第182話 ううん、今来たところ→全員遅刻ってことか!

  「おー、ここがサバゲーができる所か―……ってここだとマスクにゴーグル、銃に装備も迷彩服やグローブにブーツ……ダンジョン前となんか大差がないね? お兄ちゃんみたいな不審者がこっちだとほぼ全員になるのが違いくらい?」


 おい、今宵よ。

 それアステリズムの話ならお前もだからな?

 ちょっと人気があるからって、東三条さんだってあの恰好でウチに来た時は不審者だからな?

 可愛いは正義だからって、お兄ちゃんをそんな……いやまてよ? むしろ魔力の性質変化でダースベイタ―卿のマスクをかぶって剣をライトセイバーみたいに色を付ければ俺もワンちゃん人気になれるのでは!?


 俺はチェンジでダースベイタ―卿の装備に着替えると剣を取り出して、蛍光灯のように光らせるとポーズをとった!


 「暗黒面のパワーはやはり素晴らしい! シュゴー」


 「「「……」」」


 俺のカッコ良さに水戸君たちは見惚れて何も言えないようだ。

 そこへ店のドアが開いて客が二人やって来た。


 「え? あれ、あのコスプレでサバゲーするのかな? フォースと共にある人がいるよ?」


 「しっー、ダメよ、見たら。しかもあれ悪い方よ」


 サバゲーの店に買い物に来ていた女性客二人が、俺を見てヒソヒソと話している。

 俺は無言で建物の影に隠れるとチェンジで元に戻った。

 そして転移で別の建物の影へと移動して、水戸君たちに向かって手をあげて声をかけた。


 「ごめんごめん、遅れちゃった。待った?」


 「「「……」」」


 三人は無言で先ほど客が出てきた店へと入って行くのだった。

 え? キィちゃんたちもダースベイタ―卿はスルーだったけど、ここでもまたスルーなの!?

 話し合ってもいないのにそんな意思疎通あるー?

 そこは、『ううん、今来たところですわ』っていう所でしょ!

 そしたら今宵が『カップルかっ!』みたいなさぁ、やり取りできたじゃん?

 今宵ならやれる子だと信じていたのにさぁ。

 俺はそう思いながらも、今宵たちの後について入店した。



 「まずは装備からだね! 店員さーん、今宵に似合う装備を見繕って下さい!」


 「それならば私様もお願いしますわ。金額は気にせず持って来てくださいな」


 今宵と東三条さんは早速装備を店員に選んでもらうようだ。


 「水戸君、俺もレンタルじゃなくて折角だから買おうかな。アドバイスをくれる?」


 「もちろん。でもまあ服は迷彩服や何だったら防御力の高い東校の制服でも良いから、グローブとブーツかな? ゴーグルやマスクは好きに選んでもそんなに差はないから」


 「じゃあまずはブーツから宜しく」


 「了解。と言っても、重要なのはサイズ選びくらいかな? 海外製のものが多いから履いてみないと合わないことも多いよ。あ、これなんかお勧め。普段使いにもできる。靴底のアウトソールが厚めのもので悪路で尖った小石にも強いし、切込みも多いからグリップ力も高い。それでいて静穏性も高く、素材がゴアテックスで防水でしかも蒸れないし軽くて――」


 水戸君の説明が止まらない。

 正直もうここまでの説明で、その靴でサイズの合うやつで良いんだけど、まだまだしっかりと説明してくれている。

 しゃがむ動作が滑らかにできるものが良いとかむちゃくちゃ詳しい。

 てか、この靴はダンジョンでも使えるよね。

 超高性能なんだが。

 俺は一通り水戸君の説明を聞いて、そのお勧めブーツを購入した。


 「グローブは操作性と耐衝撃が良くて洗濯も出来てーって蒼月にはクリーンがあるからいつも清潔か。ならこれかこれかな?」


 俺は勧められるまま気に入ったグローブを購入。

 迷彩服も購入してついに銃のコーナーへとやって来た。

 そして水戸君の熱い熱い説明を聞きながら、アサルトライフルタイプの電動ガンとサイドアーム……セカンドウェポン副装備のハンドガンを購入した。



 「お兄ちゃん、見て見て。じゃーん! 二丁拳銃~!」

 

 今宵は既に迷彩服に着替え靴やグローブ、マスクをスカーフのように巻いてゴーグルはかけていないが首元に装備はしているようだ。

 こちらにやってくると、購入したハンドガン二丁を俺に見せてくる。

 二丁拳銃ってかっこいいけど、実際には実用性がないらしいからな? 

 いやでも今宵なら、リコイル……銃の反動を片手でも耐えることができるし、普通ならできないリロードも空中でやれそうな気がする。

 え? 二丁拳銃が出来ちゃうの?


 そしてその後は一回転して自分の装備を俺に見せてくれた。

 うん。可愛い。


 「蒼月君、私様も買ってきましたわ。アサルトタイプでフル/セミオートの切り替えもラクラク、スコープも付いていて拡張性も高いのですわ。そしてサイドアームはこちら! アメリカの陸軍特殊部隊、デルタフォースの要望と理想を元に作られたハンドガンをモデルとしていて――――」


 いやいや、お嬢様がハマっちゃっているんだが? ちょいちょい専門用語まで出てきてちょっと何を言っているのか……。

 水戸君はうんうんと頷いて時折、いいよね とか合いの手を入れている。

 いや、普通はダンジョンに入る時にこういう会話をするんじゃないの?

 まあ俺たちは制服があるから、装備もあんまり語り合えないんだよね。


 


 「待ち合わせ時間まであと1時間くらいあるから、軽く何か食べておこう」


 サバゲー装備の店を出て俺たちは軽く食事をとると、待ち合わせの場所に向かった。


 「お、光成みつなり久しぶり。ってか二人って言ってたからこっちが四人で3対3をする予定だったけど四人なら4対4ができるな?」


 「久しぶり、中学の卒業式以来かな。そうそう四人だからちょうどいいでしょ」


 水戸君の中学時代の友人四人がやってきて会話をする。

 俺たちもそれぞれ挨拶を交わした。


 「え? 女の子? しかも二人? え? 光成……お前らサバゲーデート!?」


 「わ、私様が蒼――「お兄ちゃんデートだって!」」


 「はいはい。今宵はおこちゃまだなぁ」


 今宵が俺を揶揄って来ようとしたので、俺は先手を打って今宵を揶揄う。

 むぅーとうねっても、お前はもうマスクをしているから顔がわかんないぞ。

 まあなぜか顔を隠していても今宵も東三条さんも可愛い雰囲気が凄く出てるんだけどね。

 ちゃんと見えないのに可愛いとわかるって凄く不思議。

 少しだけ見えてるパーツのせいか?


 「なんだ、兄妹か。でもこっちの女性がまだ光成の彼女の可能性が……、いや兄妹なら妹の方が光成の?」


 「いやいや、部活動の友人だから。ちょっとそういうの洒落にならない家柄の子だから」


 「あら水戸君、別に大丈夫ですわよ。男性同士は女性を連れて行った時にそういう挨拶をするのはお約束と私様が読んだ漫画に書いてありましたわ」


 「「私様!? 俺様の女性ヴァージョンか何かか? それなのにお嬢様言葉だって!?」」


 水戸君の友人たちは長いセリフにもかかわらず、息ピッタリでツッコミを入れる。

 東三条さんの言葉遣いは最初に聞くとそう思うよね。

 ってかそこの一人、『なぜか中毒性があるな』ってわかるような気がするけどちょっとヤバイ性癖みたいになっちゃってるよ!?


 「まあまあ。それよりどうする? 4対4に分かれてのフラッグ戦でいいかな?」


 「とりあえずはそれかな? 1試合15分の設定で攻撃を受けたらヒットと言って死亡判定で」


 「了解」


 水戸君が相手と話し合って戦い方を決めてくれたようだ。

 こちらにやってきて説明をしてくれる。


 「フラッグ戦って言うのは、両陣営に分かれてフラッグが取られるか全滅したら負けなゲームだね。攻撃を受けて身体にBB弾(バイオBB弾土に分解)が当たったら、ヒットと自ら言ってそこで死亡判定として待機。まあ旗を守る以外は武器が銃に変わっただけでダンジョンのチーム戦と同じかな。あ、近接戦闘はなしでね」


 「ふむふむ、わかったー!」


 「「了解(ですわ)」」


 俺たちはルールや説明を聞いてフラッグ戦を始める。


 ――

 

 ――――


 ――――――


 「いや、待て待て。おかしいだろ! 光成! お前もそうだけど、その二丁拳銃の子なに~? 動きが早すぎて当たらないし、二丁拳銃なのに正確に狙ってくるし! 1分程度でこっちが全滅とか絶対初心者三人じゃないだろ!」


 うん、ごめんね。

 レベル差が開きすぎてて……正直勝負にならない。

 俺たちはその後、二人ずつ分かれてチーム分けをすることになった。

 俺たちが二手に別れたことでその二人同士で激戦を繰り返し、かなり熱い戦いが繰り広げられる。

 最終的には知恵を出し合って、水戸君の友人たちも楽しめる状態となり、全員が満足してサバゲー体験を終えたのだった。


 

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