第244話 気合(発声)
―ここまでのあらすじ―
天城矜侍のLIVEカメラ争奪戦のためアステリズムメンバー(仮)でレベ上げ中。
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「行ける、とう!」
ザンッ
椿が
「椿ちゃん、薙刀では無駄な発声は反則なんだから掛け声以外はダメでしょ! それにやっとスキルなしでピュートーンかー。
「ハァハァ……、つい言葉が出てしまった。次からは気をつける。しかし、猪瀬さんとはそんなに差が? 七海さんの魔法を見て差があることはわかってはいたんだが」
「いや、今宵よ。今は薙刀の試合じゃないんだから、声を出しても問題ないだろ。それに俺たち……いや、俺と今宵はすぐだった気もするけど、キィちゃんとさっちゃんの対応速度とは同じくらいじゃないか?」
「「はぁ!?」」
たしか今宵が薙刀を習っていた時に、ルールに打突時以外の発声は禁止と言うのがあり、一切声を出してはいけないのか師範に聞いたら、『罵声や独り言じゃなければ問題ないとか言ってたー』とか言ってなかったか?
逆に剣道だと一本の条件に気合(発声)があり、打突以外の時でも声を出すことがあるので薙刀術と剣道の違いはそこも大きいらしかった。
今宵たちと18階層で撮影会をしてから約4時間。
俺たちは既に23階層へとやってきている。
18階層が最高階層(通常だと野営が必要になるので)だった椿は、そこから階層の敵が1対1で倒せるまで戦い、倒せたら次の階層へ上がると言う行動を繰り返して現在は23階層までやって来ていてナーガとピュートーンを一人で倒せるようになっていた。
この階層に来るまでの道中で俺と桃井先生が、椿の対応の早さを褒めすぎたせいなのか、途中からなぜか急に今宵たちが椿に毒を吐くようになり……今に至ると言う訳だ。
椿の場合は、父さんたちと訓練をしたと言っても16階層がメインだったので、そこからたった4時間で23階層はやはりかなり早いと言える。
そもそも今宵が例に出した猪瀬さんの場合だと、この階層は俺と東三条さん以外の攻略道のメンバーで攻略していたのでかなり時間がかかっていた。
「そうよぉ? そもそも猪瀬さんの話を言っていたけどぉ、あの子が25階層で戦えるようになったのだって私のお陰だしぃ、たった4時間でここまで来れているのは異常よぉ?」
「時間がかかったのは
……?
なんて? アステリズムの六人目で猪瀬さんを推薦するのかと思ったら、ペットのマイクロミニブタ推しなの? えぇ……? どういうこと!?
それはただペットのミニブタをダンジョン内で散歩させるだけだよね?
そもそも今の俺はぽっちゃりじゃないから、俺みたいって所が既におかしいよね?
しかも桃井先生は今宵になぜかアイちゃん呼びをされるようになっている。
「あなた達でも嫉妬するのねぇ。出る杭は打たれるっていうけどぉ、アステルやシンとファーナでもそうだと思うと感慨深いわぁ」
「「「してない!」」」
椿はこの23階層に来るまでにレベルが21に上がり、スキルを一つ獲得したのだが、その時に獲得できるスキルは、害意察知、危険察知、気配察知と何故か察知系が出ていたようで、俺は危険察知を勧めた。
そこに待ったをかけたのが桃井先生で、彼女のお勧めは気配察知。
俺は気配察知は、訓練すれば覚えることができるのでそれを伝えたのだが……、矜侍さんのイベントまでに覚えられなかった場合に、椿が死ぬ可能性を提言されたのだ。
危険察知はたしかに有用ではあるのだが、桃井先生曰く、偶発の出来事にそれは発動するのかしらぁ? と言うことなのだ。
例えば毒グモが近くにいたとして、毒以外は強くもない。
その場合にたとえば誤ってそれに触れてしまう場合……、本当に危険察知は反応するの? と言われたのだ。
もちろん、毒に触れるもしくは毒を注入されるような状況になればそれは反応するだろう。
暗殺者がいたとして、殺しにくる瞬間は反応するだろう。
でも、そこにいるのに害意や悪意、何もする気がない状態の時に、害意察知や危険察知は反応するのか? と言う話になったのだ。
もし、未来で何か悪いことが起きることを危険として察知をするなら、それは未来予知では? と言う話になり……。
椿は訓練で覚えることができるはずの気配察知を、今回のイベントのためだけに取得することとなった。
さらにその時に、キィちゃんがマウントをとろうと、椿にステータスの話を振り、椿はほぼDと言うステータスでキィちゃんは椿を馬鹿にしたのだが、同一レベルの時は、キィちゃんはもっとステータスが低かったことが明らかになり……桃井先生は国立に受かるレベルの人と
その結果、椿を褒める俺と先生に対して、キィちゃんとさっちゃんは辛辣な言葉を言うようになり、なぜか今宵もそれに便乗してしまっているのだった。
しかも現状は椿の実力が足りていないのは事実なので、今宵たちの辛辣な言葉もアドバイスとして受け入れて反論どころかお礼を言う椿に、今宵たちは戸惑っていた。
まあ、たしかに前の椿なら言い返していたような言葉にたいしても、カルラ戦時の今宵を知っているからなのか全ての言葉を受け入れている。
ちなみに、兄の目から見ると、妹が冗談もしくはネタ的な意味合いで椿を煽って言っていることにさえ、目をキラキラさせて「ありがとう!」と本気で信じてお礼を言う椿に、今宵が『どうしようお兄ちゃん、信じちゃったんだけど』と言う目を向けてくることにたいしては、自分で何とかしろとスルーしている。
「それよりそろそろ18時になるからここまでにするか? 時間がないとはいえ25階層から先に進むかどうかにしてもそれ自体は何とかなりそうだし。一番の問題は椿のレベルかな?」
あとはキィちゃんとさっちゃんのレベルも25で停滞しているので最低でもあと一つは上げておきたいところではある。
って桃井先生のレベルって幾つなんだろう。
聞いた事あったっけ?
「桃井先生はレベルって今いくつ何ですか?」
「女性にレベルを聞くのはマナー違反よぉ。貴方にはデリカシーと言う言葉を教えてあげるわぁ」
……。
そんな年齢みたいに言われても。
え? 会話はそれで終わりなの?
「きょ、矜一。今日はここまでにするとして、明日から私は学校を休んでレベルを上げようと思うんだが、恭也さんたちと一緒に行動しても良いだろうか」
父さんたちと?
平日はマコトたちがいないので、父さんと母さんの二人でダンジョンに入ってオーク辺りを狩っているはずなのだが、たしかに父さんたちが昼間に椿を鍛えればレベルの問題も解決する。
「はっ。まさか秘密の特訓をして私たちに追いつこうとしている!?」
キィちゃんは椿が俺の父さんたちと行動したいと言う話を聞いて、全然秘密になっていない話を秘密の特訓だと言い出す。
「中学校って義務教育だから、登校日数なんて関係ないはずだし休んでも問題ないのでは!?」
今度はさっちゃんがとんでもないことを言いだした。
義務教育だから休んでも問題ないって、小学校を不登校の自由とか言って登校拒否した
「まぁ教師としては勧められないけどぉ、今回は命に関わることことでもあるしぃ、私たちも合宿した方が良いかもしれないわねぇ」
「「「合宿!!」」」
桃井先生の合宿と言う言葉に、今宵たちが反応する。
遠足みたいに目を輝かせているけど、訓練だからな?
その後俺たちは明日以降をどうするかを話し合いながら、24階層へ向かう魔法陣に到達すると帰路へついたのだった。
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ガンマぷらすでコミカライズ6-1更新されています!
本年も大変お世話になりました。
皆さま、良いお年をお迎えください。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
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