挿話 水戸君、合コンに誘われて矜一を巻き込むが!?(成り上がれSS)

 時系列で212話~213話(仮入部②~パンにあう飲み物)あたりの話です。ご注意ください。

 限定近況で載せた話となっています。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 鏡君たち四人がダンジョン攻略道に入部をしてから数日がたったある日の休憩時間に、俺は水戸君から遊びの誘いと相談を受けていた。


 「蒼月、この前のダンジョン探索で連絡先を交換をした第二東校の麻里奈さんが、僕たち二人とご飯とか遊びに行きたいらしいんだけどどうする? 向こうもまだ誘ってはいないらしいけど、あと二人くらいお互いに友人を誘って遊ばないかって。僕は麻里奈さんの押しが少し苦手なんだけど、蒼月も一緒にって言うから僕の判断で断るのもどうかなって」


 「あの二人か。水戸君は麻里奈さんにメチャクチャ気に入られてたよね」


 「こんなこと今までに無かったからビックリだよ。普段なら絶対に話したりしないタイプだし。まあ、猪瀬さんでだいぶ慣れはしたんだけど」


 「わかる。でもまあ、あの二人は悪い感じもしなかったし、女子と遊べる機会なんてないから俺的には一度くらいは遊んでみてもいいかも? 合わなかったらその後は断ればいいだけだし」


 というより、高校生にもなったし俺だって女子と遊んだりしてみたい。

 これはチャンスなのでは?


 「それならOKって送っておくよ。でも僕たち以外にあと二人……」


 くっ……。

 一番の問題が俺に友人がいないってことか。

 俺があと二人をどうするかと悩んでいると、水戸君の一つ前の席……椿が急に立ち上がってこちらを振り返った。

 俺は今、水戸君の席まで話にきているのだ。


 「きょ、矜一! ご、ご、合コンなんて良くないと思う!」


 「え? 合コン?」


 遊びの話をしているだけで、合コンとは違うと思うが……。

 まあ俺は合コンがどんなものかテレビとか話に聞いたことしかないからわからないけど、アレってお酒の席の話でしょ。


 「男女のグループが出会いを求めて食事をしたりするんだから合コンでしょう!?」


 俺はお酒がないと合コン認識はなかったが、椿の発言で改めて考えてみる。

 俺と水戸君、麻里奈さんと聡美さんだけなら、既に知り合って連絡先も交換をしているが、新たにお互いが二人くらいの友人を誘って食事をする。

 これは……たしかに出会いといえる。


 「水戸君、コンパの意味ってなんだっけ?」


 「えっと……、companyの略だったはずだから、名詞だと会社だけど、動詞なら付き合いや親睦を深めるために飲食をすること……だったかな」


 水戸君も俺にそう言いながら、これって合コンでは? と思ったようだ。

 俺が合コンだと気が付いた表情を見て、椿が言葉を重ねる。


 「きょ、矜一に合コンはまだ早いと思う!」


 俺は合コンだと俺にはまだ早いかも、まともにしゃべることができないないかもと考えていた所に、椿にもまだ早いと言われてカチンとする。

 だいたい、椿なんてそう言う意味では高校に入って即、九条君と遊んでダンジョンただろ。

 あれも出会ってすぐなんだから、食事はしていないが広義の意味では合コンでは?

 俺は頭が錯乱してきてとっさに椿に言い返す。


 「椿には関係ないだろ。だいたい、自分は入学早々に九条君たちと似たようなことをしてたよね。俺には早いっていう権利なんてない」


 「そ、それは……」


 俺の一言で椿はうつむいて悔しそうにしている。

 俺はつい自分でも思っていることを言われて反論をしてしまったが、言いすぎてしまったと後悔するがもう遅い。

 椿が黙ってうつむいたことで、一ノ瀬さんが椿に小声で何か話しかけていた。

 そして、椿が立ち上がった時に松戸さんが俺と椿に注目をしてしまい、茅野さんも俺と水戸君を見ていたせいで、彼女たちが七海さんたちに何かを話す。


 「蒼月君ー? 何かあったのー?」


 くッ……。

 七海さんたちまでこっちに来てしまった。

 そして俺は何も話していないのに、一ノ瀬さんから七海さんたちに合コンの話が伝わる。

 すると、なぜか猪瀬さんが即座に端末に手をやると一心不乱に何かを打ち込んでいた。


 ブブブブ……


 ん? 俺の端末にメッセージが届いたようで見てみると、


 猪瀬:あおっちとミトミトが合コンに参加するんだって!


 「あ、ヤバッ。探索関係のグループで送っちゃった」


 ……。

 そしてそのメッセージを見て猪瀬さんの呟きを聞いた直後に、今度は端末ではなく、スマホが鳴って今宵から着信が来ているようだ。

 俺はそっと赤い受話器マークをタップして電話を切った。

 これで、『現在電話にはでられません』という音声が今宵には流れるはずだ。


 ブブブブブブ


 切っても切っても着信する電話。

 しかも今宵は東校で配られる端末を持ってはいないが、スマホから端末に連絡を入れることはできるので、そちらにも着信する。

 怖いわ!


 「あ、もしもし、今宵ちゃん? うんそう。あおっちとミトミトが――」


 今宵は俺が電話をとらないことで、メッセージを送った猪瀬さんに電話をかけたようだった。

 てか猪瀬さんは今宵にはなぜかニックネームをつけていない。

 ってそれは置いておいて、俺の気配察知に今度は東三条さんが1-5クラスへ来そうな動きをみせている。

 俺は水戸君の腕を掴むと、東三条さんがきてさらにカオスになる前に部室への退避を決断する。


 「と、尊い……」


 うるさいよそこぉ!

 俺が水戸君の腕を掴んだ時に、茅野さんが『はわわっ』という表情をしたのは見ていたけど、尊いってなんだよ。





 俺たちは部室について、麻里奈さんたちとの約束をどうするか話し合う。


 「まさか合コンだったなんて」


 「どうする蒼月。十六夜さんの話ではないけど、実際僕たちにはまだ早くないか?」


 水戸君が合コンにはまだ俺たちは早いと言う。

 俺もそう思う……そうは思うんだが、椿に言われて言い返しもしているし、引くに引けない状態だ。

 俺たちは色々と話し合い、そして合コンに参加することに決めた。


 ちなみに、残りの男子二人は、鏡君と鏡君の知り合いの1-1クラスの佐々木 亮という人が参加をすることに決まった。

 もちろん、鏡君たちには周りに合コンに参加することを話さないようにと口どめも万全だ。





 そして合コン当日。

 グループで食事ができる個室のある海鮮料理店で、男女八人が向かい合い、最後の女性の自己紹介を向かえていた。


 「宵闇よいやみ イブ です。趣味はー、魔物の首を狩ることでー、誠実な人が好きです」


 「な、なぁ蒼月。僕、ちょっと調子が悪いから帰っても良いかな……」


 始まったばかりにも関わらず、水戸君が帰ろうと席を立つので、俺はガッと水戸君の腕を掴んで座ってもらう。


 「光成君、緊張してるのー? かわいー!」


 水戸君が俺に言い訳をしようとしていると、麻里奈さんが水戸君に話しかけて水戸君を確保した。

 料理もまだだし、自己紹介が終わっただけだからね。


 「よ、宵闇さんって俺の名字と同じで月関係だから、な、仲良くできると思うんだよ? ね」


 俺は震えながら、宵闇イブと名乗った女の子に話しかけた。


 「そうですねー。でも月が出ていなくて暗いって意味だから真逆かもー? 名前もイブニングからとったらしくてぇ、同じ意味を並べて名付けるとか酷いですよね。ハァ……」


 だいたい、なんだそのしゃべり方は。

 そもそも、その名前は自分でつけてるよな? ため息をきたいのはこっちだよ!

 闇で私は不機嫌ですって意味かと思ったら、宵闇もeveningも宵って意味だから、今宵今宵じゃん。

 いや不機嫌って意味もやっぱり含まれてるのか?

 しゃべり方に棘があるし。


 そう、なぜか俺の前には今宵が私服を着て第二東校の人たちに交じって合コンに参加をしていた。

 さらに俺の気配察知には、攻略道のメンバーとキィさち、マコトたち、椿の気配もとらえている。

 ドリフかな? 8時だョ! 全員集合ってね。

 こうして初めての合コンに参加した俺は、水戸君とともに、家族が女性側にいるという地獄を味わうことになったのだった。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る