第6話 彼の存在

それから私は職場の人に告白されて付き合う事にした。



そんなある日、彼のマンションに行く事となり――――





「ちょ、ちょっと…!待っ…!私達はまだ…」


「付き合ってるのに断る理由が分からないんだけど?別に初めてじゃないんだろうし」


「…えっ…?」



「…………」



「何?まさか初めてなわけ?嘘だろ!? 25歳で経験ないとか有り得なくね?経験ありそうな気がしたんだけどなぁ〜。まあ、良いや。じゃあ優しくしてやるから」


「それ…どういう意味?…良くないよ!25歳だからって、みんながみんなそうじゃないかもしれないけど、わ、私は、そういう機会がなかったの!年齢に関係なく、そういう人だってい…」




キスされた。



「そんな事どうだって良いじゃん?付き合っている異性の部屋に来るって事は、それなり覚悟するのが当たり前だろ?良い歳して、それぐらい分かれよな!」




そう言うと再びキスをされ首筋に唇が這う。





「や、辞め…っ!」


「大丈夫。痛いようにしないから」



「………………」



「ま、待って!」


「…あー、もう面倒くせーな!最初だけ我慢すれば良いんだよ!」




荒々しく洋服を脱がし始める。



「やだっ!心の準備だってある…っ!」



唇を手で塞がれる。



「本当、面倒な奴」



バッと離れた。




「帰れよ!つーか、後々、面倒だし、今日で別れた方が良いんじゃねーの?今日限りでお別れ!」




そう言うと私を追い出すように追い返した。




私は渋々、帰る事にした。



途中、雨に見舞われる。



「最悪……。ついてないなぁ〜…。関係…持った方が良かったのかな…?」




私は自分の情けなさと悔しさから涙がこぼれ落ちる。





高希君なら何て言ってくれるのかな?


きっと彼なら


無理強いはしないはず……


彼なら……


きっと……





「………………」





その時だ。




「憐花さんっ!?」



ビクッ


背後から名前を呼ばれ驚く中、振り返る。




ドキン


胸が大きく跳ねた。




「…高希…君…」

「そんなに濡れて…風邪…」

「へ、平気!馬鹿だから風邪ひかないから!」



私は高希君の言葉を遮るように言うと帰り始める。




「憐花さんっ!」



グイッと腕を掴むと呼び止めた。




「放っておぃ…」


「憐花さんっ!」



私の言葉を遮るように名前を呼ばれると、話を続ける高希君。



「年下に、むしろ知り合いの俺に甘えたくないとか弱い所を見せたくないのは分かるけど、そのまま見て見ぬふりして帰す訳にはいかない!」




ドキン


胸が大きく跳ねる。




グイッと腕を引き寄せると私を抱きしめられる。




ドキッ

再び胸が大きく跳ねた。




「俺が…傍にいてあげたいから」




ドキン


胸が大きく跳ねる。



「は、離して…!」


「離さない!……前に話しましたよね?思うまま行動するからって…」



「…………」



「例え、憐花さんが一人になりたいって思っても俺は引きませんよ?」



「………………」




抱きしめた体を離すと、私の片頬に優しく触れる。




ドキン


いつになく優しい眼差しを見せると何処か不安と切なさが入り混じった表情で私を見つめる。




「あなたの傍にいさせて下さい…。憐花さん…。それでも…駄目ですか…?」





彼にしてみれば


勇気ある行動と一言だったに違いない。


私から


断られるんじゃないかという思いを秘めながら……





私は、高希君の触れた手の上から自分の手を重ねる。




「…憐花…さん…?」



そして、私は胸に顔を埋めた。





年下だけど


今の私には


彼の優しさが


必要だったのかもしれない


彼の言葉が


心の中に響いた


いつも弟みたいな存在が


一人の異性として見え


一瞬カッコよく思えた





私は高希君の部屋に行く事にした。




彼は何も言わず黙って傍にいてくれた。





















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