9問目
隣を歩く
「え? ナニが? いつもと同じだろ」
……って違うけどな。
今日こそは普段と違う俺で紬衣にイロイロ意識してもらわないとあの
……。
あーそうそう。
幼稚園の時、紬衣の髪を引っ張ってたのはヒナタくんとユウセイくんだよ常に一緒にいる俺が邪魔だからって好きな子の方に意地悪しちゃうってナイだろソレ好かれる要素ってコトで無視して正解だった。
小学生の時の小石はシュンヤくんとソウマくんだなコレは紬衣が怪我するからムカついて上履きにぎっしり校庭の花壇の砂を詰めといたんだよな。
中学と高校はソレ女の子だし俺にもイロイロあったからゴメンな紬衣。
「ソレでも俺は紬衣が誰からも見えてなくても、俺には紬衣しか見えてないからってホラあれだよ、う、うん、運命……って聞いてる?!」
聞いてナイし響いてナイし挙句ナゾナゾはナイから紬衣それもうワザとじゃね? って思わず握っている手に力を入れたらもっと優しくして下さいとかもうナニそれ歩きながらじゃなくて違うところで言わせたい。
酔ったからでもオバケが怖いからでもそんな言い訳することなく昼間から紬衣と手を繋いでいるという現実に幸せな気持ちで公園に向かいながら紬衣が俺との懐かしい思い出を話すのに耳を傾けて……あーうん、まあソレな。
お医者さんごっこはソレ紬衣が患者さんじゃないとイロイロ見れないし触れないからねってソレに俺が患者さんだと興奮しすぎて鼻血出したりしたコトも懐かしい。
中学と高校はアレだよ性春まっサカリの俺は紬衣の近くにいるだけでナニしか考えられなくなっちゃうっていうお年頃だったからソレに電話越しに聞こえる紬衣の声とか吐息だけで何度もイ……ってソレよりナニより紬衣にヤキモチを妬いて欲しかったんだ。
「え? ……なんで?」
「なんで?! なんでってソレ聞くんだ?」
紬衣のきょとんとした顔を見て、やっぱりナニも分かっていなかったんだってそりゃそうだ傍に居るだけでいつかは紬衣が俺のコトを好きになってくれるんじゃないかって期待してるだけだったしそのクセ本当のこと言えば俺ばっかりが好きなコトにも頭にきてた。だけどナニもしなかった……って紬衣を独り占めするために孤立させるくらいはシタけどソレとコレは違う。
そうだよ俺はこんなにも紬衣が全てなのにフラれるのが怖いからって寝ている隙のちょっとしたオサワリくらいでナニもしなかったんだよってそうじゃないから俺ナニしてんだよそんな紬衣に拒絶されたらどうしようなんてクソみたいなプライドいらねーわ生涯ずっと俺は紬衣しか好きにならないって分かってるんだから……。
力をこめたら簡単に折れてしまいそうな紬衣の細く、でも柔らかな手を握りしめて公園の人影のないところまで歩く。
紬衣の背中を木の幹に押し付け、その顔を覗き込んだ。いつになく真剣に。
「……紬衣。なあ……いい加減、気づけよ」
「気づくって目の前に居るのはホントに悠ちゃんではなくって悠ちゃんにソックリな宇宙人でわたしのこと騙してるってことですってそうなの?」
ええ?
紬衣ナニそれ俺が宇宙人とかって。
「それって俺が別人みたいだって言いたいんだろ? マジか……ふふッ。あーやばいって紬衣、すげー可愛い」
そのまま、これまでの俺とは違う目で見て欲しい俺もう只の幼馴染じゃ……って、え、ちょ、ちょっとナニどうしたって紬衣ナニしてんの俺の身体撫でまわしてスイッチって言ってるけど……き、気持ちイイから服邪魔だなって違っ、違わないな紬衣の細い指が俺の身体を優しく触ってるって夢じゃないかコレもう夢オチとかだったらどうしようソレならいっそヤッちゃいますかこの場でイッパツって駄目だからリアルの場合公序良俗に反する公然猥褻罪によりガチ逮捕案件だから。
とはいえ……。
「なあ紬衣、さっきから身体撫でまわしてソレ煽ってるから……ってところでスイッチってナニ?」
え、本気かよソレ良く分からないケド夢中で探してる少しイタイ紬衣もまた堪らなく好きだなって……あ、背中から這うようにして脇腹に沿って前の方まで触って探してくれるってコレ期待してイイですかイイですよって来ましたよマジか掌を使うだけじゃなくてソコもっと擦り上げるようにして強めに指先にぐっと力を……。
「ん……ぁソレやばい」
思わず漏れた俺の声に顔を上げた紬衣を見れば少し怯えているってナニもう心臓がぎゅっとしたからその表情ハジメテ見たし掴み上げた手を上に退けないと逆にしっかり最後まで導いちゃうからゴメン紬衣でもちょっとだけ許して。
疼く身体を本能のままにピッタリと押し付けてソレじゃ足りないって欲望に
「紬衣……」
「ゆ、悠ちゃん?」
その戸惑う声に掴み上げていた紬衣の手を離すと同時に身体も離した。
真っ直ぐに紬衣の顔を見る。
胸ともう一箇所が苦しいくらいに痛い。
「気づいて欲しいのは、俺が紬衣を好きってコトだよ」
「……? わたしも好きですよ?」
ああ紬衣ソレ違うから全然違うんだよ。
「俺の好きって言うのは紬衣であらゆるイヤらしいことアレコレ妄想してるってヤツだからソレこそ全部言葉にしたら紬衣が俺のコト一瞬で見る目が変わるくらいにずっとそういうコトしたいって思ってた」
「え?」
「紬衣が同じように俺のコト好きになるのをずっと待ってたんだケド知らなかったよなって俺も言えなかったし言わなかったし」
紬衣の顔が少しずつ赤くなるのを見て、ようやく俺の言葉が届いたと分かったって言ってもよく考えたら……よく考えなくてもあの告白はナイっつーかイヤ相手は紬衣だからもっとアレコレ具体的に言うべきだったかなソレでも駄目ならどうするって……。
「悠ちゃんは、わたしのコトが好きってソレはつまり……」
「こういうコトだよ」
両手で優しく紬衣の頬を挟むと目を覗き込んだ。そのまま顔を掬い上げるようにして紬衣の顎を上げ、ゆっくりと唇を合わせる。
最初は
続けて唇を柔らかく喰み、離して目をまた覗き込む。
「紬衣、分かってくれた?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます