ強すぎ……」


「何固まってるのよジン。ここからが本番よ」


 ミイナが剣を向けた先にはさっきの攻撃でもダメージを負った様子のないキングゴブリンがいた。


「異世界から来た勇者の女。

 俺様の軍をこうも簡単に倒すとは敵ながら見事。褒めてやろう」


 どうやら敵はミイナを異世界から来た勇者と思ってるらしい。初対面のはずなのになんでミイナを勇者認定するんだ? 本物の勇者である俺は不思議でたまらない。


「勇者? アンタ何寝ぼけたことを言ってるのよ。そんな存在噂でしか聞いたことないけど?」


「――っ!?」


 思わず『それ俺!』と口に出しそうなのを手で抑える。

 ミイナとキングゴブリンが視線で『いきなり口抑えて何しているんだ』と言ってたが手を口から離したらすぐ無視してくれた。

 危なかった。まだ吐き気が収まっていないのに今ツッコんだら吐くところだった。


「とぼけても無駄だ。お前がこの街に現れるという予言を俺様の同僚である『ナイトメアゴブリン』がした。奴の性格は気に入らんが予言は絶対だ。だから間違いなくお前が勇者だろ!」


「それおっ――」


 ギリギリのところで口を抑えた。


「なんだ小僧。俺様に言いたいことでもあるのか」


 今度は視線だけではなくキングゴブリンが睨みなから話しかけてきた。ヤバイ、この雰囲気。あと一言でも喋ったら絶対殺される! そしたらまた地獄に落ちて――いやあああああ!


「なんだコイツ。泣きながら首を振っているが……」


「あ、あっちは気にしなくていいわ。それよりアンタの話だと私がその勇者ってことなのね」


「さっきからそう言ってるだろ!」


「そう、私が勇者……ふふ♪」


 勇者と言われたミイナの口元が綻ぶ。


「ミイナお前」


 俺はミイナの嬉しそうな表情を見て思わずドキッとなり冷静さを取り戻す。

 ありがとうミイナ。それとすまん。首を振ったからか吐き気が酷くなってますます動けなくなった。


「だがお前が例え上位の勇者だろうが恐るに足らん。魔王様直属の部下である【六皇】の一人で『エンペラーゴブリン』様直属の【四天王】の一人であるこの『キングゴブリン』様が相手なのだからな」


 だいぶ長いセリフを噛まずにすらすらつげるキングゴブリン。あいつよりまだ上がいるのか。それも【六皇】って名前からして6人もいるんだろ。それでこいつはその部下で四天王の一人って……はぁ、気が遠くなるな〜大丈夫かな俺。この世界でちゃんと魔王倒せるかな……。

 なんて思いながら友達のいない新しい学校で新生活を始める高校生のように落ち込んでいるとミイナは。


「そうなの。じゃあ今日から三天王に変更ね」


 ミイナの鎧が白く輝きだした。その姿は本物の勇者と言われても納得するような神々しさだ。


「勇者どもは皆そうやって自信満々で挑んでくる。だがそう言う勇者どもを俺様は何人葬ったことか」


 キングゴブリンの周囲に赤いオーラが現れた。その姿はもうコイツが魔王じゃね? と思わせるような風格がある。

 それと今のセリフからして天使の送った勇者を倒したのはあのキングゴブリンのようだ。まぁあのステータスだと別世界の魔王クラスの強さはあるから普通の勇者が勝てなくて当然だ……あれ? じゃあなんで普通の勇者代表である俺が送られたんだ?

 俺の頭に?が浮かんでいる間にも。


「いくわよ!」


「こい!」


 キングゴブリンとミイナの戦う準備が完了しており、ミイナがキングゴブリン目掛けて飛んだ。


「心臓を突き刺してあげるわ『ホーリーライトレイピア』」


 完全に悪役のセリフを言いながらミイナの剣に天使の羽が生え、加速しながらキングゴブリンの心臓があるだろう箇所へ剣先を向けた。


「なんの『ゴブリンインパクト』」


 ガキンッ!


「はああああっ!」


「うおおおおっ!」


 ズゴゴゴゴッ!


 ミイナの突きをキングゴブリンが剣で受け止め、2人を中心に大地がめくれ暴風が吹き荒れた。


「うわっ!」


 それに巻き込まれ、衝撃で吹っ飛びそうなのを堪えながら俺はこう思った。

 この光景。完全に勇者と魔王の戦いそのものじゃね?

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