第10話 意地悪

それから一ヶ月が過ぎ、久しぶりにいつもの所に飲みに行く事にした。


でも、そこには、以前と違う女の人と親しそうに飲んでいる高希君の姿があった。




ズキン…


胸の奥が痛み、私は結局、店に入る事が出来ず帰る事にした。




「彼女…かな…?やっぱり私じゃ駄目だよ…高希君には……相応しくない……」




私は、涙が溢れる。




「所詮…年上の女に過ぎない…私じゃ不釣り合いだよ…」



一人トボトボ街中を帰る中、誰かとぶつかった。




「きゃあっ!すみませんっ!」




そう言うと去り始める私の腕を掴み引き止めた。




「謝って済むなら警察いらないって!」

「ぶつかったお詫びにさぁ〜、俺達に付き合ってよ」




私は二人を押し退け走り去る。


しかし、彼等は追って来て……




次の瞬間―――――




ボキッ



ガクッ



ハイヒールのヒールが折れ体のバランスを崩す。





「きゃあっ!」





ドサッ


地面に転ぶ私。


 


「……っ……」



「お姉さん大丈夫?」

「逃げなくても良いじゃん!」




バコッ


バコッ



私は二人にハイヒールを投げ付け裸足で逃げた。




「……っ……」



何とか逃げ切った所で私は余りの足の痛みにマンションの近くの公園で足を冷やしていた。



「良い大人が…アスファルト裸足で走るって…情けない……。ていうか……生まれて初めてアスファルトを裸足で走ったし……」




その時だ。




「憐花さん!?」




ビクッ


背後から名前を突然声を掛けられ驚く。





「きゃああっ!」

「うわあっ!危な…」




ドサッと倒れそうになる私を背後から抱きしめるように支える人影。



「憐花さん!何してるんですか!?寒空の下、裸足で水浴びでもしてるんですかっ!?」




頭の上から聞こえる何処となく聞き覚えのある声。


ゆっくり振り返るように頭を上に上げる。


ドキッ

至近距離にある見覚えのある顔。




「…こ…高希君っ!?えっ!?」




《嘘…女の人と一緒にいたはずじゃ…》



ついさっき見かけた高希君が、今、私の前にいる。


私は高希君を見つめる。





「何ですか?」

「えっ?いや……別に…」



目をそらす私。




《あの日…以来だから…話しにくい…》




「あの日以来ですね」

「あっ…うん…そうだね…」



「………………」



お互い何を話せば良いのか分からない。




《会話が続かない…》




「憐花さん…もう帰るんですよね?」

「えっ?…あ…うん…」

「おんぶします!」 

「えっ!?い、良いっ!大丈夫だから!」

「大丈夫なわけないでしょう?その足で、どうやって帰るんですか?」


「それは……」

「憐花さん…はい、どうぞ」




腰をおろす高希君。



「お、重いよ」


「大丈夫ですよ。ていうか、どれだけの憐花さんをおんぶして面倒見てると、お思いですか?」


「…それは…そうなんだけど…」




私は渋々高希君の広い背中に乗る。



「どうしてタクシーを拾わなかったんですか?」


「それは…拾う暇なくて…男の人とぶつかってしまって…逃げるのに……必死だったから…」


「いつも飲んで寝てるから全然分からないけど良い大人が、おんぶされているのって恥ずかしいね」


「そうかもしれませんね。だけど、今日は恥ずかしいも何もないですよ」


「えっ?どうして?」

「俺の背中に、おんぶされてる憐花さんと会話が出来るから」


「えっ?高希君」


「だっていつもは寝息しか聞こえないから寂しく感じますけど今日は憐花さんと話しながら歩いているのが不思議だし何か嬉しいです」


「そっか…いつもお世話になってばかりだね」




そして私を連れて帰りベッドにおろすと手当てしてくれた。




「ごめん…ありがとう」

「いいえ。それじゃ帰ります」



帰り始める高希君。




「待って!」

「何ですか?」

「…女の人…誰…?」

「えっ…?女の人?」

「さっき…一緒にいた…女の人…私…店に寄ろうとしたら偶然見掛けて……」


「あー…彼女は……さあ、誰なんでしょう?」

「えっ…?何それ…!人が聞いているのに…そんな…」




ベッドに腰をおろしている私に歩み寄る高希君。



スッ


私の片頬に触れる高希君。




ドキン


私の胸が大きく跳ねる。




「それは…妬いてる事にとっていいの?」




ドキン


高希君の言葉に胸が高鳴る。




「そ、それは、ち、違うよ!」

「ふ〜ん……そっ!」




スッと離れる高希君。


そして再び口を開く高希君。




「じゃあ…教えてあげない。それじゃ」




帰り始める高希君。



「あっ…!ちょ、ちょっと…!待っ…!」




ズキッ


両足が激痛で痛む。




「痛っ!」



ドサッ

床に倒れ込む私。




「無茶しないで下さい!おやすみなさい」



バタン


私の部屋を後出て行き帰って行く高希君。




「ええーーっ!ひどーーいっ!」




私はブルーに入る中、この足じゃどうする事も出来なかった。






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