7問目


それでは問題です。



 かけがえのない幼馴染との間につちかってきたこれまでの関係を、白紙に戻すこと迄はしたくないものの新たな関係を結ぶにはそれが邪魔をしてきます。


 これからの関係は今までとは違うと相手に意識させる為にすべき事は何か。三十文字以内で答えなさい。

 


……。


 昨夜は寝落ちしている紬衣ゆえをベッドまで俺が運んだは良いが、あの男……壱太いちたとやらが居た所為せいで普段なら寝ている紬衣に出来ることもナニもせずに部屋の片付けしただけで帰るって家政夫かよソレはナイってせめて夢の中でお嬢様にイロイロ教える淫らな執事になりたい。


 でもまあ、その代わりと言ったらナニだけど、さっきの診察で紬衣の生温かいぬるりとした口の中に指を突っ込んで柔らかく湿った頬の内側や唾液に濡れた舌をゆっくり時間を掛けて優しく嬲るように触りまくったからって足りないから全くもって全然足りない出来ることなら俺の指を軽く吸いながら舌で蕩かすようにして舐め返すようにお願いしたいしソレ手袋のゴム越しじゃなくて紬衣だけは直で生でヤリたいしナニならあの溢れる唾液を吸……。


「……センセ? ゆうセンセー?」

「あ、ごめん。ちょっと考え事してた」

「すっごい難しい顔してましたよ? 患者さんの治療とかじゃなくて何か他の心配ごとなら、あたし相談に乗りますよ?」

「……あ、結構です」


 ち、ちょッ腕、腕を撫で回すな。ったく俺にいま触るなよ難しい顔して若干前傾姿勢で端末打ち込んでんのはイロイロ事情があるんだよ。

 つか親父の趣味全開の今どき短いそのワンピース型のユニフォームわざとサイズ一つ小さいの着てるこの歯科助手の子があわよくば乗ろうとしてんのって相談じゃなくて俺のアレの上なのは知ってるもナニも…… って紬衣が男拾ったりするから悪いんだよナニなら俺あのとき酔ってたとはいえお互い割り切る約束したからコトに及んだんじゃなかった?


「悪かった……アレはもう二度とナイから」

「えー? あたしは別に良いのにィ」


 うぜェ……失敗も失敗大失敗だった。

 紬衣のことで弱っている時は思考能力も判断能力も鈍りまくってロクなことにならないのは分かっていたってのに……って。

 

「あれー? ユミちゃんは、悠くん狙いなのかな? 駄目ダメやめときなサイ。そのムスコくんは報われそうにない幼馴染に生涯ストーキングすることに人生賭けてるからさ。まぁそうは言っても、ボクも怖い奥さんがいなきゃ……っとと。さ、お喋りはヤメて、ほら帰る支度する」


 オイ、親父。

 どっちだよ。ユミとやら言うその歯科助手なら喜んで熨斗ツケてくれてやるよ母さんにも黙っててヤルけどまさかの紬衣じゃないよな? いつもの冗談だよな?


 えーとかナニとか不貞腐れながら言うも渋々、撫で回していた俺の腕に爪を立てるようぎゅっと握ってから離した後わざとらしく尻を振りながら更衣室のある方へ消える歯科助手のヒラヒラするスカートを目を細めるように見ていた親父は、その姿が完全に見えなくなると凄い勢いで振り返って俺の耳元に顔を近づけるって近い、近いから。


「……悠くん。幼稚園の頃から重症なのは知ってたけどナニかあった? 進展したの? 後退したの? 座礁しちゃった? パパに、こっそり教えてくれたらボーナス弾むよ?」


 お、親父ッ卑怯だからどっちでもねぇわ現状維持だわって言いたいケド……あの男。


 帰り際に「じゃあ、また」ってナニそれもう俺は二度会いたくないけど二度と会わないってことは紬衣がどっちかといえば壱太とかいう男を選んで二人きりでしか会わないとかいう選択しちゃってる後ってコトだからイヤでも「またな」って言うしかなくないかソレどうなの?!


「ほらほら、悠くん。ボクはお嫁さんに紬衣ちゃんが来てくれるのイロイロ楽しみにしてるんだから頑張ってね?」


 な、なんか頑張ってはイケないような気がしないでもないっていやソコは取り敢えず置いとくとして嫁に来て貰う前に是が非でも済ませておきたい婚前交渉ならば今日こそは違う俺でありたいって……待てよ。


 いや、もう結婚しちゃえば良くないか? 


 そうだよ。

 いっそのこと紬衣となら逆に文字通りの初夜ってヤツでイチからモノから手取り足取り教えるので構わなくないかっていやソレどうする最高かよ。恋がどうの愛がなんだのソレ俺がナニなら全部ゆっくり生涯かけて教えるしって何でそんな大切なコト今頃になって気づいた。そうだな結婚さえしちゃえば家の中に閉じ込めて軟禁しようと監禁しようと誰にも分からないんじゃないかって俺、どうした何処に向かって突き進んでる?


 や……マジであぶねーわ。

 さすがにチョット本気な自分に引くわ。

 せめて俺の世界に閉じ込めるとかフワッと曖昧な表現しようよソコ。

 じゃないと、このままイッたらワタシはコレで人間辞めましたってなるから人生詰んじゃうから。

 俺の成分の半分は紬衣でもう半分も凡そ紬衣で出来ているってのに、このところ紬衣が足りな過ぎて危うく人生崩壊させるところだったなんて笑える要素なんてコレ一つもないからガチです。


 ソレはさて置き怪しまれずに結婚に漕ぎつけるなればこそ、まずはフツーに今日は紬衣を外に連れ出して昼を食べてのんびり散歩でもして今までとは違う目で俺を見てもらうために二人でなるべく誰にも邪魔されないってマズいまた違う妄想のスイッチ入ったって……あれ親父ナニまだこっち見てたんだ。つか、その眼差しはヤメテ。


「悠くん……大丈夫だよ。今晩も帰らなくてもまだ、お赤飯は炊かないって分かってるからね」


「……勘弁して」




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