第七章 変革(仮)

第238話 変化していく日常

 俺たち1-5クラスが学園祭で『ヒーローショー』を公演してから二週間が経過した。

 この二週間……俺はと言うか蒼月家では、会社……『星月夜starry night』でもクラン『星空の騎士starry knight』でも、ダンジョンや学校関係でもなく多忙を極めていた。

 その多忙の原因は何かと言うと……、


 「ちょっと、お兄ちゃん。今宵の近くでそんなに不機嫌そうに作業をされたらこっちまで気分がどんよりしちゃうでしょ!」


 「いや、今宵は俺が作業を始める前からソファーで寝転んでMeTubeを見て楽しそうにしてたじゃん。そもそも俺が今している作業って、今宵に来ている取材やらテレビ局、果てはたくさんのMeTuberから届くコラボの断りを入れているんだが?(怒」


 「今宵が返信してたら、お兄ちゃんが勝手に代わりにし始めたんでしょ! それより、この間行ったドーナツ屋……Come donutsカム ドーナツにまた行こうよ。あ、水戸さんも呼んでね」


 「水戸君も呼んでって、それ俺らにお前らきぃさち含むに寄って来る人達の対応をさせる気だろ!」


 「えへへ」


 「いや、そんな可愛い顔で笑われても」


 俺と水戸君……、今宵とキィちゃんさっちゃんで、学園祭が終わってから数日後に新しくできたドーナツ屋に行ったのだが、その時に今宵たちをテレビで見た女子高生に囲まれたのだ。

 しかも歩道の前から『絶対に撮ってるぅ⤴ カメラ回ってるよねぇ』とか言っていた集団とも鉢合わせをして……、すれ違う時に『俺たちが日本を獲る!』と言う謎の宣言をしていた。

 

 ドーナツ屋Come donutsに行くのに水戸君も呼ぼうってのは、俺たちにファンの子をさばいてほしいからだろ?

 そして最終的に俺たちがさばききれずに、今宵が一言で場を収めると言う流れがセットとなっている。


 と言うか、蒼月家が多忙を極めたこの二週間は、俺の近くで寝そべって動画を見ている今宵のせいだったりする。

 今俺がしている作業にしたって、今宵がすると『出演しません!』とか礼節もわきまえずに返信をしていたから、俺が代わりにやっているだけだ。


 まあ、多忙になる予兆は……、学園祭で今宵たちと昼食を食べた時からあったんだけどね。

 いや、正確に言えば、午前中からランキング1位の東三条さんが校内放送で呼ばれていたり、闘技場が凄いという周りのザワつきから始まっていたのかもしれない。


 食堂に遅れてきた今宵たちは、大量の人々を引き連れ……それを気にすることなく俺たち攻略道のメンバーと昼食を食べていた。

 ちなみに、キィちゃんが激辛カレーを水戸君に食べさせようとしたのだが、水戸君は『この色は激辛だよね? どうしてそういうことをするの?』と猪瀬さんにされたことを思い出したのかキィちゃんを説教していた。


 キィちゃんは水戸君とかなり仲よくなったつもりで俺と同じように接したんだろうが、陰キャを陽キャは理解していない!

 多少仲良く話をするようになったくらいでは心は開かないのだ!

 1-5のトップ層で唯一パーティを組んでいなかった水戸君の心は俺がよく分かる。

 親友だから!


 そしてその後の俺たちの『ヒーローショー』にも今宵たちが大量に引き連れた人々はやって来て……七海さんの三連魔法も話題になって、常軌を逸した盛り上がりをみせたのだった。


 家に帰ってからはTV局や取材の連絡が昼夜を問わずかかって来て……、まあ両親がダンジョンに行っている間は留守番電話へ伝言が入っているのだが、父さんは『携帯があるのに家電なんていらなくないか?』と言いだして電話線を引き抜き……ってか社長が固定電話がなくても良いとか言っていいの!?

 きっとあの時に我が家にちゃぶ台があったなら、父さんはそのちゃぶ台をひっくり返していただろう。

 てかもう世の中にちゃぶ台ってないのかな? アニメやドラマではたまに出て来るけど。


 そして電話で出演や取材が申し込めなくなった途端に、今度は会社のメール宛てにそういうものが来るようになっていてそれが今でも続いている。

 と言うより、迷惑系や個人系のMeTuberたちがこぞってコラボを求めて来ていたりと父さんたちの業務に支障をきたしているので、俺が代行している訳だ。

 ちなみに、国立第一東校以外の4校から、1クラス生として来ませんか? と言う勧誘まで届いていた。

 高校から通うのに、1クラス生ってどういうことだよ?

 今までのシステムを壊してまでいきなり外部から1クラス生になっていたら反発されないの?

 さらにそれはキィちゃん達にも届いていて、『矜一お兄さんは外部受験ですけど、キィは勧誘されました』とかドヤられて……。


 「そう言えば、今宵。俺がいない間に、キィちゃんがなぜか俺の部屋に入って来ていて、油性ペンでタレント気取りのサインを色んな所に書いて行くんだが……。消したはずの場所にもう一度書かれてたりするから、今宵からしないように注意しておいてくれ」


 「えぇ~? そんなのお兄ちゃんが注意すればいいでしょ。楽しそうに書いてるから言い辛くて」


 お前も一緒にいる時にしてるんかーい!

 まあ、そりゃそうか?

 たまに申し訳なさそうな感じでさっちゃんも小さく書いてあったりするんだが、三人で楽しそうにしている姿が思い浮かぶな……。

 だいたい、キィちゃんに注意なんてもうしたよ。

 そしたら同じ場所にもう一度書かれていたんだよ!


 「お前たちももう大人なんだから、そういう子供っぽいのはな?」


 「ん~? 子供っぽい……。じゃあ止めるように言っとくね」


 ふっ。

 お前らは子供っぽいと言われると反発するからそれを利用させてもらった!

 ちなみにキィちゃんだけでなく、桃香も割と調子に乗ってしまい聡が注意していた。

 お前らにはマコトのつつましい感じを見習ってほしいよ。


 俺たちがそんな話をしていると、今宵が急に声をあげた。


 「あ! 矜侍さんの『諸行無常チャンネル』の配信が始まった!」


 俺は今宵のその声を聞いて、急いで矜侍さんの配信を見ようと今宵へ一緒に見せてくれと頼むのだった。




――――――――――――――――――――――――――――――――――

 お待たせして申し訳ないです。

 第7章……一応の始まりです。

 時間が……なぜか起きたら朝なんですよね(当たり前)

 まだ時間があまり取れていないのですが、気持ちだけは頑張る予定です。


 また、「ダンジョンで成り上がれ」 コミカライズ 第5話 前半がガンマぷらす

 で更新されています。よろしくお願いします。

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