6問目


さあ、ここで問題です。



 学校とは教育制度の中核的役割を担うものとして現在は広く認知されています。

 

 この『学校』の語源を答えなさい。

 また、日本に於ける最初の教育機関の設立した時代とその名称は何かも答えなさい。




……。


 悠ちゃんから頂いたケーキを「おもたせで恐縮ですが」とコーヒーと一緒にテーブルに並べ終わりさて座ろうとしたところで二人がわたしをじっと見るので思わず声を掛けられるのを待ってナニもない空気椅子に腰掛けたままですよ早くナニか言って下さい足が産まれたての子鹿のようにプルプルと震えてきてますからってスミマセンそこまで細くも毛深くもナイでしたねってナニをそんなに見ているんですか?


「紬衣、そのルームウェアくれた子ってどんなヤツなの? 写真とかある?」


 な、なんとこのモフモフが悠ちゃんも気になりますか手触り抜群ですもんねってコレじゃなくて写真? え? プレゼントをくれた子の? その子の顔や姿を見てその雰囲気から悠ちゃんが一緒にお返しするものを考えてくれるのでしょうかソレってある日突然ナニか霊的なものが左眼に視えるようにって違う世界が飛び込んできましたオカシイな。


「んー? ナイですよ……ってあ、去年の文化祭の時のがあったかも、です」

「見せて? ってか何でソイツの写真なんか持ってんの?」 

「ふぇ? 何でって……? クラスの集合写真です。あ、この子ですよ」


 確かコレだったとスマホのアルバムからその写真を画面に出して悠ちゃんに見せれば肩が少し震えていますねってさてはまた感度抜群の人見知りセンサー発動ですか。

 横からその写真を覗き込んでいた壱太くんは悠ちゃんのその震度二弱の震えに気づいたみたいで慌てながら「ゆ、悠サン? 少し落ち着いて」と言っていますが大丈夫ですよ悠ちゃんは極度の人見知りなので写真を見ただけでプルプルしちゃうんです。


「ふうん……今年は担任違う? そう。じゃあもう接点ナイよな?」


「接点? 担任は違いますケド……でも、この子が立ち上げた部活の顧問になってくれって頼まれたので、放課後は接点ありますよ? 顧問を無理にさせちゃったお詫びにってお誕生日にくれたのがコレなんです」


「へぇ……そうなんだ。無理矢理ヤラれ……じゃない頼まれちゃったんだな」


 あまりにもいつも通りの悠ちゃんに少しホッとしましたよって何故ならさっきまでの悠ちゃんはこの前キ、キスした時ひゃーみたいに甘い声と顔で名前を呼んだと思ったら肩に触れる時には獲物を捉えた美しい獣みたいな目でじっと見てくるので食べられるかと思いましたからって基本的に人間はヒトを食べませんよねアハわたしったらどうしちゃったんでしょうね。


 と言いつつ悠ちゃんから返されたスマホを形はそこそこヨロシクも重量のナイ胸に抱きながら悠ちゃんから離れて壱太くんの方へ座ってしまうのは弱者ゆえの本能です。

 うっまた凄い目で睨んでると思ったら一転して今度は何故かちょっと機嫌が良くなって次に涙目ってそれ情緒不安定とか夕方になると泣きたくなる黄昏症候群の子供みたいなものですか。


「紬衣が俺のこと意識してくれるって、すげー嬉しい」


 その時ゴンって凄い音がしたと思ったら壱太くんテーブルにカップを勢いよく叩きつけるように置きましたよビックリってソレは目測誤ったヤツですね分かりますわたしも良くヤリますウッカリ自分の口の位置と距離の計り間違えで飲み物ザッパァと溢しちゃうとか荷物重いと思ったら軽くて持ち上げた瞬間わぁ声でちゃうとかもあるあるですよねって同意を求めようとしたら壱太くん悠ちゃんと見つめ合ってるとか馬に蹴られそうですよ悠ちゃんが好きなのはやっぱり壱太くんでわたしが二人の邪魔シマウマ……。


 ん? 意識? ナニか聞き逃したような?


「悠サン、浮かれすぎですよ」

「壱太くんは調子に乗んなよ?」


 な、ナニが始まるんですか? 


「なぁところで紬衣、今年の文化祭はいつなの?」

「再来週です。悠ちゃん今年も来るの?」

「え、悠サン毎年行ってるんですか?」


 少し驚く壱太くんに悠ちゃんが「行かない選択肢があるか?」って真面目な顔で言ってますがそうです思い出しました悠ちゃん高校生の男の子が好きだったんですよねって何故なら前に文化祭に来る理由を尋ねた時に準備室がとか教室がとか制服を着せるのも良いケド逆に着て怒られてみたいかもとか良く分からない独り言をやや大きめの声で呟いていたような気がします。


「つまり悠ちゃんは男子高校生の制服姿が、好きだって……」


 うっわナニですかイキナリぶほっとコーヒー噴き出さないで下さい悠ちゃん顔が赤いですよってことはさてはズッポリ図星ですね? わたしのことを好きとかこの前のムニャムニャは未成年に対する不純な恋心を偽るため或いはいさめる為に無理してわたしを利用しているに違いありません。


「紬衣、それ誤解。俺が好きなのは紬衣だから。ソレまだ疑うなら、壱太くんの見ている今ここで証明してあげても良いんだけど、どうする?」

「う……ど、どうやって?」

「……で………とか………る」


 それを聞こうとする前に壱太くんにギュッと両耳を塞がれてしまい悠ちゃんがナニを言っているのか伝わりませんでしたよって壱太くんを見れば顔が真っ赤なのはやはり風邪をひいてしまったんじゃないかと少し心配です。


「壱太くん、顔が赤いです。やっぱりお熱かな? ちょっとコツンとしますね?」


 壱太くんのオウチでは熱の測り方はコツンが正しいようなのでってコツンとしましたが熱は無いようですアレ悠ちゃんどうしたんですか? なんで腕ひっぱるのイタタタ痛いですって「紬衣、代わりに俺が壱太くんの熱測るから退いて」とか言ってゴツい音しましたけど壱太くんおでこ押さえてますから。


「あータイヘンだ。熱があるみたいだから俺が壱太くんを部屋までちゃんと送ってくるから紬衣またな」


 悠ちゃんソレ棒読みも大概ですよ?






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