挿話 オーク錬金

 時間が取れず執筆できないため、限定近況から九条君パーティの一話です。

 本編はよっと思われていると思うのですが、どうしても時間が取れず……申し訳ないです。

 この挿話は、夏休み終盤の本編199話辺りの話となっています。

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 ☆☆☆



 2回目の登校日を終えて夏休みも残りあと数日。

 椿たちのパーティは夏休みの遅れを取り戻すかのようにダンジョンでの活動を繰り返していた。

 パーティでの活動を再開した直後は、ぎこちなかったそれぞれの言動も今では元に戻っている。


 「それにしても椿は強くなりすぎやないか? 道中の敵が一撃って、そないに蒼月のおとんの教え方ってのは上手いんか? せやからアイツも強くなっとるん?」


 椿がオークを一撃で倒した所で、榎本は本格的にパーティ活動が再開された時から思っていたことを口にする。


 「それは僕も気になっていたけど、聞いて良いものかどうか……悩んでいたのに、榎本は直球だな」


 榎本の言葉に、レンも気にはなってはいたが直接聞くことを躊躇していたと言葉を重ねる。


 「恭也さん……矜一のお父さんからは動き方を教えてもらったり、攻撃の時に魔力を武器に乗せることを教えてもらったよ」


 「武器に魔力? それってゴースト系には必要って聞いたことがあるような……。でもゴースト系の対応は前衛よりも後衛、魔法で対応するのが一般的なんじゃなかったか?」


 椿の武器に魔力を乗せると言う発言で、魔法士のジョブである堂島も会話に参加する。


 「そうなの? 前・後衛に明確に分かれて戦う階層までは行けなかったから、その話はわからない」


 椿は盾を装備して前衛として戦っていた聡を思い浮かべてみるが、基本的に星空の騎士starry knightの面々は、椿と一緒に戦闘をしている場面では一撃で敵を倒していた。

だから、明確に前衛と後衛に分かれてパーティ戦をしていたという印象はなかった。


 「なんや? それだとそこまで階層は上がってへんってことかいな。7階層をこれだけ簡単に倒しとったから、ワイらがまだ行けておらへん13階層以上を経験しとるのかと思っとったわ」


 「階層は16階層までかな。ゴーストを倒すために武器に魔力を乗せる必要性を教えてもらったんだ」


 「「「じゅ、16階層!?」」」


 事前に根掘り葉掘り椿に話を聞いていた一ノ瀬以外は、自分たちの最高到達階層よりも4階層も違いがあることに驚く。

 なぜなら、12階層以上は野営が必要となるし、ダンジョンに持ち入る荷物が一気に多くなって行動に支障をきたすため十分に慣れる必要があった。

 だからこそ……レンたちは上を目指すために野営訓練をしていたのだ。


 「ほらほら、驚いてるばかりじゃあたし達は椿に置いて行かれちゃうよ。早くオークをこのリアカーに乗せて、まずはパーティでマジックバッグを買いましょ」


 一ノ瀬は驚いて声を失っている三人に声をかける。

 椿たちは今後の活動をどうしていくかという話し合いをパーティ全員でして、まずはマジックバッグを手に入れることに決めた。


 椿たちは二度の野営訓練でどちらも酷い経験をしているが、そのときの状況を踏まえて、少しでも手荷物が少なくできていれば取れる行動の選択肢が広がっていたと思ったからだ。

 持ち歩く荷物が多ければ、それだけ疲労にもつながるし動きは遅くなる。

 

 元々は簡単にお金が貯められないことから、1年生の間にマジックバッグを買うと言う選択肢を諦めていたのだが、それもオーク倒してその売買を繰り返すことで買えるということを矜一に教えてもらい知ることもできた。


 実際には、矜一の話は嘘とまでは言えないが、魔法陣転移での移動とアイテムボックスを手に入れていた。

 そのため、レンたちが一日中ダンジョンの往復して2~3回……8時間から12時間もかけて稼いでいるのとは大きな違いはあるのだが、レンたちは矜一たちも同じ苦労をしたと思って頑張っているので、そのことは知らない方が良いのかもしれない。


 「やけど、7階層までの敵を椿が一人で倒せるならもう一台か二台リアカーを買って男三人でひいたらええんちゃうか? ほなら目標達成の時間も三分の一に短縮やで」


 「あたしもひけるよ!」


 榎本はリアカーをひいて移動しながら、椿が一人で問題なく道中の敵を倒せるのならリアカーの数を増やせば、マジックバッグを手に入れられるまでの期間が三分の一になるのではと提案する。

 その提案に回復役で一人だけ役割がなくなってしまう一ノ瀬も自分もリアカーをひけると手をあげた。


 「さすがに不測の事態を考えれば、椿だけが戦闘するっていうのも危険だろう。でも、もう一台くらいなら増やしても問題がない気もするな」


 堂島は榎本の提案は行き過ぎだが、リアカーをもう一台くらい増やすのは椿の強さを考えれば問題がないようにも思えた。


 「ならオークをギルドに持って行った後にもう一台リアカーを買いに行こう」


 「「賛成」」


 レンの言葉に全員が賛成する。


 「そうだ椿、武器に魔力の乗せ方のコツとかがあれば僕に教えてくれないか?」


 「もちろん。私が教えてもらったのは、体に魔力を回す要領で――」


 レンは強くなるために椿にコツを聞き、椿もそれに応えながらマジックバッグの購入を目指してダンジョン内を進むのだった。



 

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