第185話 ごっこ遊びは何歳でも楽しい
「マコトは父さんたちとどこまで攻略してる? 東三条さんも攻略道は21階層を攻略したとは聞いてないけど……。シュゴー」
「矜一さん、私は21階層を見るだけ見て攻略はしてないです。『
マコトは今宵が野営をしたいと駄々をこねた時に、20階層のボスとは一度戦っているが、その後も父さんたちと上に行っていないのか。
ただ、レベ上げの話をしているので、もう少ししたら父さんたちは階層をあげると思う。
「私様もマコトちゃんと同じような感じですわ。ダンジョン攻略道では20階層のボスを倒して21階層を見てから、その後に戻って19階層でのチーム戦の訓練が多いですわね。もっとも、私様は蒼月君と同じで攻略道の方にはあまり参加せずに、熨斗達を鍛えている所です。今宵ちゃんに作ってもらった階層移動アイテムで楽にはなりましたが、早く空間魔法が覚えたいですわ」
そうなると、アステリズムが攻略した22階層までが一番上の階層かな? マコトと東三条さんがいるからすぐには飛べないけど、サクッとそこまで攻略をしていくか。
「よし、それなら23階層までは一気に行くか。途中マコトのそのガントレットの性能も見せてくれ。シュゴー」
「はい!」
「ね、ねぇお兄ちゃん。本当にその格好のままで行くの? ……息苦しくない? あと、そのシュゴーって口で言ってるよ……ね?」
ダースベイタ―卿の完全コスプレ状態にチェンジをしている俺に、今宵がおずおずと聞いてくる。
キィちゃんに煽られたってのもあるけど、皆がマスクして衣装も変えているのに俺だけ東校の制服だと誰かに見られても良くない。
それに暗黒卿カッコいいし! ポーズの練習? ライトセイバーを構えた練習はコッソリしてるよ!
「行くぞ!」
俺は今宵をスルーしてマントをひるがえし、剣をライトセイバーのように光らせてポーズをとって皆に見せると、21階層へ向かうために魔法陣へと乗った。
その後すぐに、マコトがやってきて東三条さんも乗った所で戸惑っている今宵たち三人を残し俺は21階層へと移動するのだった。
「マコトはこの恰好について何とも思わないの?」
21階層に移動すると、俺は何の意見も言わずについて来てくれるマコトが気になって聞いてみる。
東三条さん? 東三条さんはサバゲーの時の反応を知っているから聞かなくても問題はない。
「矜一さんは何を着ていてもカッコいいです!」
「お、おう。ありがとう。たしかマコトも東三条さんも俺たちの動画は見てくれたって言ってた気がするから、ここの説明はなしで一気にいくよ」
「はい!」
「わかりましたわ」
俺は移動をしながらスケルトンナイト2体とレッサーヴァンパイアを斬り伏せて進んでいく。
ぶっちゃけ剣を光らせて戦っているからかなり楽しい。
「あ、蒼月卿! フォ〇スと共にある私様も戦いたいですわ!」
俺が一人で楽しんでいると東三条さんも戦いたくなったようだ。
「ならば東三条卿はスケルトンナイト一体をよろしく頼む。マコト卿も同じくスケルトンナイトで。そのガントレットの強さを
「はい!」
「了解しましたわ!」
「キィちゃんが揶揄うからお兄ちゃんが……。でもダースベイタ―卿って我とか言わないよね」
「でもなんかノリノリ感が今宵ちゃんみたい」
「えぇー! お兄ちゃんと似てるなんて」
「今宵ちゃん、嬉しがるのか嫌がるのかどっちかわからない反応はちょっと……」
追いついてきた今宵とさっちゃん、キィちゃんが会話をしているが、俺たちは三人でそのまま敵を倒していく。
俺が光の剣で魔法を撃つ体制のレッサーヴァンパイアを倒し、東三条さんが剣でスケルトンナイトを倒すと、マコトが『バンッ』という音とともにスケルトンナイトを粉砕する。
まあ、骨だしね?
何度かそれを繰り返していると、東三条さんが氷結魔法のフリーズを使ってスケルトンナイトを凍らせて、マコトの粉砕と同時に凍らせたスケルトンナイトを粉々にしていた。
倒している絵づらだけを見ると、凄く様になっているのではないだろうか。
しかしガントレットに有用そうなスキルを持っていないマコトでこれなら、武術全般のスキルを持っている今宵や剛力を持っているキィちゃんならもっとすごい攻撃になるのでは?
俺たちはそんな風に戦いながら、一気に21階層を攻略して22階層に突入する。
「ナーガ……。蒼月君、ここは私様が一番に戦いますわ!」
22階層のナーガを目の前にして、東三条さんは正気に戻ってしまった。
もう少しスターウ〇ーズゴッコを楽しみたかったが、ナーガは因縁の相手だし仕方がないか。
「行きますわ!」
東三条さんはそう言うと、魔剣を片手に切り込んで……瞬殺する。
「あ、あら?」
「どうやらカドゥルーに召喚されたナーガよりも弱いみたいなんだよ」
「キィちゃんが簡単に倒していましたし、そうでしたのね」
「むむむ。この中で唯一空間魔法持ちじゃないのに……(ぼそっ」
キィちゃんが俺へ対するのと同じくらいに東三条さんにじゃれるのは何かあるのだろうか?
「そんなことより天音ちゃんやマコトちゃんたちばっかりお兄ちゃんと遊んで! こうなったら、お兄ちゃんから聞いた必殺技でこの階層は今宵がやるから!」
今宵たちに一切手出しをさせずに戦闘をしすぎたようで、今宵の我慢の限界が来てしまったようだ。
今宵はこの階層は自分がやると宣言すると、だしぬけにサバゲーで購入した二丁のハンドガンを取り出すと腕を交差させてポーズをとった。
そして先頭に移動すると、こちらを一度見てから走り出したので俺たちはその後を追いかける。
しばらくしてナーガを発見した今宵は、二丁の拳銃を構えるとそのまま撃ち始める。
二丁のハンドガンから放たれたBB弾は今宵の魔力で覆われていて、見栄えを考えてか色がついて魔法の弾丸のようになっていた。
計4発ほど放たれた弾丸はナーガに全弾命中すると、ナーガは魔石となった。
「「今宵ちゃんすごーい!」」
ナーガを倒した今宵は両手でハンドガンを回した後にホルスターへとしまう。
いやそのホルスター、さっきまで装備してなかったじゃん。
チェンジでそんな小技をするために装備したの!?
てか武術全般スキル……まさか銃は砲術判定とかで今宵は使えちゃうの?
全弾命中とかおかしいだろ。
「お兄ちゃんが魔力を纏わせれば、ダンジョンでも使えるんじゃないかって言ってたから試してみた! 銃が使えたら九条君が実は最強なんじゃとか言ってたけど、今宵にもできるみたいだね!(ドヤァァ」
今宵は主人公クラッシャーかなにかかな?
「いや、凄いな。でも4発もかかっていたら剣の方が強くない? 遠距離ってだけでだいぶ有利な気はするが……」
「うーん、それについては魔力がこれ以上は乗せられないんだよね~」
「魔力を圧縮したか?」
「!? 次やってみる!」
でもそれが成功したらダンジョンの戦い方が変わっちゃう気がして怖いな。
「わ、私様もやりますわ! 空間魔法はまだ覚えていませんけれど、今宵ちゃんとサバゲーはしたので息ピッタリですわよ!」
「じゃあ天音ちゃん同時に撃とうよ!」
「わかりましたわ!」
今宵にあてられて、東三条さんはアサルトライフルをマジックバッグから取り出してやる気満々のようだった。
アサルトライフルは連射もできるので狙撃銃とは違い、敵が多い場合でも効果的だ。(水戸君談)
サバゲーをことのほか楽しんでいた今宵は、東三条さんの申し出を受諾すると二人で作戦を練り始めた。
それを見たキィちゃんが『ぐぬぬ』と言った感じで羨ましそうに二人を見つめている。
アレか? 空間魔法が使えなくて東三条さんが仲間外れのはずなのに、サバゲーを一緒にしていないから今の仲間外れは自分で悔しがっているのか?
俺はキィちゃんのその姿をみてピコーン! と電撃が走った。
「今宵、東三条さん。サバゲーをしたのは俺もなんだから混ぜてよ」
「いいよー。じゃー、水戸君の友達が三人でやってたフォーメーションで突撃だね」
「了解」
「わかりましたわ」
俺は了解と言いながら、キイちゃんに銃を見せてニヤニヤしてみると、キィちゃんは鬼の形相でこちらを睨んでいた。
やり過ぎた……ってかコエーよ!
まあでもせっかくなので、BB弾に魔力を込めるとどれくらい戦えるかは試すんだけどね。
打ち合わせをした俺たちは三人でナーガを倒して行き……、途中からは全員で敵を倒して23階層へ移動する魔法陣へと到着したのだった。
ちなみに魔力を圧縮してもナーガを倒すのには2発ほどの弾丸が必要で、その威力の問題はBB弾が小さすぎるからだろうと結論付けた。
「23階層に行く前に、弾丸を撃ち返せるか試したいんだけど、今宵か東三条さんのどちらかが俺に銃で撃ってみてくれないか?」
「良いよ楽しそう! 先ずは今宵からだね!」
俺たちは少し距離をとって構える。
今宵はアステルの恰好で二丁拳銃。
俺はダースベイタ―卿の恰好で剣を光らせて構えている。
「はじめ!」
東三条さんの掛け声とともに、今宵は即座に銃を撃たずに少し横に移動してから二丁の銃で連射する。
移動したのは俺の正面を避けて少しでも打ち返せないようにするためか?
「小癪な!」
俺は振り向きざまに銃弾を
「今宵ちゃん頑張れ!」
「矜一さん頑張って!」
今宵にはさっちゃんから、俺にはマコトの応援が掛かる。
剣で弾丸を弾くと、音が響き魔力が霧散するためにかなりの戦闘演出となっている。
今宵は二丁拳銃なので手数が多くこちらは防戦一方なのだが、空中でリロードをした瞬間に俺はもう一つ剣をアイテムボックスから取り出し二刀流で応戦する。
余裕が出た俺は弾丸を今宵に跳ね返すことで攻撃を始めた。
「え? え? アステル? とダースベイタ―?」
「戦ってるのか? でもシンとファーナは見てるだけだから訓練か? 迫力ヤバいな」
「綺麗。映画を見てるみたい」
!? 23階層から22階層へ戻って来る探索者がいることを失念していた。
魔法陣の階層移動は異空間転移しているために、23階層に人がいても気配察知や魔力感知は働かない。
急に人が来て止めるのもどうかと思い、少しだけ戦闘を繰り返し……俺と今宵は訓練を中止するのだった。
「アステルちゃん、配信見てます! 握手して下さい!」
22階層へ移動してきた六人の探索者たちは、アステルとシンとファーナと握手をすると1階層へ戻るらしく移動していった。
「A級パーティだって。でも22階層から外に戻るのに、あと二日もダンジョン移動するって言ってたから大変だね」
「蒼月君たちが異常なだけですわよ。高位探索者になればなるほど何週間もダンジョン内で過ごすことが普通ですし。さっきいた女性探索者なんて握手をする時以外は臭いを気にして少し離れていたでしょう?」
「あー、そう言えば全員少し……汗臭かったかも。クリーンをかけてあげても良かったけど、それだと臭いって言ってるようなものだし難しいね~」
臭いの話で自分の汗が気になった東三条さんが汗拭きシートを取り出して拭いていると、キィちゃんがクリーンをかけてあげていた。
今いる六人で生活魔法が使えないのも東三条さんだけなのだが、キィちゃんも
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2日後、22階層で遭遇したA級パーティが、自分たちのチャンネルで『アステリズム フォ〇スの覚醒』という動画をあげてバズることになるのだが、それはまた別の話である。
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