挿話 九条レンと言う男(成り上がれSS)

本編170話前後の時系列です。

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☆☆☆


 レンは12階層でカルラと相見あいまみえてから、今日までの間ずっとパーティのことで悩んでいた。


 「このままあのパーティで続けて大丈夫かな……」


 レンは男子寮のベッドでポツリとこぼす。

 レンは思う。

 間違いなく自分たちのパーティメンバーは息も合っているし、パーティとしてのバランスも良い。

 だけど、自分はまた仲間を置いて逃げ出してしまった。

 レンはベッドに寝転がったまま右腕で顔を覆い、左手でベッドを殴る。


 ドンッッという音が部屋全体に響いた。

 自分の弱さを物に当たった所で仕方がないことはわかっていても、何かに当たらなければやっていられない。


 「僕は中学生の頃から何も変わっていない……」


 レンの地元は宮城県なのだが、実はそこにもダンジョンがあり国立第一北高等学校(玄武)という、国立第一東高等学校(蒼龍)と同等の国立高校が存在していた。

 そうであるのに、なぜレンが地元の学校ではなく東京にある東校を受けたかにはもちろん理由があった。


 レンは武器マスタリーという優秀なスキルを先天的に持っていたために、国立第一北中学校から勧誘があったにも関わらず、特に将来においてダンジョン関連の仕事がしたいと思っていたわけでもなかったために、家から一番近い公立中学に入学していた。


 レンはクラスでは当然のようにトップカーストのメンバーとつるんでいたが、学校帰りのカラオケや買い食い、新しいiPhoneなど欲しいものが幾らでも湧いて出てくる。

 そしていつしか、周りの友人が持っているものは自分も持っていないと気が済まなくなってしまっていた。


 レンの家は裕福というわけでもなく一般家庭である。

 クラスでは何かあるごとに持ち上げられるほどスポーツも勉強も良く出来たが、カーストトップということもあり、つい見栄を張って親にはお小遣いをねだることも多くなった。


 レンの両親はクラスに馴染むなら、子供のためならとしばらく好きにさせていたが、さすがに看過できないほど金遣いが荒くなって小遣いを停止することに決めた。

 それによって、今までできたことができなくなったレンは、仲間内で実は貧乏で今まで無理をしていたのでは? と噂されるようになってしまう。


 レンはそんな噂は探索者になってランクを上げれば一蹴でき、さらにお金も稼げるのでは? と考える。

 自分は優秀な先天性のスキルを持っている。

 レンはクラスの友人にそれを話し仲間を集めた。

 自分以外に四人ほど集まったが、スキル自体を持っている人材は当然少なく、レン以外は所持していない。


 同じ中学内でも先天的にスキルを持っている者はいるとは思うが、通常は公表することはないのでわからない。

 そこでレンはダンジョン探索を安全にこなすため、小学校の時の親友……先天性の魔法スキルを持った友人を誘って六人パーティを作り、アルバイト感覚でお金と名声を手に入れようとしたのだった。




 彼らの探索はそれはもう順調だった。

 何しろ、レンはあらゆる武器が使え、別の学校に通っていた親友は風魔法が使える。

 残りの四人が特に何もしなくても、ゴブリン程度は簡単に倒せてしまう。

 1年後、彼らのパーティは地元テレビで優秀な中学生のパーティとして取り上げられるほどになっていた。


 1年をかけて6階層に到着したレンたちは、何度か6階層を探索するうちに気のゆるみが大きくなってしまう。

 そして、東京にある東校を受けるきっかけとなる出来事がレンを襲った。



 「レン! シルバードッグが6体! その後からレインフロッグも2体来てる! 挟みこまれるぞ、どうする!?」


 初期は少しでも危険があれば、撤退をしていたレンたちも今では慢心し、警戒を怠っていたせいで魔獣に挟み撃ちをされるという自体に陥っていた。


 「迎え撃つしかない!」


 レンはそう言うと、襲ってくるシルバードッグに切りかかった。


 まずは6対6の戦いが始まる。

 レンとレンの親友は危なげなくシルバードッグ二匹を倒すが、スキルを持ってない他の四人は押されていた。

 二人が四人の援護に向かおうとした時、大きな蛙の見た目をしたレインフロッグ二匹が参戦してくる。

 劣勢になりながらもあと少しというところでスキル持ちでない仲間の一人がレンたちを置いて逃走する。


 「おい! ふざけるな!」


 そしてそれを見た他の三人も逃走。

 あと少しというところでレンとレンの親友だけが取り残されてしまった。


 「こうなっては二人とも死ぬだけだ。レンだけでも逃げてくれ!」


 「何を馬鹿なことを!」


 そんな会話をしながら粘る二人だったが、親友の片腕にシルバードックが噛みつくと、もはや二人にはどうすることも出来なかった。


 ふいにレンの親友が自分もろとも魔法を放ち大声をあげる。


 「レン! 行ってくれ! 俺を無駄にしないでくれ!」


 親友の自爆とも言えるような技とともに一瞬の空白。

 レンは親友のいる場所に誰か助けに行って! と泣き叫びながらも……親友を残して逃走をしたのだった。


 


 レンたちのパーティがその後どうなったかと言えば、最初に逃げた四人、その後のレン、そして取り残された親友。

 それぞれ全員が他の探索者によって救出された。

 ただし、レンの親友は利き腕を欠損している。

 レンの親友が救助された理由の一つに、大声で親友の場所と助けを求めるレンの声を聞いたパーティが駆けつけたということがあるのだが、レンにとっては自分が逃げたことに変わりがなかった。


 レンは逃げた仲間を友人と思うことができなくなり、親友を残して逃走した自分にもまた幻滅していた。

 それでも……受けた恩は返さなければいけないと思う矜持だけはなくしていなかった。


 『ダンジョン深部には欠損も治すことのできるポーションがある』


 日本では1年に1回ほど……そう言ったポーションがダンジョンで見つけられるが、レンは親友の欠損を治すために自分で探索をしてそのポーションを見つけることを決意するのだった。


 宮城と東京のダンジョンは非常によく似ている。

 宮城では心落ち着いて探索ができないと考えたレンは、自分が探索した事のあるダンジョンと似ているダンジョンがある東校の入学試験を受けたのだ。


 仲間は絶対に見捨てない。

 そう心に誓って新たにパーティを組んだレンは、朧の助けを呼んできてくれという言葉を免罪符にしてまた逃げてしまった。

 それは、レンの心に深く深く傷を残すのだった。

 


 

 


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 六章が筆が全く進んでおらず、限定から挿話として1話あげます。

 六章は対人戦をメインに書こうと頭の中である程度はずっと想定があるのですが、対人戦というだけあって戦績で問題がでていて書けていません。

 主人公だけでなく、1~3年の他の生徒がそれぞれポイントが違う戦いを同時にしていてそれを頭の中で考えていると……オーバーヒートしてしまいました。

 主人公や攻略道と戦う前や同時に対戦相手はそれぞれ対戦をして来ていて、それらの語られない(書かれない)裏設定といえる対戦も……相当数ありそれが更新できない原因です。

 後、表がカクヨムに書くとズレるので、調べても調べても時間をかけまくっても解決してないです。

 ですので、もうしばらく……たくさん……お待ちください。

 それまでは新作(作者クリックで作品があります)で暇つぶしを……お願いします。

 まあ今は面白い作品がカクコンでたくさんあるから大丈夫かな?

 でも、ここに帰って来てね!

 

 

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