7問目
さて、どうやら問題がある。
誘いのってやって来た女性を前に、どうにかして良い雰囲気へと持って行きたいのですが何故か手を出して火傷すると云う言葉がチラつきます。
この『手を出して火傷する』の類義語として『愚人は夏の虫』がありますが、この場合『愚人』に当たるのはどちらになるか予想しなさい。また、その理由も答えなさい。
……。
「結構切ったけど紬衣チャンの柔らかい髪質を生かしてみました。って……どう?」
きちんとセットした後に鏡を渡して後ろから覗き込めば鏡越しにニッコリと笑う紬衣のナニその見違えたようなその可愛いさって前も可愛かったケドこれなら誰だって振り向くよってオレの頭大丈夫かってヤラれてんなオイって思わず抱き締めたくなるケドまずは散らかったモロモロを片付けるため場所を移動してもらわないとナニも始められない。
ようやくって嘘です速攻であの日の約束通り次のオレの休みに紬衣を部屋に招待して髪を切るってコレ今まで付き合ってきた女の子にもこんなことしたことナイのにあーもうなんだよどれだけ好きなんだよとか怖いな。
もはやオレ何かの呪いにかかってる?
取り残した細かい髪は掃除機を掛けてっと片付け終わってみれば紬衣はビーズソファに興味深々で手を沈めたりして遊んでるし何だよソレずっと欲しかったけど諦めてるって言ってナニそれどうして諦めたって聞けばその前に座ってイイですかとか許可をオレに求めてきたけどモチロンいや是非座って下さい。
「ふわぁ〜っビーズクッションって包まれる感じが堪らないですよね。ホント人間が駄目になるって完全同意です。これ買っちゃったらわたしカビ生えるどころか人間終わってアメーバに変態できる自信あります」
ああ、そうなんだってゴメンすっげ分かるわにしても、ふわぁってナニ声出して可愛いなオイ。
ただオレも紬衣を今すぐにでも駄目にしたいってソコは完全同衾だからコレ普通のソファと違って密着度がハンパないし形も柔らかく変えられるからアレこれしやすいんだよなって最終目標はナニかは言わずもがなで髪切る約束取り付けた後コレすぐに買い換えに走ったくらい頭沸いちゃってますけど紬衣に黙って前から使っているフリをして笑ってますがナニか?
「気持ち良い?」
満足そうにコクリ頷く紬衣を見て違う気持ちイイを言わせたいとか考えナイわけないし「じゃあオレも」とか言って座ると中のビーズが動いて身体が近くなるように実はビーズを少なく調整してあるってオレ天才だな。
「やっぱり、この髪型よく似合うと思った」
さりげなく手を伸ばして髪の先にそっと触りながら指先で挟んで焦るなオレ焦ればさすがの鈍感で変態な紬衣にも気づかれて逃げられることになるからココは野良猫を手名付けるが如くじっくりと様子を見てってナニこれジレるってあーもう心臓ばくばくイってる。
「い、壱太くん? 何か……えっと……」
「何?」
「このソファ……二人だと凄く……ち、ちかッ近くならないですか?」
「そう?」
「だ、だって壱太くんの方に傾いて」
「ああ、じゃあこうすれば良いんだよ」
ってはい、ぐりぐりっとビーズ動かしますアレもっと近くなったオカシイなって顔しないでよ今度は二人で包まれるようになったから紬衣はもう逃げられナイね覚悟しようかってことで斜めに向かい合う形で脚を紬衣の前に出しさりげなく退路を塞いだ。
「ところで紬衣チャンって悠サンといつから知り合いなの?」
「え? っと……幼稚園が一緒で、そこからずっとですかね? アレ? この話したことありませんでした?」
「ん……忘れちゃったかな」
紬衣の髪の毛を指に巻き付けながら顔を覗き込むってここからが本題で本番だから悠サンいまに見てろよって紬衣の部屋だったら本当にナニか仕掛けて見ていそうだからオレの部屋で良かった。
「オレと初めて会った日、紬衣チャンは覚えてる?」
「う……あ、ハイ。見ず知らずの方を拾い上げてしまいスミマセンでした。わたしが酔っていたせいだとはいえ、あまりにもどストライクな見目麗しの殿方で好奇心を満たすため……じゃなかった、えっと、お尻あ……お知り合いになるには、この機会を逃すわけにはと……」
ヤバい紬衣が謝罪モードに突入する前にどうにかしないとナニも始まらないから。
「あー、つか謝るのはオレの方だし」
「え? どうしてですか?」
「あの日、オレが無理矢理キスしたの忘れちゃった?」
そのひと言でイキナリ真っ赤に染まった紬衣の愛しさに髪から手を離しするっと両腕を伸ばして背中に手を回して閉じ込めたよっしゃ一先ず成功だなってオデコをくっつけて目を覗き込んでみれば悠サンに頭突き食らったトコがじわっと痛いのも吹き飛ぶ「あわわ、わたし……ね、熱でちゃいました?」って何なの可愛いそんなのナイってあっても今更もう逃がさないし紬衣だってアレコレしてみたいとか触りたいとか見たいとか言ってたよねオレの方はもうアレコレしても全然良いってか見たいし触りたいし直ぐにでもシたいけど大事にしたいとか紬衣のこの様子じゃ先が長そうで思いやられるとか考えながらソレもまた一つの楽しみじゃねとか想像して妄想してゾクっとしちゃうオレもう変態でも全然良いですとか開き直っていやマジか。
「強引だったからやり直し、させて?」
「ふ、ふえっ? ど、どういう意味ッ……」
紬衣が言い終えないうちにその唇にそっと優しく口付けたあと角度を変えてまた触れて下唇を少しだけ吸って離れる。
驚いて固まる紬衣に、ふっと笑いかけた。
「今のがやり直し。次は悠サンの上書きするから」
「え? えっ……?」
「だってこのままじゃオレ、悠サンに負けっぱなしで悔しくて堪らないんだよね」
「い、壱太く……」
少し強引に紬衣の後頭部に手のひらを当てて、ぐっと引き寄せた。
馴染ませるように深く唇を合わせれば紬衣の苦しそうな様子に一旦唇を離す。
「く……苦しいです。息が……」
嘘だろまだ舌も入れてないのにって待てよ舌入れた方が呼吸しやすいよなとかソレより何だよ息止めてるって普通に自然に息すら出来ないとか紬衣の不器用でナニも知らない初々しさにヤラれちゃってオレもう駄目だ。
「悠サンとは、こんな……や、何でもない」
よく分からない歓喜が押し寄せて思わず立ち上がって叫びたくなるけど違う立ち上がりもあることだしってイロイロ我慢するオレ。
今度は片方の腕で紬衣の細い腰を絡め取るようにぐっと引き寄せるともう片方の手のひらで逃げられないように頭の後ろを包み込んでいた手を更にガッチリと固定して首筋の匂いにクラクラしながら顔を寄せ耳元に息を吹きかけるように優しく囁いた。
「紬衣チャン、オレの言う通りにしてみて」
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