挿話 一方その頃では(235.5話)
この話は、第234話『学祭二日目②』から第236話『進撃のDJ今宵』の間の時系列の話になります。
お気をつけ下さい。
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~学校側では~
蒼月今宵の対戦が始まる少し前、綾瀬季依は対戦終了後のインタビューで、「私は最弱!」と言い、観客席からは彼女がアステルではないか? と言う声も聞こえた。
対戦結果とその声を聞いた東校教職員は、すぐに教頭と三年の学年主任のもとへと走り、自分の目で見た状況を報告する。
報告を聞いた教頭と三年主任は、さすがに他の五人全員が綾瀬と同等の力があるとは信じられなかった。
3連勝されたという事実は重いが、過去になかったわけではない。
しかしながら、その実力を持った挑戦者が一人や二人ならともかく、綾瀬を含めると六人もいるわけがないのだ。
それは探索者を育成する中学・高校ができて以来なかったこと。
だから、綾瀬の言う「私は最弱」と言う言葉は、若さ故の言葉と考えられた。
「他の五人の実力が我が校を三人抜きできるとは考えにくいが、念のため、一学年下と二学年下の有望なスキル・魔法を持つ者のデータを調べ、五人の名前と一致する者がいるかどうか確認しましょう」
「すぐに調べます!」
教頭の言葉に、三学年主任は即座に机にあるパソコンで綾瀬たちの名前がデータ登録されているか調べ始める。
これは有望な人材を国立中学へ集める際に使用されるデータであり、国により分析され、さらには過去から現在におけるスキル・魔法の有用性が評価・順位付けされたものである。
「一人一致! 蒼月今宵、『武術全般』特Aスキル持ちです!」
「なるほど。仮定の話になりますが、去年の東三条天音が挑戦していた場合はどうなっていたと思いますか?」
「それは……。3連勝できていた可能性はあるのではないでしょうか? ただ、中学三年の時点で、上位ランカーまでは倒せなかったと思います」
「はい。私もそう思います。彼女の持つ『直感』スキルは中学入学時の評価はCでした。直感スキル自体は持つ者もそれなりにいます。世界にダンジョンが出現した当初は、生活魔法と共に直感スキルは有望視されていた。ですが、所持していても大成する者があまりに少なく、似た他のスキルの有用性が認められると評価が下がり可もなく不可もないものとなった。その平均的なスキルを彼女は使いこなし、今の強さを手に入れている。国のデータにヒットしなかった綾瀬さんが1年前の東三条と同じ強さと仮定するなら、特Aスキル持ち……特がついている以上、所持しているものすべてが大成しているか、確実に大成すると思われるスキル能力と言うことです」
「では、この蒼月今宵は、綾瀬さんより強い可能性があると言うことですね?」
「そうです。それを踏まえて、我が校の上位ランカーを倒せると思いますか?」
「それは……。教頭先生がおっしゃりたいのは、東三条は評価Cスキル。1年前であれば上位ランカーは倒せないと思われます。そうなると、当時の東三条=綾瀬として、特Aスキルを持っている者は……上位ランカーに匹敵する可能性があるかもしれません。しかし才能と言う面で見るなら、まごうことなく東三条は天才です」
「さすがは学年主任を任されるだけの洞察力です。今日出場している一番上は、九頭ですか。彼で十分だとは思いますが……、対戦の指名は挑戦者から行われるので、選ばれない可能性はあります。それでも念のため、闘技イベントの参加を東三条に依頼してください。彼女が出場すれば、我が校が負けることはないでしょう」
「了解しました。東三条なら間違いなく勝ってくれることでしょう。それに指名されなかった場合は、連戦を途中でやめていることになりますから……、絶対にあってはならない全敗はありえないということですね。では、すぐにでも打診に行ってまいります」
教頭と会話を終えた3学年主任教諭は、急いで東三条天音のもとへと向かった。
そしてそこで東三条がメイド姿であることに動揺するが、なんとか事のあらましを説明する。
「どうして私様が、未来の攻略道のメンバーと対戦する必要がありますの? お断りしますわ!」
にべもなく断られた教諭は、現在ランキング2位の三年生、
しかしそこでも東三条とは別の理由……、自分が負けた時と出なかった場合(参加しているメンバーより上位のため他が負けても自分なら勝てたと言える)を考えて、闘技イベントの参加を断るのだった。
そしてその結果……、中学生組が全勝する。
蒼月今宵に至っては、ランキング4位にまで圧勝したため、他の1~3位が参加をしていても負けていたとSNSを中心に話題になって、第一東校の名声は大きく陰るのだった。
☆☆☆☆☆
~テレビ放送の一場面~(実況文字起こしの為、”ほぼ”地の文はありません)
<CM明け>
実況:”それでは引き続き実況は私、
尾野&額田部:””よろしくお願いします””
額田部:”試合を実際に見た後でさえ、本当に起きた出来事なのか受け入れることに時間がかかっています”
尾野:”あっはっは。だから言ったでしょう! 彼女たちがギルドへ納品する魔石のランクを考えれば、倒してもおかしくないと!”
実況:”しかし魔石や素材のランクの高さであれば、第一東校の選手も高いのではありませんか?”
尾野:”それはそのとおりです”
額田部:”私が実際の目でみていても受け入れるのに時間がかかるというのは、鏡選手が、二年の二人と実力が大差ない……むしろ上回っているのではないかと言うことです。多くで一瞬で決着がつくために、わかりにくいことかもしれませんが、動き出しのスピード、重心の置き方など、高校一年生としてみれば、明らかに上位のはずなんです。この選手が現在総合ランク落ちしていることが本当に不思議でしょうがありません。青井さんが資料から読み取った、鏡選手と郷田選手を倒してランキングを上げた人物が同一人物説を私も支持します”
尾野:”鏡君……鏡選手もギルドへ納品している魔石や素材は元々高ランクだったのですが、ここ最近はそれに加えて量も多いと噂になっている一人です。それらから考えると、中位の中の下位の力はやはりあります。対戦数が異なるので、綾瀬選手と琴坂選手に目が行きがちですが、鏡選手を倒せる実力があれば実質的にはまだ誰とも対戦をしていない九頭選手以外は倒せる実力があるとも言えます”
実況:”そうなると、綾瀬選手の「私は最弱!」と言う言葉に現実味が帯びてきますね”
額田部:”私からすれば、星野真選手の無手が印象深いです。ジョブ……職業で武道家が選ばれない理由も、攻撃が当たる
尾野:”そうですね。ただ、仲間内の中で最弱と言うのは、いろんな角度からの見方ではないのでしょうか?”
実況:”と言いますと?”
尾野:”例えば桐島聡選手は綾瀬選手より1年若いですよね。1年後の強さが今より弱いわけもない。星野選手の無手、琴坂選手の魔法技術。これらも綾瀬選手にはないものでした。そう考えると、全員何か強みを持っていますから、誰しも最強で最弱なのかもしれないです”
実況&額田部:””なるほど””
実況:”っと、次戦の用意が整ったようですね。そろそろ試合が始まるようです。桐島桃香選手VS鏡真一選手、注目の一戦です!”
<それでは、 鏡真一 VS 桐島桃香 構えて……、はじめ!>
実況:”おおっと、鏡選手の必殺スキルが炸裂だぁ! 桐島桃香の左腕が宙を舞います。鏡選手、六人組の中学生に売られた喧嘩に一矢報いることができるのかぁ!」
尾野:”いえ、これは――”
鏡真一が桐島桃香の左腕を切り飛ばし、腕と血しぶきが舞う中で、桐島桃香は一歩踏み出す。
そして鏡真一が剣を振りきったところで、桐島桃香は鏡真一に剣を突き刺した。
実況:”これは凄い、一瞬でしたが見応えのある攻防です!」
尾野:”桐島桃香選手は痛みで泣いていますね。しかしこれは鏡選手の突き刺された位置が悪すぎる”
実況:”決まった! 一時は鏡選手の勝利かと思われたこの試合、鏡選手の死亡判定で決着です!”
額田部:”信じられない”
実況:”額田部さん?”
額田部:”彼女は……桐島桃香選手は一般中学に通っていると資料にあります。探索者高校の国立とそうでない高校の一番大きな差は、痛みに耐性があるかどうかです。私は第一西校出身ですが、その痛みに慣れるのには時間がかかりました。そしてその訓練ができるのは国立だけなのです。彼女は……最初から斬られるのを想定して動いていたように思えます。だから斬られた箇所が左腕……剣を持たない方だった。欠損するほどの痛みは初めてのはずです。本当に信じられない覚悟を持った一撃だったと思います”
額田部のこの言葉により、実況と解説は国立の闘技場で訓練できるかどうかの違いを議論を交えながら熱く語る。
そして桐島桃香の決意を見た蒼月今宵は――兄に助けられたダンジョン内での出来事を思い出し、あの時と自分のこれまでに思いを馳せると闘技場へと向かうのだった。
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ダンジョンで成り上がれ コミカライズ 第3話 妹と初ダンジョン[後半]
更新されています。
ガンマぷらす&ニコ〇コ静画どちらの話も同じですが、両方読んでください!
そして静画の方はフォローしてください(直球)
伏してお願い申し上げます。
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