第186話 大蛇(おろち)って蛇なの? 龍なの?
22階層から23階層に移動した俺はみんなにこの階層の情報を伝える。
「23階層は、ナーガとピュートーンっていう2種類が出現する。どっちも
「蛇龍系って結局、蛇なの? 竜なの?」
今宵がまた難しいことって言うか、賛否両論わかれそうなことを聞いてくる。
ナーガの王であるナーガラージャは首が七つある蛇神だけど、仏教でいう八大龍王はそれぞれが八人のナーガの王だから龍神とも言えるし……。
それを言い始めると、カドゥルーやインドラ、シヴァ、ヴィシヌやブラフマーといった神が関わってきてしまう。
声に出すだけで、フラグが立ちそうで怖いんだよね。
だいたい
空を飛ぶか飛ばないか、手足があるかないかで説明ができそうだけど、実はそうでもない。
なぜなら、例えばカドゥルーはナーガを子として産んだけど、ナーガは神かといえば違うだろう。
そもそも神話って
結局それって語られる話の違いなだけで実際は全部が同じ子……神でもいいし蛇でもいいし龍とも言えるだろう。
「うーん、どっちでもいいんじゃないか? トカゲっぽかったら龍でワームぽかったら蛇とか?」
「手足があれば龍って聞いたことがあります」
さっちゃんが俺も一度は考えた話をしている。
「たしかニシキヘビの英名は
「パイソン? 最近勉強しているプログラミング言語がパイソンです」
「え? マコトちゃんプログラミング言語とか勉強してるの? ウチに就職してくれるんじゃないの!?」
パイソンという言葉にマコトが反応して今宵がその話に乗っかる。
いや、お前が蛇と龍の違いを聞いてきたんだろ!
女子ってこういうとこあるよね!
「あ! 違いますよ! 恭也さんや咲江さんは忙しそうなのでWEBでの情報収集、業務の自動化ができたらいいなって」
「な、なんて良い子なの!(ヒシっ」
なぜか今宵とマコトが抱き合っている。
「お前ら初階層だぞ。もう少し緊張感をもってだな。とりあえずレベ上げもしないといけないしもう行くぞ」
「「ほーい(はい)!」」
しばらく進むと敵を察知する。
「ピュートーンかな? とりあえず俺がやってみる」
俺はそう言ってから敵が目視できたと同時にピュートーンへ迫り、剣を振り下ろす。
ピュートーンもこちらを感知していたようで俺の振るう剣が尾によって遮られる。
「行動を読まれていた!?」
剣を遮られた俺が次の一手を悩んでいる刹那の間に、ピュートーンは噛みつこうと迫ってきた。
俺はその開けた口に目掛けて魔法を放つ。
「ファイヤーボール! ってアチチッ」
咄嗟に使ったファイヤーボールは高温なのに至近距離で放ってしまい、こちらにも火の粉が飛んできた。
って言うかこれ、ミノタウロスでもしたな……。
ピュートーンは至近距離で口と顔をファイヤーボールで焼かれて絶命している。
「矜一さん大丈夫ですか!?」
「いや、大丈夫! マコトの治癒を受けるほどじゃないっていうかダメージはないからっ」
マコトが俺の熱いという言葉を聞いて抱き着いて治癒をしようとしてくれるが、一切傷を負っていないのに、さすがにこれでは事案になってしまうと強めに大丈夫だと宣言した。
「お兄ちゃん、さっきのって動きが読まれてた?」
「それな。スピードは俺の方が圧倒的だったはずなのに合わせられた」
「ピット器官で感知されたのかもしれませんわね」
なるほど。
蛇が持っているという赤外センサーで敵を認識するというやつか。
「矜一お兄さんはダメダメですねぇ。次は私のハルバードがお相手しますよ!」
数分後……、俺の目の前では俺よりスピードの遅いキィちゃんがハルバードでピュートーンを攻撃して、見事に避けられ、体に巻き付かれようとしていた。
その瞬間、キィちゃんの近くにマコトが移動していて――
バンッ
キィちゃんに巻き付こうとしていたピュートーンは、マコトのガントレットによって弾き飛ばれる。
さらに弾き飛ばされたピュートーンは東三条さんによって首を切り落とされた。
「た、助けて……」
マコトに弾き飛ばされ、首を切られたはずのピュートーンは、長い体長を活かして絶命をした後でも、そのままキィちゃんに巻き付いたようだった。
あるよね、爬虫類とか魚類の死んだ後も動く現象。
「やぁ!」
その巻き付いたピュートーンを、今度はさっちゃんがキィちゃんスレスレで切断する。
「さっちゃんありがと」
「俺はダメダメだからハルバードが相手をするんじゃ……(ぼそ」
「お兄ちゃん……」
いや、そんな残念な子を見る目で兄を見なくともいいじゃん。
今宵だって他の三人に任せてるじゃん!
ヤバそうと思った瞬間に三人が動き出していたから、お前も俺と同じで任せたんだろ?
余裕そうに任せろって言ってあの状態なんだから、キィちゃんはそういうところで突っ込んであげないとTPOを無視する子になるかもしれないじゃん!
「てか動き出しがみんな早かったね。俺より先に動いてた」
「あ、それは……」
ん? なぜか言い淀むマコト。
「それは蒼月君が一度避けられましたから、キィちゃんがあっさりと倒せない可能性を想定したのですわ!」
「ぐぬぬ」
俺と今宵はキィちゃんなら倒せると思っていたけど、他の三人は俺が一度躱されたから、もしもがありえると思って動いたってことか?
まあ、俺と今宵は影残や短距離転移もあるから、ギリギリでもキイちゃんを助けることが可能というのも、動き出しが遅れた原因かもしれないけど。
「キィちゃん、初階層なんだから気を抜いたらだめだよ。矜お兄さんに拒否されて配信は出来なかったけど、もし配信をしていたらミスが世界にLIVE配信しちゃってたんだから」
さっちゃんがきぃちゃんを説教? している珍しい光景だ。
「思ったよりピュートーンが強いね? ナーガよりかなり強いんじゃ」
今宵が言うように、ピット器官による反応速度とマコトの一撃でも絶命をしていなかったのでナーガより強いだろう。
まあマコトの一撃で絶命をしないのはナーガも同じなんだけどね。
反応速度の違いが一番大きい。
スケルトンナイトなんかの少し強度のあるものは粉砕をしていたけど、蛇系はうろこは硬くてもその内部は柔らかいのでダメージを吸収、拡散して威力の一点集中を避けているように思われる。
「胴体を狙ったり体術で攻撃するより、首を直接に切断する方がよさそうかな」
「それなら今宵の出番だね!」
てか首狩りが専売特許の妹って……。
そこからは今宵の大活躍もあり順調にピュートーンを倒していく。
途中、慣れて来たころ合いでキィちゃんがもう一度ピュートーンに一対一の戦いを挑んで倒してからは、それぞれが一対一で倒せるようになるまで訓練をした。
俺と今宵、東三条さんはすぐに慣れたが、(今宵は初撃から一撃)キィちゃん、さっちゃん、マコトは倒せるようになるまでにある程度の時間が必要となっていた。
「まさか23階層で止まるとは。25階まで行きたかったけど、これだと明日も23階層の方が良いか?」
「反応が早いのがムカつくんですよ! それに切断しないとメンドクサイですし!」
キィちゃんがピュートーンへ愚痴を言うが、ハルバードはパワー系だもんね。
「ハルバードでも切断できるようになったんだからだいぶ強くなったんじゃないか?」
「えへへ、まあそれはそうなんですけど!」
「よっ! キィちゃんさすが!」
「えへへ」
俺と今宵の言葉に簡単に嬉しがるキィちゃん。
「でも、もう全員が一撃で倒せるようになったので大丈夫ではないですか?」
「相手が反応をするというのなら、フェイントを入れてやれば良いのですわ!」
慎重なマコトが大丈夫というなら明日は先に進んでも問題はないか?
東三条さんの言う通り、最初の攻撃はフェイント気味に繰り出すとピュートーンはそっちに反応をするので、それが判明をしてからは躱されることなく倒せるようにはなっていた。
まあ、フェイントだとバレないようにしないといけないというのが一番の難点だった感じかな。
「なら明日は23階層で一度戦って、問題がなければ24階層に行こうか」
「ほーい」
「あ、蒼月君。私様も……」
「もちろん。東三条さん、明日もよろしくね!」
俺の言葉にパアァっと笑顔となった東三条さんは、胸を張ってこう答えるのだった。
「よろしくてよ!」
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本文外。
読み直して気になったので補足。
本文に神々が出てきましたが、フラグではありません。
ハッピーエンドじゃなければアレですが、この物語はハッピーエンドを目指しているので今回は名前が出ただけです!
題名を『フラグではありません』にするか迷いました……。
序盤の今宵の会話の中の「竜」も会話の中なので今の所わざとです(他は龍と書いている)
西洋系が竜、東洋系が龍がしっくりくるけど(作者的にはこれが一番納得イメージ)、調べると始皇帝の~~~は説明を端折ってどっちも実際は同じです!(どーん)
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