第7話『襲来』


 コートの埃を払いながら、現れた長身の男はアキハルへと向き直る。


「久し振りだな、【漆黒の魔王神】ダークネス。貴様の引退を耳にしたときは何かの冗談だと笑っていたが、その様子では息災のようでなによりだ。いや、貴様の活躍は既に映像で拝見させてもらったばかりだ。多少の衰えこそ見えたはしたが、なに、貴様の奥底で燻る炎の色は、今もなお翳り一つないとオレには映っていた」


 男は何もかもを見透かしたような力強い視線でアキハルを見ると、男は徐に右手を差し出す。


「少しは前に進めたようだな、黒鉄くろがね晶玄あきはる

「……。心配お掛けしました、【社長】」


 出された手を少しだけ見つめてから、アキハルはその手を握り返す。

 この人は本当に、いつでも全部お見通しらしい。

 アキハルのその感想を裏付けるかのように、男はとある一点を睨んで声を上げる。


「そして貴様だ、諸星もろぼしすぐり。そんなところで何をこそこそとしている」

「あ、あぁ〜、いや〜……」


 ビクリと、名指しされたスグリは何故か机の陰から申し訳なさそうに顔を出す。

 どうやら隠れていたようだが。


「あぁそういえば、お二人は知り合いだったんですね」


 マキが窓を開けたのを見て、アキハルと同時に声をあげたスグリ。さっきと今の反応を見るからに知り合いではあるのだろうが、これは……?


「ふむ。確かに知り合いではあるが、その肩書きには少々語弊があるな」

「というと?」

「オレとこの女、諸星優は雇用主と被雇用者の関係にある」

「それってつまり……」

「スグリはその男に――」

「雇われてるて――」

「ことでありますかな?」


 男の言った言葉に反応してサヤ、オトミ、ヨリアキが声を漏らす。

 その視線は自然と、話の中心であるスグリへと向けられる。


「ああ、もう、わかったよ。しょーじきに言うからそんなみんなして見つめないでくれ〜」


 どうやらスグリにしては珍しく照れている様子で、ブンブンと余った制服の袖を振って抗議してくる。

 落ち着いたスグリは「コホン」と一つ咳払いをしてから話し始める。


「まず始めに、この厄介な男は名前は瀬戸内せとうち八城やしろ。瀬戸内グループの現副社長にして、瀬戸内グループ代表の息子で御曹司その人だ。キミたちも、瀬戸内グループの名前くらいは聞いたことあるんじゃないかな?」


 瀬戸内グループ。その名前を聞いて何人かが反応する。それもそのはず。瀬戸内グループは日本国内で数々の事業を展開する大企業の名だ。日本で育ったのなら、瀬戸内グループのCMを目にしたことくらいあるはずだ。

 そんな大企業の御曹司が彼であり、高校三年生にして副社長すら務めている正真正銘の社長候補なのだ。

 そんな男がこんな一私立高校のマイナー部活動に何の用があるのかと言うと――、


「そして、厨二病を活用したコンテンツ『セカンド・イルネス』の企画・運営・プロデュースをしているのもこの男さ」


 そう。この男、瀬戸内ヤシロこそが厨二病をただの病気ではなく、一種のスポーツへと昇華させた張本人なのである。


「買い被りだな【漆黒の魔王神】。オレはすでに存在していた厨二病どものノラ試合を、一つのコンテンツとしてまとめ上げたに過ぎない」


 心の中を見透かしたようにヤシロがアキハルに指摘する。

 本人はそう言うが、病気として認定されているやくわからないものへ出資し、そのルール整備や機材の開発などを行なったのは間違いなく厨二病界にとっての革命に他ならない。


「ま、その辺の真偽はともかくとして。このいけ好かない男がボクらにとっての御上であることには間違いないさ。あ〜あ〜、お金持ちはイヤになるね〜」


 やはりスグリはヤシロを嫌っているのか、その態度はつっけんどんなものだ。


「そう邪険にするな、諸星優。今日は貴様ら二人に良い話を持ってきたのだぞ」


(貴様ら二人?)


 ヤシロのセリフに引っかかるアキハルだが、スグリの熱は収まらない。


「ふん! なーにが良い話なものか! 君がここに来たってこと自体がボクにとって悪い話だね! どーしてくれんのさ、この窓! こんなにしてくれちゃって、生徒会にドヤされるのはボク自身なんだぜ!?」


 まくしたてるスグリ。どうやらヤシロのことは相当嫌っているらしい。

 しかしヤシロはどうでもよさそうに鼻を鳴らすと、


「フン、そんなことか。窓ガラスの一枚や二枚、欲しければいくらでもくれてやろう」


 パチンと指を鳴らすと共に、黒服にサングラスといういかにもな服装の男たちが数人部室に現れ、瞬く間に部室の窓を完全修復してしまう。むしろ前よりも豪華になっている気さえする。


「どうだ庶民ども。これで満足いっただろう」


 まさに漫画のような金持ちムーブに、思わず感嘆の声を漏らす部員一同。そしてそれを見て「ぐぬぬ……」と悔しがるスグリに、どこかヤシロも満足気な様子。


「わぁ……。さすが社長さんですねぇ〜……」

「ダメだよ、ボクの乙女!」

「オトミだよ〜」

「この男は自分で社長を名乗っているけど、本当の社長なんかじゃあないんだよ。さっきも言ったけど、この男は社長の御曹司。社長じゃなくて副社長。この男の【社長】ってのは厨二病で言うところの『二つ名』。本当は社長じゃないのに、自分で【社長】を名乗ってる痛いヤツなんだよ!」


 だからこんな男に惚れちゃダメだよ! と、忠告を促すスグリ。

 そう。厨二病を一つのコンテンツへと昇華させたヤシロ自身も、何を隠そう厨二病なのである。

 某カードアニメに出てくる主人公のライバルキャラがヤシロと同じ社長の息子であり、そのキャラの在り方に大きく感銘を受けたことから自らを【社長】と名乗るようになったのだとか。


「フン。オレの話なぞ今はどうでもよい。それよりも諸星優、話を続けさせてもらうぞ」


 そう言うとヤシロは勝手に空いた席へと着き、さっさと話を始める。


「フン。なかなか良い部屋ではないか。少々手狭ではあるが、居心地のほどは悪くない。下手に小綺麗さを装った部屋などいくらでもあるが、ここは厨二病らしい混沌カオスさがあっていい」


 ズズズと、オトミに出された茶を啜りながらヤシロは部室の感想などを述べる。

 しかしやはりスグリは不満らしく、机に片肘を突いて面白くなさそうに自分の指定席に座る。


「お為ごかしはいいよ。それで、いい話って何さ」


 スグリの態度からさっさと話を終わらせたいという考えが如実に伝わってくるが、ヤシロは気にした様子などなく話を続ける。


「フン。単刀直入に言おう。諸星優、オレの元へ来い」

「い・や・だ・ね」

「ふむ。そうか」


 ・・・・・・。

 たったそれだけを交わして、会話が終わる。

 二人は何事もなかったかのように茶を啜るが。

 そんな話を聞かされて黙っていられてないのは周りの方なわけで。


「ちょ、ちょっと、今のなんですか社長! それに先輩も!」


 そのまま待っても話を続けそうにない当人たちの空気を割って、アキハルが部員を代表して声を上げる。


「別に驚かなくてもいいよ後輩くん。これ、いつものことだから」


 言いながらスグリは、本当にどうでもいいと言いたげに手をひらひらと振ってくる。

 

「い、いつもの……?」


 やはり理解できぬまま今度は社長へと視線を投げる。

 その視線には応えようとせず、社長は腕を組んだまま話を続ける。


「フン。やはり断るか、諸星優。既に幾度も我が社に就くことを要求しているというに。何がそんなに気に食わない? 報酬も研究環境も、全て貴様の望むものを用意してやる」


 自家用ヘリで現れ黒服の手下を幾人も従える男の言う言葉だ。本当にスグリのために『なんでも』を用意できることは既に明白だ。しかしスグリはそれをあっさりと断ってしまっている。


「何が気に食わないぃ? そんなの上げればキリがないね。まずキミの「従ってあたりまえ」とでも言いたげなその態度。嫌でも鼻につく。それと、報酬が良ければ誰でも従うと思ってるところも気に食わないな。別にボクは、報酬とか研究環境とかには興味はないんだ」


 声の端々から苛立っているのがありありと見える。生徒会の件といい、どうもスグリはこう上から物を言ってくるタイプの人間が苦手らしい。というか嫌いなのだろう。正直お前はどうなんだよ、と言いたいところだが、今はそれよりも気になることがある。


「あの、一つ聞きますよ。研究って、何の研究ですか?」

「……それは」


 挙手して勝手に質問するアキハルに、スグリは目を逸らして答えない。

 何にでも突っ込んでいくスグリにしては、何かを秘密にするのは珍しい。

 そんなスグリの様子を見てか見かねてか、社長が口を出す。


「なんだ。もしや話していないのか、諸星優」

「話……、何のことですか」

「…………」


 双方に視線を向けるがスグリは答えず、社長はスグリを見たまま。


「それともこう呼んだ方がよいか、【叡智秘めたる錬金術師アイテムメーカー】?」


「…………」

「【叡智秘めたる錬金術師アイテムメーカー】って……」


 部員一同は揃って疑問符を浮かべているが、この業界に比較的長いアキハルだけはその言葉に覚えがあった。


「聞いたことくらいはあるだろう。ありとあらゆる厨二グッズを産み出す天才的科学者の話を」

「ええ、まぁ……噂くらいなら」


 厨二病コンテンツ『セカンド・イルネス』の発展に際し大きな問題がいくつかあった。その一つが厨二病の視覚化である。

 厨二病による発光現象の視認には個人差があり、年齢が上がれば上がるほどその視認性は悪化する。統計データによれば二十代では半分の人間が、三十代ではそのほとんどが、四十代を超えれば全ての人間が厨二病をただの発光する靄にしか見えなくなるらしい。

 そういった上で、世間に広く厨二病がどういうものか認知してもらうためには厨二病能力の視認化が必須条件だった。


 それを可能としたのが、厨二病界の天才科学者【叡智秘めたる錬金術師アイテムメーカー】だ。

 彼が作ったとされる厨二病視認化技術は開発から数年経った今もなおその根幹を支えており、彼の技術なしでは既に厨二病界隈な成り立たないとさえ言われている。


 だがそれは、あくまで噂の話。まことしやかに囁かれる厨二界きっての天才は、そういう話が好きな厨二病の妄想――ただの噂に過ぎないとされてきた。なにしろその正体を誰も知らないときている。有名厨二病から古参厨二病まで、その正体はおろか年齢・能力・所属などなど、その一切を知る者が今日まで一人も現れなかったのだ。

 そうなるとこの流行り廃りの早い厨二病業界、一世を風靡した噂もすぐに風化し、昔流行ったただの都市伝説へとその格を落としてしまう。

 こうして稀代の天才科学者【叡智秘めたる錬金術師アイテムメーカー】は誰も噂しなくなったのである。


 しかし【社長】瀬戸内ヤシロは言う。

 その噂の天才は実在するのだと。

 そしてそれは何を隠そう――


「先輩が……【叡智秘めたる錬金術師アイテムメーカー】……?」


 部室内の全ての視線がスグリに集まる中、渦中の人物であるはずのスグリは未だ視線を逸らしたまま。その顔は、どこか拗ねているようにも見受けられる。


「……はぁ。ホント、キミは余計なことばかり言う男だね。キライだよ。心底キライだ。……あ〜あ。別に秘密にしてるつもりもなかったけど、言うつもりもなかったんだけどなぁ……」


 スグリは項垂れながら答える。いや、その様子は、何かを告白しようというよりは、まるで愚痴で漏らしているかのようだ。

 しかしスグリはため息を一つ吐くと、スクっと顔をあげる。


「そうだよ。その男の――後輩くんの言う通り、ボクの二つ名は【叡智秘めたる錬金術師アイテムメーカー】。妙な機械を造るのが大好きな、しがない厨二病さ」


 観念したように両手を上げて名乗りを上げる。

「先輩が【叡智秘めたる錬金術師アイテムメーカー】……本当に……」


 信じられないという風にアキハルは呟く。

 他の厨二病歴の浅い他の部員には理解できないことだが、【叡智秘めたる錬金術師アイテムメーカー】の名は昨年度最強と謳われた『三強』――アキハル、以前の試合で戦ったアーサー、そしてもう一人を含めた三人の実力者たちよりもその存在は大きいものだ。

 そんな人間がよりにもよってこんな無名の部活動の長をやっているなんて。

 その異常性に。その意外性に。そしてその偶然に、アキハルは他の誰よりも戦慄していた。


「これで理解しただろう。オレがこの女を自ら勧誘なんぞに来たわけを。この女の成した功績は一般人への厨二病視認化だけに留まらない。本来映像に残すことのできぬ厨二病の撮影の成功。肉眼での厨二病視認を可能とする特殊領域フィールドの形成。厨二病でないものが擬似的に厨二病能力を使うことができるアイテムの開発。その他特殊な厨二病能力に対応した各種補助器具。この女の成した功績は両の指では足りんだろうな」


 社長の口から淡々と語られる【叡智秘めたる錬金術師アイテムメーカー】による功績の数々。

 そのどれもが毎日顔を合わせていたこの小さな部長によるものだということを、未だに実感持てないでいる。

 それは他の部員たちも同じようで。よくはわからないまでも、それらが偉業であるということは理解できているようだ。

 その証拠に、誰も口を開けないでスグリを見つめている。


「そんな女がこのような凡庸な高校の一部活動にいるなど、この世の――否、厨二界隈の多大な損失に他ならない。お前もそう思うだろう、【漆黒の魔王神ダークネス】」

「っ……」


 名指しで問われた理由を、アキハルは理解している。

 【社長】は、アキハル自身にもここにいるべきではないと言っているのだ。

 一時は『三強』として名を馳せたアキハルを、【叡智秘めたる錬金術師アイテムメーカー】と共に、お前たちの場所はここではないと。


 そう、言っているのだ。


 言葉が出なかった。

 実際、話を聞いていてアキハルもそう思ってしまった。

 先輩は――スグリはこんなところにいていい人材ではない、と。

 スグリを見る。スグリは何も言わない。ただ何か申し訳なさそうに目尻を柔らかくするだけで、決してスグリはアキハルに答えを促しては来ない。

 アキハルなら引き止めてくれると思ったからだろうか。

 いや、違う。アキハルの答えなら、どちらでも構わないと思っているからだ。

 だからこそ、スグリは何も言わないのだ。

 何を言っても、結果は変わらないから。

 それを理解して、アキハルはヤシロに向けて口を開く。


「お……っ、俺は――」



「そんなの、思うわけない」



 意を決して口を開いたアキハルの言葉を遮ったのは、さっきまで誰の視界にも入らない部室の端で佇んでいた小さな少女の――サヤの声だった。

 面を食らったように一同の視線がサヤへと注がれる中、サヤは気にせず続ける。


「スグリはわたしたちの部長。スグリ自身がお前のとこに行くのを望んでるなら別だけど、そうでないならわたしたちの部長であることは変わらない。これまでもこれからも、スグリはずっと厨二部の部長」


 ただ真っ直ぐに続けられたその主張は、厨二界の発展とか、人材の持ち腐れとか、社長の語った諸々の理由など知ったことかと言わんばかりの内容で。スグリは部長だから部長なのだと、まるで子供のような主張だった。

 だが、その当たり前の主張は、サヤが当たり前のだと思うほどに当たり前で。

 スグリの意思など無視した社長の言い分を、真っ向から、真っ当に否定した当たり前の内容だった。


 今までサヤのことなど眼中に入っていなかった社長は、その台詞を聞いて初めてサヤへと視線を向ける。その――氷よりも冷たい青眼を。


「ふむ。貴様、名を陽乃下ひのもと紗弥サヤと言ったか」


 社長は立ち上がり、その長身からサヤを見下ろすように言葉を放つ。

 ただでさえ小さいサヤの身長では、まるで大人と子供のようにさえ錯覚してしまう。


「かの剣術の名家、陽乃下家の長女であり、中学では剣道の全国大会を二連覇した逸材だとか。素晴らしい成績だが、『セカンド・イルネス』は今年始めたばかりの新人。要は無名だ」

「それが何」


 決して圧や肩書きに怯まないサヤだが、相手は厨二病界――ひいては『セカンド・イルネス』全般を取り仕切っている総支配人。そんな相手に凄んで、一体どうなるか……。


「社長、サヤは――」


 だがしかし、アキハルが二人に割って入ろうとして、またも遮られてしまう。


「だが、あの男【白銀の騎士王】すらも退けた実力を持つ、現在最も注目を集める期待の新人でもある」


 ニヤリと、社長は不敵な笑みを浮かべてサヤから離れていく。


「【漆黒の魔王神ダークネス】。何もオレは貴様らを取って食おうなどとは思っていない。貴様らは貴重な人材だ。その貴重な人材が無為な時間を過ごすのを、オレは許せないだけだ。このような場所で何ができるのか気になっていたのだが、」

 

 そう言って社長は言葉を区切り、部室内を見渡す。

 ヨリアキは指を震わせながら眼鏡をクイっといじり。

 オトミはビクつきながら当たりをキョロキョロと。

 そしてマキは、社長と目が合った瞬間フンッと腕を組んでみせる。


 部員それぞれがそれぞれの対応をして見せてから、社長は再びアキハルへと視線を向ける。


「なに、面白い人材を育てているではないか」


 どこか楽しそうにそう言ってくる。


「諸星優。貴様の意見は理解した。今日のところは見逃しておいてやろう。貴様がこのウサギ小屋のような部屋でやることがあるというのならば、オレはその意見を尊重してやる。しかし貴様が少しでも腐ろうものなら、問答無用でオレのところへと来てもらう」


 ビシッと、まるで劇画のような作画でスグリへと指を刺す。


「別に、キミに了承してもらうようなことじゃないよ」


 やはりスグリはつまんなそうに答える。


「でも、そうだね。一つだけ当たりと言っておこうか。ボクは今、キミのとこなんかに行くことよりも、よっぽど楽しいことをしている真っ最中だ。だからキミの方針に関わらず、ボクはしばらくの間ここの部長を続けさせてもらうよ」


 言いながらスグリは、アキハルとサヤの方へとウインクを飛ばしてくる。


「そうか。ならば理解した。背に腹はかえられぬが、了承してやろう。部下の意見を聞いてやるのも、【社長】の役割だからな」


 バッと、何の意味があったのかわからないがとにかくコートをはためかせ、ポーズを決める。


「であればもう一つの要件だ、【漆黒の魔王神】ダークネス」


 二つ名を呼ばれ、顔をあげる。

 そういえば、社長は『貴様ら』と言っていた。一つ目の要件がスグリの引き抜きならば、アキハルへの要件は?



「【漆黒の魔王神ダークネス】、貴様に六月に実施予定の大イベント『碧海あおみ大祭』にて、大トリであるラスボスを務めてもらいたい」



「…………え?」


 厨二部一同の視線が、今度は自分に向けられているような、そんな気がした。



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