第241話 メンバー決定!?②
「ただいまー」
椿に争奪戦のことを伝えてからも色々とダンジョンの階層について調べたり、椿がまだ18階層より上を攻略していないと言う話から、まずは椿を25階層に連れて行く予定をどうするかを考えているうちに、今宵たちが戻ってきたようだ。
「お邪魔するわよぉ」
「お邪魔します」
「「します」」
ん?
今宵とキィさちだけかと思ったが、桃井先生と椿もいるようだ。
俺は自室に戻り調べていたため、今宵たちを出迎えようと椅子から立ち上がる。
それと同時に、トトトと言う階段を上る音と今宵の部屋の扉が開いた音が聞こえた。
その後も何人も階段を上る音が聞こえ……、
ガチャリ
俺がドアを開ける前になぜか俺の部屋のドアが開けられる。
「あ、矜一お兄さん。読みかけの漫画を読みに来ました! 今宵ちゃん、衣装ができるまでこっちにいるねー」
「ほーい」
キィちゃんが俺の返事を待たずに部屋へと入ると、隣の部屋にいる今宵へ一言かけて棚から漫画を取り出し俺のベッドに座り読み始めた。
いや自由か!
「矜お兄さん、私も読みかけの
「あ、ああ。良いよ、どうぞ。」
さっちゃんは俺の棚にある漫画が読みたいと一言声をかけてくれる。
「なるほどねぇ、これが高一男子の部屋なのねぇ。ベッドの下はどうなっているのかしらぁ?」
「そこはもう調べたけど何もなかったー」
さっちゃんの後は桃井先生がなぜか俺の部屋の中へとやって来る。
いや、だからそのベッドの下の確認はなんなんだよ?
「いや、キィちゃん。『ベッドの下には何もなかった』とか言う書置きがあったけど何のことだ? あと、読んだ漫画は棚に戻して――」
「矜一お兄さんはウチの母親かってくらい小言が多いんですよ!」
いや、悪いのは俺じゃないだろ……。
「きょ、矜一。お邪魔します」
俺がキィちゃんに説教をしようとしたところで、椿も俺の部屋へとやってきたようだ。
「桃井先生も椿もダンジョン前で集合じゃなかったの?」
「待ち合わせまで時間があって……アルコルの魔石がなぜか小さくなっていたから、ペンダントにしてもらう依頼を防具屋にしてたんだ。ペンダントを取りに行ったら、そこで今宵ちゃんたちと会ってそのまま」
椿はそう言うと、胸元から赤い小さな魔石がはめ込まれたペンダントを俺に見せた。
アルコルってカルラに殺されて魔石になった椿の従魔だよな。
あの時みたアルコルの魔石は手のひら以上に大きかったはずだが、今では人差し指の先くらいの大きさになり加工されペンダントとなっていた。
椿……の名前通り
まあ、椿って花言葉には
全体的な花言葉は良いものが多いし、日本のバラと言われるくらいで母の日の贈り物にされたりするんだけどね。
それに魔除けや厄除けの効果もあると言われていて、松竹梅の梅が中国から日本に入ってくるまでは松竹椿と呼ばれ縁起の良いものだった。
椿の魔除けの効力は『結界樹』。
昔から神が宿る木と言われ……て、アレ? だから矜侍さんと遭遇して指輪を買ったのか?
「色合いが椿によく似合っていると思う」
「そ、そうか。ありがとう」
椿はそう言うと、下を向いて黙ってしまった。
「ちょっと椿ちゃん!? 椿ちゃんの衣装を作るんだから、早く今宵の部屋に来て!」
「あ、ああ。すまない」
なるほど。
衣装を今宵が作るためにウチへ来たのか。
今宵に呼ばれた椿は、急いで俺の部屋から出ると隣の今宵の部屋へと入っていった。
「で、桃井先生は残って何を? 先生の衣装も今宵が作るために呼ばれたんじゃ?」
俺の机の参考書やら何やらをパラパラとめくっていた桃井先生に俺は話しかける。
「こうやって勉強しているのねぇ。私の衣装はもう自分で作ってあるから問題はないわよぉ。お子様に時間が早まった! って呼ばれたのよぉ」
自分で既に衣装を作ってあるってどういうこと!?
今回の件がなくとも、最初から東三条さんやマコトみたいにアステリズムへ参加する気満々だったってことなの!?
「裁縫とか先生に出来たんですね」
「ダンジョン内では服が破れたりすることもあるから、女性はある程度そういうことができる必要があるのよぉ」
なるほど……。
先生の女子力が高いとなんか違和感を覚えてしまうが、これでも東校の教員になれる実力があるんだしそういうものか。
「先生の衣装にも付与をかけるんだから今宵の部屋に来て!」
「呼ばれてますよ先生」
今宵はさっきの椿との会話もそうだが、先生と俺の会話が聞こえているのか?
二人を俺の部屋から追い出すようなタイミングと言うかニュアンスで自分の部屋へと呼んでいる。
「せっかく男子高校生の部屋に初めて入ったと言うのに仕方ないわねぇ」
先生はそう言うと俺の部屋から退出していく。
そして無言でマンガを読んでいるキィさちと残された俺。
いや、自分の部屋なのにこの気まずさはなんなの?
俺はアイテムボックスからコップとジュースを取り出すと、それを二人に渡した。
「じゃ、じゃあ俺は下のリビングにいるから。キィちゃんはサインとか書かないように」
「そんな子供っぽいこと、もうするわけないでしょ!」
ああ、今宵はちゃんと子供っぽい行為ってキィちゃんに伝えてたのか。
俺はそのキィちゃんの言葉を聞くと、リビングへ向かいこの後の椿の階層移動の予定と俺たちのレベル上げについて調べ直すのだった。
☆☆☆☆☆
一方その頃、第一東校の職員室では……、
「東校から天城矜侍のチャンネルで開催されるイベントに出る出場者は誰? と聞かれても、その話を聞いたのはここに電話してくる人たちからだぞ!?」
東校では休日対応で学校へ来ている職員の他、部活動がある顧問は学校へ出勤していた。
彼らが『諸行無常チャンネル』を見ている訳もなく、仕事をしていたのだが突如として鳴り響き始める電話の対応で追われていた。
しかもOBを含めて、東校から出場者がいるなどと言う話は職員会議でも挙がっていない。
「あ! 校長先生! どうも天城矜侍が主宰するイベントで東校の関係者が出場するらしいのですが、こちらは何が何だか。校長先生は聞かれていらっしゃいますか?」
「ああ、そのことで俺もここに来たんだ。イベントの出場については内密に打診があり、出場者も我が校OBとして第一線で活躍している『
「『天衣無縫』!? 彼らなら申し分ない。正にトップチームの一つですね。そのことは問い合わせに来た電話対応で言ってもよろしいので?」
「そのつもりだったんだがな。今日の『諸行無常』の放送を見て、『天衣無縫』では学園祭で落ちた東校の名声は取り戻せない可能性があると判断した。アステリズムも参加するようでな?」
「まさか!? 彼らは天城矜侍の関係者なのでは?」
「もしその関係者に日本のトップチームが破れることになるなら、東校だけではなく日本そのものの探索者の強さが疑われることになるかもしれない」
「そ、それは……」
「それを防ぐためにも、今回は俺が参加することに決めた」
「!?!? 最高階層到達者の校長が参加!? いや、しかし校長先生のチームメンバーはそれぞれ忙しくされているはず。今からでは……」
「俺のチームからの出場は俺だけだ。だが、『天衣無縫』以上に適した人材が、我が校にはちょうどいるじゃないか。出場者については他の……東校以外で、参加者のメンバーが公表されたなら俺については参加をすることを言っても良い」
校長はそう言うと携帯を取り出し、どこかへと電話をかけはじめる。
『天衣無縫』よりも適した人材と言うならば、東京ダンジョンの最高到達階層メンバーのリーダーである校長先生は適任だろう。
だが、天衣無縫以上となると最低でA級の必要性があり、その中でも上位でなければならない。
それが五人ともなると……、いないのでは? と話を聞いた職員は首をかしげながら、新たにかかってきた電話対応に追われるのだった。
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