完結したようで、おめでとうございます。
僕自身がやりすぎたかと心配になるくらいの批判を浴びながら、よくぞ完結させてくださいました。
ありがとうございます。
作品としての魅力の話を先にすると印象が弱くなるかもしれませんので、先にツッコミどころの話をさせていただきます。ただ、第5章までに散々ツッコんできましたし、もしそれらを書き直せば最終章である第6章も自然と変わってくるでしょうから、とりあえず4つ。おそらく、どれも修正に手間はかからないと思います。
1つ目は、第5章からの話でもあるのですが、ドラゴンとイージス艦『しなの』の距離がイメージしづらいことです。ドラゴンが浮上したとき60kmの距離があり、これがハープーンミサイルの射程圏内なのは良いのですが、その後、「視認できる距離」に入ってから、各場面でどれくらいの距離にいるのか、おおまかにでも説明が欲しいと感じました。特に、海斗くんたちがホバーバイクに乗っているとき美希さんの矢が見える描写がありますが、僕が聞いている話では矢の射程はせいぜい300mほどとのことなので、ドラゴンが『しなの』から見て水平線上(5km以上先)にいるなら、普通の矢では届かなくなってしまいます(もちろん、弓にも矢にも魔法が込められており、泰一くんと同じように美希さんの能力が強化されているなら有り得なくはないですね)。
2つ目は、海斗くんがドラゴンと額を突き合せたとき、想念の送り合いをしたのかしなかったのか、はっきりしないことです。第27話本文には「何かを伝えてくるわけでもなく、ましてや怒りや苛立ちをぶつけてくるのでもない。明確な想念がテレパシーで伝わってくるわけでもない。/ただ少しばかり、海斗にも察知できたところがある――やれやれだ、と」とありますが、その後の描写を見ると海斗くんはドラゴンからもっと多くの想念を送られていたように読めます。ドラゴンが(意図して)海斗くんに何かをしたのかしなかったのか分かりにくいので、いっそここは「海斗は自分の心にドラゴンの想念が流れ込んでくるのを感じた」みたいな描写にしてしまって、後の場面でその内容を海斗くんの口から語らせても良いんじゃないかと思います。
3つ目は、同じく第27話で相模さんが責任を取ろうとするシーン、「自らの眉間に銃口を突きつけた」とありますが、眉間ではなく「こめかみ」が自然だと思います。辞書によると「眉間」は「まゆとまゆの間。額のまん中」のことで、「こめかみ」は「耳の上の髪の生え際の所。ものをかむときに動く部分」です。モデルガンで試したのですが、自分の眉間に垂直に銃口を当てようとすると、ちょっと手が痛くなります(銃を逆さにすればマシになります)。
最後は、第29話で海斗くんが出かけるシーンです。僕は詳しくないのですが、車や船での移動にそれなりに時間が掛かりそうなことを考えると、集合するのは午後ではなく朝にしないと日が暮れてしまう気がしました。海斗くんがTVを見るのと海に出かけるのが同日である必要性は感じられませんでしたし、華凛さんが確認の電話を入れるのを前日の夜にすれば問題解決だと思います。
さて、本作の魅力について。
登場人物たちの心情や他者との距離感が最初から最後までじっくり書かれているのが、本作の特徴であり大きな魅力だと思います。以前も書きましたが、少年少女の暗い過去が、安易または鮮やかに解決されないという筋書きは、彼ら彼女らが抱える過去に重みを持たせていて良いと思います。海斗くんが自分たちの過去と今を想念としてドラゴンに伝えるというくだりは、本文はちょっと説明不足な気もしましたが、あの状況で敵意がないことを伝えるなら最善の方法だったと思います。ダンジョンでの経験が活かされたという意味でも、読み応えのある展開でした。
また、日常に戻った海斗くんが以前とあまり変わっていない点も高評価です。海斗くんの悩みはお父様のことでしたから、お母様が何も察していないとしたらちょっと残念な気もしないではないですが、本文中ではお母様が気付いている可能性は排除されていませんし、気付いていることを本文に書いてしまうとそれはそれで微妙な感じになりそうなので、そこは良いでしょう。本作において大事なのは、たとえ他の人には理解できなくとも、海斗くんや他の3人の中に、確かに何かが残ったということなのかな、と思います。
華凛さんの告白(カミングアウト)なのかよく分からない提案のくだりが終始真顔というのも、僕としてはポイント高いです。華凛さんがものを知らない(世間知らず)というのもそうなのですが、お嬢様キャラを作っていた人間が急にデレていたらむしろ怖くなるところでした。それに、華凛さんが真顔なおかげで、彼女にとって海斗くんへの提案は、単に海斗くんを好きになったというだけでなく、(遠山さん以外の)他者と本気で関わりたいという思いの表れなのかな、と読めるのも良いです。華凛さんにとってはまずはそこからですよね。
物語の締めの台詞を池波先生に言わせているのも、良い点と言ってよいでしょう。先生は先生で暗い過去を抱えているので、この台詞はちょっと悲しく聞こえないこともないのですが、遠山さんや華凛さんの計らいというか罪滅ぼしのおかげで事情を聞いているでしょうし、海斗くんたちが海に来るために車や船を手配してくれているくらいですから、きっと先生も少年少女から何かを感じ取っているのでしょう。華凛さんのこともそうですが、池波先生についても、内面の詳細をあえて書かないのは好感が持てますし、この作品――人間の苦しみや痛みを克服するのではなく、それらの重みを尊重して寄り添う姿勢を大事にする作品――らしくて良いと思います。
振り返ってみると、ツッコミどころも色々ありましたが、先の展開への興味を尽きさせない筋書きで、きちんとテーマも設定されており、読み応えのある面白い作品だったと思います。執筆お疲れさまでした。そして、完結させてくださってありがとうございました。ツッコミどころが多いので☆3つとはいきませんが、とりあえず☆2つ、送らせていただきます。レビューコメントを書くのは苦手ですし、書こうとしてもネタバレは避けられそうにないので、そこはご容赦いただけると幸いです。
最後まで、長文失礼しました。
作者からの返信
コメントありがとうございます!
ぶわぁ……(´;ω;`)(謎の落涙) 別に僕はどなたかに人格を否定されて興奮する性質ではありませんが(笑)、偉そうなことを申し上げるとすれば、あじさいさんこそ、よくぞここまで『親しき中にも礼儀あり』を貫きながらご叱咤くださったものだと、感銘を受けております。もちろん『人格を否定された』などという感情は1ミリも抱いておりません(^^)
これ、通用するか否かが分かれる喩えですが……
【あじさいさん】モスラの卵
【岩井】それを崇める原住民
みたいなノリです(なんだそれは)
しかもあれだけボロ出しまくったのにお星様が二つも! お星様の価値について、などというのはあんまり考えたことのないテーマですが、『あのあじさいさんから頂戴した貴重な★★である!』
と、いうことは言えると思います(^^;
次は一人称、軽快なアクション攻めで行こうと考えております。
お願いは致しませんが、飽くまで『お誘い』として、今後も叱咤激励いただけると大変ありがたく存じます<(_ _)>
最後になりましたが、もう一回! ありがとうございました!
完結お疲れ様でしたm(__)m
海斗たちの物語は、きっとこれからも続いていくのですね。世界を駆け、世界に散らばるあのドラゴンのような生物と対峙していくのでしょうか。
海斗と華凛、落ち着く所に落ち着きましたね。いつくっつくのかとヒヤヒヤしていましたが(笑)
泰一と美希ちゃんもそれほどいちゃつくところはありませんでしたが、二人は余計にありませんね~。これからかな、と。
兎も角、お疲れ様でしたm(__)m
作者からの返信
コメントありがとうございます!
そうそう、せっかく三人称、それも群像劇的に描きたいという狙いがありましたので、色恋沙汰は若いもんに任せて2ペア作り(おい)、あとは渋い男性キャストとかっこかわいい池波先生に任せた、というところです(^^;
最後までご高覧くださり、ありがとうございました!(^^)/