第2話 年下の男
「憐花、ちょっと付き合って欲しいんだ」
「うん、良いけど」
「サンキュー」
向かった先は、とある店。
既に何人かテーブルを囲んでいた。
「衣千子…もしかしてだけど…合コン!?」
「そう」
「えっ?やっぱり?」
「きっかけは憐花なんだよ。その超本人がいないのは駄目だから!」
「いやいや…きっかけって言われても…」
「とにかく行くよ!」
私は、衣千子に連れられ合コンに参加する事となった。
合コン相手は、私が過去に衣千子と間違ってしまった相手だった。
眼鏡かけた男の人。
まさか、また、こんな形で再会するなんて思わない。
彼の名前は、佐々原 高希(ささはら こうき)。21歳。
男女8人以上でテーブルを囲む。
どうやら会社の先輩、後輩が集まったメンバーみたいだけど……。
「衣千子ぉ~♪」
甘えた口調で言う私。
「えっ!?もう酔ったの!?早くない!?」
「何?彼女どうしたの?」
「あー、この子酔ったら……」
「キ~ス~ぅ♪」
「もしかして酔ったらキス魔化しちゃうってやつ?」
「そうなの。男女問わず参加者みんなに平等にする子だから良かったらキスしてあげて」
「へぇ~。本当にいるんだね?初めて会ったかも?憐花ちゃん、チュー、チュー」
盛り上がる合コン席。
そして例の眼鏡をかけている男の人とする事となる。
「眼鏡…」
「えっ?」
私は彼の眼鏡を強制的に外すとキスをした。
「うわっ!」
ドサッ
勢いで倒れ私はそのまま眠りに入った。
そして………
「憐花、起きて!帰るよ!」と、衣千子。
「う…ん…」
私は目を覚ます様子はない。
「憐花っ!起きてっ!」
「衣千子さん、俺と帰る方向が一緒なので彼女は送ります。まあ、家知らないから持ち帰りって事になるんですけど、一切、手出しはしないので」
「…高希君…でも…」
「安心して。高希(コイツ)信頼出来るから」
「瀏遠(りゅうえん)君」
「コイツ、合コン参加してくれてるけど恋愛に踏み込もうとしないから」
「えっ?」
「色々あって恋愛出来ないので信じてもらっても全然良いんですけど…衣千子さんにしてみれば心配ですよね…。でも本当なんです」
「高希君…じゃあ…お願いして良いかな?」
「もちろんです!衣千子さんは恋愛して下さい」
「えっ!?」
「憐花さんを心配するのも良いですけど自分の幸せを掴みましょう。せっかくのチャンス掴み損ねますよ」
そして別々に帰る事になり私は高希君の部屋に移動する事となっていた。
そんな事など知るよしもなく…
「んー……」
私は目を覚ます。
「…あれ…?…ここ…」
バッと起き上がる。
「お目覚めですか?眠り姫」
ドキッ
知らない男の人に驚くのと同時に目の前にいるイケメンに胸が大きく跳ねた。
「きゃあっ!だ、誰ですかぁ~っ!?」
「高希です!」
眼鏡をかける彼。
「あっ…!」
「お分かり頂いたでしょうか?」
「一応」
そう返事をする私に、彼は眼鏡を外す。
「眼鏡…外すって事は別に目が悪いわけじゃないんだね」
「はい。これ、ダテなので」
「ダテ?それだけ申し分ないカッコ良さなのに眼鏡をかける理由が分からない」
「恋愛したくない。ただ、それだけです」
「えっ!?」
「と、言うより…出来ないが…正しいかな…?」
微かに微笑む中、何処か淋し気な表情を彼は見せた。
ドキンと、私の胸の奥が切なく跳ねる。
「…高希…君…?」
「色々と事情があって」
「じゃあ…合コンの意味ないじゃん!」
「そういう憐花さんこそ愛のないキスをしてると恋逃しちゃいますよ?」
「あなたに言われたくないです!」
「年下だから?」
「そうだよ!まだ、21でしょう?まだまだ沢山恋しないといけないあなたが言う台詞?」
「恋って泣いたり笑ったりして楽しい事も山程あるかもしれない。でも俺には恋するなんて無理ですよ」
「どうして?」
「愛した女性(ひと)が、いなくなった事…考えた事ありますか…?」
「…それは…」
私はその時の意味が分からず、良く理解していなかった。
高希君はコーヒーを作りながら話を続ける。
「…俺…一年前に愛した女性を失ってしまって…」
「もう一年でしょう?」
「確かに他人(ひと)は、そう言うよ!だけど……」
「ごめん…高希君にしてみれば重大か…」
「すみません。辞めましょう!話題変えましょう!あっ!そんな事より、俺、憐花さんの部屋知らないので俺の部屋に連れて来ましたけど…良かったですか?」
「えっ?あっ…うん。ごめん…お世話になってしまって…衣千子は大丈夫だった?」
「はい。瀏さんに。2人意気投合していたので」
「…そうか…それなら良かった…。衣千子は合コンに誘ってくれるけど、いつも御世話になりっぱなしだから…。衣千子自身も責任感じて面倒見てくれてると思うんだけど衣千子には恋愛して欲しいから」
「そうですね。確かに憐花さんを心配している様子だけど衣千子さんにも恋愛して下さいって伝えておきました。瀏さんにも恋愛して欲しいし」
「…高希君…」
「正直、2人の姿見ていたらゆっくり仲を育んで欲しくて…」
「そうか…」
高希君の表情は
2人を願う中
何処か
羨ましいような
切ない表情をしていた
高希君には
何か大きい事が
彼の心を
傷つけている
とても辛くて悲しい話
だけど……
私には関係のない事
だから私も問いただす事は辞めた
あなたの心の奥にしまっているもの
それは何?
私はまだ
知らなかった……
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