第三話 カオスすぎて吐いちゃった(//∇//)(笑)

「死ぬかと思ったぜ。もう死んでるけど」


「お疲れ様ですジンくん♪」


 新しくなった針の山で亡者達とのバトルロイヤルを勝ち残った俺は、自力でなんとか地獄から生還し、今ぼろぼろの体に天使の回復魔法をかけて癒してもらっていた。


 それも水着の膝枕で。


「痒いところはありませんか?」


「ないけど、なんで水着?」


「ふふ。私なりのジンくんへのご褒美です」


「そうか……」


 この天使。天使とあってスタイル良くめちゃくちゃ美人でいい匂いもして女性としては最高の部類なのだが中身が最悪なんだよなー。


 なんて思っていると急に天使の機嫌が悪くなり。


「ジンくん。私の中身がなにか?」


「なぜそれを!?」


「忘れたのですか? 私は心を読むことができるのですよ」


「そうだった!?」


 完全に忘れていた。天使どもは心を読むことができるんだった。

 天使が膝枕をやめてぼろぼろの俺を地面に転がし。


「ジンくん。バツとして一番キツい転移方法であの世界へと戻ってもらいますね」


「一番キツいだと。ふざけるな! 俺地獄から帰ったばかりだぞ!」


「ふざけるなはこっちのセリフです。ジンくん乙女心を知らなすぎです」


 天使が顔を赤くして怒った。怒りたいのはこっちだよ。

 だがすぐにハッとなりなんだか恥ずかしそうにモジモジしだした。


「さ、サービスで私の今思ってる事を当てたら許しますよ」


 そう言うと、四つん這いになって胸を見せつけながら赤い顔で俺に近寄る天使。

 思ってる事ねぇ。顔赤いしモジモジしてるし……まさか!?

 俺は天使の両肩を掴み顔と体をじっと見た。

 すると天使はビクッとなり、恥ずかしそうにさっきよりモジモジしだした。

 やっぱりこの反応は……。


「天使。お前まさか……」


「じ、ジンくん。実はそうなのよ」


 お互いに目があった。

 天使が恥ずかしいのか目を瞑る。

 そんな天使に俺は笑顔で。


「トイレ我慢してるんだろ? 行きたいなら俺に遠慮せず行けよ」


 その瞬間。どうしてかは知らないがどこかで雷が落ちたような気がした。


「ジンくん……」


 天使の顔から赤みが消え、モジモジしなくなくなったのだが天使とは思えない闇のオーラ全開で。


「いでよ『完全なる闇の門』」


 俺を見下しながら魔法陣を展開する天使。それも見たことのない模様の禍々しいやつを……。


「おい天使。この魔法陣は一体――」


「教えません。ただ転移空間がブラックホールに直結してるだけです」


「ブラックホールにだって? なんだそれだけ……は? 今なんて?」


「さようなら」


「おいコラ! ブラックホールなんてふざけ――」


 気がつけば俺は真っ暗闇の中にいた。




 重い。暗い。体が歪む。気持ち悪い。

 時間にして僅か1秒程度だったがブラックホールの中はジェットコースターを百倍酷くしたようなものだった。

 光に導かれて自分の体に戻ることはできたのだが。


「ウプッ。やっと……戻った」


 勇者として体感をめちゃくちゃ鍛えられた俺でさえ今は二日酔いのように吐きそうだった。


「水。ミイナ水を……」


 すぐ近くにいたミイナへ水を要求した。

 だけど俺が死んでいた間の時間は止まっていたのでミイナはビックリしながら。


「ジン!? よかった。生きてたのね」


「バカな。何故心臓を貫いたのに立ち上がれる!?」


 俺が(ふらふらだけど)立ち上がった事でミイナパパは化け物を見るような目で見てきた。


「ジン!」


 ミイナが涙を流しながら抱きついてきた。

 普段の俺なら喜ぶ場面だが今はいろいろマズイ。


「ミイナ……やめ……」


「よかった。死んじゃったかと思ったわよ」


「ミイナ。揺らさないで……」


「ミイナ! ソイツから離れろ!」


 俺から離れるよう娘に言うミイナパパだがミイナは。


「嫌!」


「ミイナ。パパの言うことを聞きなさい!」


「嫌ったら嫌」


「ミイナ!」


 俺をめぐってついに親子喧嘩が始まった。

 ぎゅっと力強く抱きつくミイナと、俺をミイナから引き離して殺そうとするミイナパパ。


「ちょっ……それ以上は……」


 その狭間でゆらゆら揺らされる俺の吐き気メーターはすぐレッドゾーンに達し。


「もう無理――」


 俺は力ずくてミイナから離れた。


「ジン!?」


「ははは。やっとミイナから離れたか化け物め。今度こそ死ねえええええ!」


「パパダメえええええ」


 剣を構えるミイナパパだが俺の様子に違和感を感じ。


「なんだお前その口は」


「ウプ」


「おい、まさか――」


「ゴパアアアッ!」


「うわあああああ!」


「きゃあああ! パパああああああ!」


 ミイナパパの顔面へ勢いよくお昼ご飯と胃酸をぶちまけた。

 そのタイミングでドアがバンっと開いてメイドのマカが焦りながら。


「大変です旦那様。魔王軍が大軍を率いてこの街に攻めて……」


 マカはゲロまみれのミイナパパを見た途端に固まり、涙目で震えながら両手を前にだし。


「きゃああああ! ば、化け物おおおお!」


「おい待てマカ。ワシ――」


「来ないでえええ『フャイヤボール』!」


 赤色の魔法陣を展開し、そこから無数の火の玉が飛び出して。


「うわあああ!」


「パパああああ!」


 ゲロまみれのミイナパパは火だるまになった。

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