第212話 仮入部②

 俺は助けた四人が無事なことを確認すると、茅野かやのさんと松戸さんへと近づいて先ほどの動き出しについて話す。

 青木君が俺たちに何か叫んでいたが、今日の俺と水戸君の目的は、新メンバーの実力をみることだからね。

 

 「さっきは俺が短い言葉でしか指示をしていないのに、良く対応するウルフが二人ともわかったね?」


 「あはは、それは最近はいつも蒼月君と水戸君を見てるから、雰囲気で何がしたいかわかるようになっちゃった!」


 「私はちゃんと蒼月君がスペースを少しだけあけてくれていたのと、自分の立ち位置からしてこっち側のウルフだろうなーって」


 茅野さんがちょいちょい言う、俺たちを見ていた発言だが、ついに見ている側の茅野さんまで意思疎通ができるようになっていた!?

 いやいや、さすがにそれは怖すぎでしょ!


 逆に松戸さんは、俺が空けて方向誘導をしていた少しのスペースに気が付いてくれている。

 

腐かく深く考えれば、茅野さんも俺と水戸君の動きをよく見てくれているから、その動きで松戸さんと同じく少しだけあけた空間や位置で自分の求められている行動を理解した……んだろうとわかるけど、言葉のチョイスがおかしくない?

 というか、俺の周りの人たちって、言葉のチョイスがおかしい人が多すぎない!?


 「あ、あの……。先ほども言いましたが、改めて助けていただいてありがとうございました。助けていただけていなかったら、全員が傷を負って撤退している所だったと思います」


 「ほんとありがとね! あーしは第二東校に通っている1年1クラスの麻里奈まりな! そっちの丁寧な子は同じクラスの聡美さとみだよ~。てか盾持ってる人、超カッコイイね! 連絡先交換しようよ~」


 「え? ぼ、僕?」


 助けはしたが、彼女たちは青木君と張本君のパーティメンバーのようなので、絡まれるのも嫌だと思い必要最低限に接していたのに、女性二人に自己紹介をされてしまう。

 しかも水戸君はかなり質問攻めにあっていて、及び腰だ。


 「おい、麻里奈! 俺とも連絡先を交換していないのに、なに水戸と交換しようとしてるんだよ! それに水戸はともかく蒼月は最下位だぞ!」


 ほら、青木君が吠えちゃったじゃん。

 というか、たしかに俺は最下位でミジンコだったけど、今その席にいるのは青木君だよね?


 「は? まともな連携も取れずに、パーティを危険に晒しておいて何言ってんの? 第一東だから強いと思ってパーティを組んだのに全然だし、最下位だとしてこの二人の方が明らかに強かったじゃん。ね、光成みつなり君、今度の休みに遊びに行こうよ~」


 ……麻里奈さんは速攻で水戸君との距離をつめたと思ったら、名前呼びをしてデートに誘う。

 出会って即デートに誘われるとかイケメンって有利すぎん?

 俺なんて休日に誘ってくれるのは殆どが妹なんだが?

 てかね、麻里奈さんの最初の発言はめっちゃドスが効いてて、そのすぐあとに水戸君に話しかけた声色はキュルンって感じでね……。

 水戸君はめっちゃ引いてるけど、彼女は全然わかってないみたいだ。


 「俺だってさっきのウルフぐらいなら倒せた! お前らがちゃんと戦わなかったから俺が怪我をしたんだろ? 怪我した仲間よりダンジョン内でナンパとか何を考えているんだよ!」


 怪我をして血が出ている腕を抑えた青木君がこちらへとやって来る。

 制服は付与がかかっているから、それだけの傷を負っている時点で結構なダメージだと思うんだよなぁ。

 俺はそう思いながらも、帯剣ベルトについているポーチから、ポーションを一つ取り出すと青木君にふりかけた。


 「はい、これで傷は治ったよ。てか、前も言ったと思うけど、今の青木君の席は一番後ろだから俺はそこが好きなんだよね。冴木先生に言って交代をして良いなら交代するけど?」


 最下位席はすぐに廊下に出れるしマジ優秀。

 あ、でも今だとせっかく友人が周りに揃っているのに、一人だけ離れるとまたボッチに逆戻りか!?

 席移動ができるなら、張本君が29位の席だから、そこに水戸君に来てもらえば俺の学校ライフは完璧か?


 「だから、なに上から目線で俺に物を言ってるんだよ!」


 俺が完璧な学校ライフを妄想していると、青木君が俺に掴みかかろうとして来る。

 いや……、たしかにちょっとだけ嫌味は込めているけど、最下位席が良いと思っているのは本当だし……。

 それに掴みかかって来ても、直接対決で俺が勝ったよね?


 「お、おい青木。止めろよ」


 俺に掴みかかる青木君を張本君が静止するが、青木君は頭に血が上っているのか止まらない。

 だから仕方なく俺はそれを避けると、足をかけて転ばせておく。


 「グハッ」


 青木君は足をかけられてゴロゴロと地面を転がる。


 「ちょ、信じらんっない! 怪我を治してもらったのに、お礼も言わずに喧嘩腰だなんて。アナタたちとのパーティはここで解散よ!」


 「さすがに今の行動は私も……。高価なポーションを使ってもらっているのに、その相手に突っかかるような方とは怖くて一緒に探索はできません」


 青木君たちと組んでいた二人の女性……麻里奈さん(ギャル)と聡美さん(清楚美人)が青木君の行動でパーティ解散を申し出る。


 「あーしたちが入ればちょうど六人だし、いーよね?」


 いやいや、このまま俺たちと探索するの?

 俺はどうする? と水戸君に目を向ける。


 「まあ、さすがに二人だけでこのまま帰すわけにもいかないし、魔物もそうだけど、青木たちが報復する可能性だってある。だからダンジョンを出るまで僕たちと一緒に行動をした方が良いんじゃないか?」


 「み、光成君! カッコよすぎ!」


 「ちょっと、麻里奈さん!? くっ付かないで。いやホントに!」


 水戸君の発言を聞いて麻里奈さんは水戸君に抱き着く。

 そしてそれに本気で困っている水戸君を見ながら、たしかにこのまま放置するのは良くないかと俺も考える。


 「茅野さんと松戸さんもそれで良い?」


 「……うん」


 「はい」


 茅野さんが水戸君と麻里奈さんを凝視しながら、本当は嫌だけど状況的に仕方がないとわかったのかしぶしぶと承諾をする。

 松戸さんは特にそういう感情もないようでOKのようだった。


 俺に転がされたままブルブルと震えている青木君には、張本君が心配をして駆け寄っている。

 俺たちは青木君たちをそのままにそこから離れて、6階層の探索を再開するのだった。


 俺は青木君に心の中で謝っておく。

 俺と対戦をした時に似たように足をかけて転がして、口から剣のつかが喉奥まで入った時のことを思い出したかな?

 ごめん、これ以上俺に絡まれても嫌だから、対戦を思い出すように同じ感じで転がしたんだ。

 



 ちなみに俺たちがダンジョンを出る20時まで、茅野さんと麻里奈さんの相性は悪く少しだけギスっていた。

 麻里奈さんは全然気にしていなかったけどね。

 もしかして茅野さんって水戸君が好きなのでは!?

 そんなハプニングはあったけど、他校の人の実力も知ることができて、総合的には有意義だったなと俺は思うのだった。

 

 



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