第145話 男と男の?

 11階層のトラップ部屋の安全性を確かめてから2日経った放課後、俺は水戸君と今宵の3人で19階層にやって来ていた。

 水戸君はナーガと戦った後でレベルが16になり、プロテクションと言うスキルを取得していた。


 プロテクションは自身の防御力を20%アップさせるという効果だったのだが、九条君たちと野営の準備の買い物に一緒に行った時に、九条君がライオットシールドを使っていると聞いて自分もプロテクションがあれば、攻撃を引き受ける盾役タンクをした方が良いのではないかと考えたそうだ。


 そこで水戸君は九条君に色々聞いて野営の準備とライオットシールドを購入した。

 そして九条君が自分がパーティでどういう動きをしているかを聞いて負けたくないという思いが強くなり、俺に訓練を手伝ってほしいと相談があったのだ。


 ちなみにこの相談内容とは別に、九条君と水戸君との会話を聞いていた葉月さんが言うには、九条君の説明がイチイチ守ってやってる感が出ていて嫌だったと言っていた。

 シュテルンの噂話を九条君がしたあたりから七海さんと葉月さんの間では九条君の評価が結構下がっているらしく……、俺も同じように思われないようにしないといけないと気を引き締めるのだった。



 「来るみたい。5体!」


 警戒していた今宵から注意が飛ぶ。

 その声を聞いて水戸君は俺たちの前にでた。


  ガンッ


 水戸君が敵から放たれた矢をシールドで弾く。


 「スティング!」


 そしてそのまま一番手前にいたゴブリンソルジャーを槍のスキルを使って突き殺した。

 その間に今宵が影残を使って先ほど矢を放ったゴブリンアーチャーを仕留めると敵のリーダーであるゴブリンジェネラルをけん制する。

 俺はもう一体のゴブリンソルジャーが水戸君へ攻撃をする前に切り伏せる。


 「水戸君、ファイヤーが来る!」


 俺の声に反応した水戸君はシールドでそのファイヤーボールを防ぐ。

 そして俺が魔法攻撃をした直後で無防備になっているゴブリンマジシャンを処理している間に、ゴブリンジェネラルをけん制していた今宵に水戸君が追い付いて今宵への攻撃を防ぐと、その隙に今宵がゴブリンジェネラルを攻撃する。

 ダメージ負って動きが鈍ったゴブリンジェネラルに俺は近づくと後ろから止めを刺した。


 「ふう。やっぱり耐熱温度が気になって炎系の魔法はシールドで受けるのが怖いよ。恐怖耐性のお陰で何とかなっているけどね」


 敵のパーティを倒した後に水戸君がこぼす。

 ここ19階層はゴブリンジェネラルを指揮官としたゴブリンの上位種がパーティを組んで思考し、戦術を駆使してくる非常に厄介な階層だ。

 敵に弓使いや魔法使いそして今回はいなかったが、索敵に優れ弓も使えるレンジャーや盾役タンクなど組み合わせのバリエーションも豊富なことから、水戸君の盾を使う訓練に最適だろうと選んだのだ。


 「安いシールドだと危ないかも? でも水戸君のは結構いいやつ買ったんだよね? 九条君より2ランクほど良くて九条君が羨ましがってたんでしょ?」


 「うん。ステンレスとエアロゲルで耐熱性と断熱性がかなり高くて、透明セラミックスの除き穴がついているから、盾としてはちょうど中ぐらいのやつかな? 皆の命を預かる盾だからね。自分の買える最大のものにしておいたよ。まあ蒼月たちと稼げてるから買えたんだけど」


 ちなみに俺がヴリトラ戦の時に使ったバリスティック・シールドは下から2番目くらいの値段だったりする。

 水戸君が買ったシールドは俺が自分のを買う時に迷ったやつだ。


 「ファイヤーボールが1500℃くらいと言われているから、ステンレスだと怖いね。でもシールドは自分の魔力で強化しながら使うものだから……魔法も素が魔力だから相手の力量にさえ気をつければ大丈夫じゃない?」


 素材の耐熱温度だけで言えば、防げそうにない攻撃も魔力を纏わせることによって強度が大幅に変わるのだ。

 だから素材の能力が高いにこしたことはないが、最低限のシールドであっても魔力が良く伝導するものであればなんとかなるとも言える。


 「まぁね。でもやっぱり矢より魔法の方が構えてしまう」


 「それも慣れる必要があるか」


 俺たちはそういう会話をしながら19階層で何戦も繰り返し訓練をする。


 「うーん、集中してもお兄ちゃんの言う頭の中で音がして全体が止まって見えるような感覚ができないなぁ」


 今宵が俺がヴリトラ戦で起きた超感覚を試している。


 「それな。俺もあの時以来できていないんだよなぁ」


 「蒼月が覚醒したやつ? あの時は自分たちで精いっぱいだったけど、蒼月が吹き飛ばされたり、明らかな劣勢状態を初めてみたからさ、正直凄く動揺があったんだよね」


 ナーガは格上とは言え、東三条さんがいたにも関わらずかなり苦戦をしたのは俺が負けそうだったということも大きな影響を与えていたのかもしれない。


 「攻撃は通らないし相手の攻撃は重たいしでもうアレとは戦いたくない」


 「むむぅ。今宵もその場面にいれば頑張ったのになぁ」


 今宵があの日の夜に俺の部屋に突撃した時にも言っていたが、お兄ちゃんとしては危ない所には来てほしくないと言うのが本音ではある。

 ただ、逆の立場なら絶対にその場にいたいと思うだろうから否定することもできない。


 「でもこうやって地道に訓練をすれば、僕たちなら成長してああいったイレギュラーが起きても対処をしていけると信じてるよ」


 俺たちは水戸君の自分たちなら成長できるという発言に同調すると、またゴブリンジェネラルの率いるパーティと対戦をしては訓練を繰り返していくのだった。





――――――――――――――――――――――――――――

以下水戸君の現在のステータスです。


<名前>:水戸 光成

<job> :ランサー

<ステータス>

 LV  : 16

 力  :D

 魔力 :D

 耐久 :C

 敏捷 :D

 知力 :D

 運  :D

 魔法 :

 スキル:身体強化1 ステータス偽装 恐怖耐性 プロテクション



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