第二話 死んでもいい事なんてない(ToT)


『ジンくん。起きて。ジンくん』


 頭に響く優しい声。

 目を開けると正面には後光を浴びながら天使がいた。


「ジンくん。あなたは残念ながら死んでしまいました。これからあなたには【2つの選択肢】を与えます」


 天使は面倒になったのかここからは直接口で話し始め、後光もリモコンのスイッチで消した。


「【2つの選択肢】?」


「はい。1つ目は【天国行き】です」


「【天国行き】。じゃあそれで」


「2つ目は【転生】です」


「【天国行き】でお願いします」


「さあ選んでください」


「だから【天国行き】でお願いします」


「すみませんよく聞き取れませんでした」


「聞き取れるだろ!」


「【聞き取れるだろ】。申し訳ございません。そのような選択肢は存在しません」


「それは選択肢じゃねぇ!」


「【ソレハセンタクシジャネェ】という作品は見つかりませんでした」


「検索してねぇ!」


「もうめんどくさいのでこのノリやめませんか?」


「お前からふったノリだろおおおおおお!」


「まあまあ。お茶を飲んで落ち着いてください」


 天使が指パッチンするとちゃぶ台とお茶と煎餅とテレビがどこからか現れた。

 天使はゴロンと横になりテレビをつけて煎餅を齧りながら。


「パリパリ。それにしても酷い死に様でしたね」


「確かにな……って煎餅齧るな! 絶対酷いって思ってないだろ!」


「まさか命を救った少女の父親に殺されるなんて。ズズズ。私酷すぎて見てられませんでした」


「そうなんだよ……ってお茶を飲みながら言うな!」


「あっ、この番組録画しないと。

 あんな世界に転移されるなんて。パリパリ。ジンくん可哀想ズズズ」


「だから煎餅食ってお茶飲みながらいうなああああ!」


 この天使。自分で地獄のような世界に送っておいてこの態度。スッゲェ生意気すぎる。


「なぁ。そう思うならもとの世界に帰してくれよ」


「すみませんよく聞き取れませんでした」


「都合の悪い時だけコイツ……」


 怒りのあまり気がつけば無心で拳を握っていた。

 この天使なら性別なんて関係なく一回殴っても問題ないと思う。


「ジンくん怒ってるの?」


「当たり前だ!」


「そっか。そんな元気があるのなら無事でいられそうですね」


「は? お前何言って――」


 その時。


 ガシッ。


 俺の肩に誰かが掴みかかる。

 俺は天使のせいでイライラしていたので怒りを込めながら。


「誰だコラァ!」


「誰だとは。you偉くなったものだなぁ」


「その声は……ひっ、その声はまさか!」


 相手の顔を見た俺は絶望のあまりムンクの表情になる。

 何故なら俺の肩を掴んでいた者は身長が3メートルを超え、常に全身にオーラを纏った化け物だからだ。


「忘れたのなら教えてやろう。My name is『ハデス』。地獄のKINGだ」


「は、ハデス教官んんんんんん!」(※教官は付けないと殺されるので付けてます)


 その化け物、ハデス教官は天使が「ジンくんのためだよ」と面白半分に俺専属の教官をお願いし、軽くOKした事で今では死ぬ度に俺を虐めてはそれを「修行だぜ」と楽しんでいるまさに最低最悪極悪非道の地獄の王だ。


 そのステータスは。


《ハデス》(地獄の王)

 ATK 10000000

 DEF 10000000

 SPD 10000000

《スキル》

 地獄の主。万物の消滅。絶望のオーラLv100。死のオーラL v100。etc……。

ーーーーーーーーーーーー


 こんな化け物に勝てるわけねぇ!

 俺は全力で逃げようとするも肩が岩に食い込んだようにピクリとも動かない。

 ワタワタする俺を見てハデス教官は嬉しそうにますます肩を掴む手に力を込め。


「ちょうど針の山をrenewalしたばかりなんだ。ちょうどいいを確保したから試してみよう」


 新しくした針の山だと!? 行ったら絶対酷い目に遭う!


「誰がそんな所に行くか! 今すぐ離せええええええ! 『シャイニング・スター・スラッシュ』」


 聖剣を召喚して必殺の一撃を至近距離で浴びせた。


 が。


「そんな攻撃。meにはpaperだぜ。『開け地獄の門』」


 抵抗虚しく、無傷のハデス教官が地面に禍々しい地獄への入り口を召喚し、俺は棒切れのように片手でヒョイと担がれた。


「じゃあ行くぞ。go to hell」


「嫌だ! そんなリアルなゴートゥーヘルは――ぎゃああああ!」


「あははははは! 行ってらっしゃ〜い」


 テレビを見て爆笑していた天使に見送られながら俺は小石を落とされるような感覚であっさりと地獄に落とされた。

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