第144話 野営準備
次の日、俺は高校に入学当時の登校時間に家を出た。
最近は少し遅めに登校をしていたのだが、前日にシュテルンの話題が俺の席の周りでされていたことに加えて、猪瀬さんが契約魔法に引っかかり七海さんと葉月さんからお叱りを受けていたせいで、九条君のパーティと野営をする話をしたかどうか聞けずに家に帰ってしまっていた。
それに気が付いた俺は入学時と同じくらいに家を出れば、椿に登校中に会えるのではないかと考えたのだ。
ゆっくりと登校をしても椿に出会える可能性はゼロなので早足で学校へと向かう。
「っていねぇ……」
早足で移動して下駄箱まで来たが、椿を発見することは出来なかった。
「まあ、一番話すのに気安いから椿が良かったが九条君のパーティメンバーがいれば聞けば良いか」
ただ、出来れば榎本君だけと言うのは避けたいなぁと思いながら教室へと向かう。
一対一でなければ話すことに問題はないとは思うが、一対一だとどうにもあのノリについて行ける気がしない。
ガララッ
俺はドアをあけて前方から教室に入り自分の席周りを見ると、一ノ瀬さんと椿が談笑していた。
「っているのかよ!」
「は?」
俺の声を聞いて、すぐそばに座っていたクラスメイトが反応する。
「あ、ごめん。何でもない」
と言うか、気配察知で教室内を確認しておけば椿なら区別がついたので驚くことも無かったのだが、気配察知は
ちなみに思考加速もこのタイプで無意識に強弱をつけていることも多かったりする。
「一ノ瀬さん、椿おはよう」
俺は自分の席に向かうと、一ノ瀬さんと椿に挨拶をする。
「おはよう」 「蒼月君おはよ」
「二人とも早いね。いつもこの時間なの?」
俺が入学時に登校していた時間帯も割と早い方だったが(迎えに来るから)、今日は早足で学校に向かったので教室内に登校しているクラスメイトはまだそれほど多くはなかった。
たった数分の違いでしかないが、その数分で結構変わるみたいだ。
「席替えがあった後からかな? あたし達は宿題や予習でわからない所があったら、それを朝に教え合うようにしたんだよね」
「へぇ~。そうなんだ」
「蒼月君も一緒にどう? 椿から聞いたけど、元々は凄く勉強ができたんだよね? それに今はクラス1位だし教えてほしいな」
椿が俺の話を一ノ瀬さんにした?
いや、俺と椿が話題になった時に一ノ瀬さんが聞いた感じかな?
俺はチラリと椿を見るが、表情を特に変えていることもない。
俺が混ざっても大丈夫な感じか?
でもまあ、一緒に登校をしていた時のことを思えばまだそれは早いだろう。
野営でもう少し仲を取り戻してから……っとそうだ野営の話!
「俺が教えられるとは思えないけど……、もし早く起きられてこの時間帯に来ることができたら逆に教えてほしいかな。っとそうそう、ダンジョン攻略道の誰かから野営の話は聞いた?」
俺は行けたら行くと言う様な感じで話を流すと、野営の話へと繋げる。
「あはは。それって来ないやつじゃーん。蒼月君も冗談を言えたんだね! 野営の話はあたしは聞いてないかな? 椿は?」
……。
〇〇君も冗談を言えたんだね! とかさぁ、陽キャが陰キャに言っちゃいけないやつ!
こっちの肩身が狭くなるやつだから!
そんなこと言うなら、朝早く起きられちゃった♪ って空気も読まずに来ちゃうんだからねっ! グスン。
「野営の話は聞いてないな。矜一、どうなったの?」
どうやら昨日は誰も野営の話を椿たちにはしてなかったようだ。
「顧問の桃井先生は参加しないから部活動としてではないけど、メンバーは全員参加してもいいって。だから野営する階層とか日程とかを決められたらなって」
「そうか。矜一たちが一緒に行ってくれるなら助かる」
「ほんとほんと! 蒼月君が強くなった秘密を暴いちゃうぞ~」
一ノ瀬さんってこんな感じだったっけ?
思った以上に気安く話しかけてくれている気がする。
さっきの陰キャに言ってはいけない言葉はまだ忘れてないけどね!
「あおっちおはー、二人もおはー」
「「おはよう」」 「里香ちゃんおはよ」
「なになに? なに話してたん?」
「野営のことだよ。攻略道のみんなも一緒に行ってくれるってさっき蒼月君にきいたとこ」
「なるなるー。楽しみだよね。キャンプファイヤー。必要そうなものでも放課後に一緒に買いに行かん?」
「あ、いいね!」
俺たちはその後も徐々に登校をしてくるメンバーを巻き込んで、野営の話をして冴木先生が来るまでの時間を潰すのだった。
放課後。
ダンジョン攻略道のメンバーと九条君のメンバーは野営に必要なものを揃えるために買い物に向かった。
東三条さんは一人だけ既に護衛のメンバーと野営をして階層攻略をしていたことから、「必要な物選びは任せて下さいまし」と言って自信満々で買い物についていった。
でも俺は思うんだよね。
たぶん金銭感覚が全く違っていて、東三条さんの薦める野営に必要な
攻略道のメンバーは割と稼げているので買えるかもしれないが……、九条君たちはギアだけで何十万円となったら確実に無理だろうと思う。
そして俺はみんなとは別行動をとって何をしているかと言うと……。
実は昨日も放課後に
矜侍さんからは問題がないと言われていることではあるが、父さんが念のために安全性を調べて置こうと言って譲らなかったのだ。
ちなみに昨日と今日の2日間だけは何かあれば矜侍さんが駆けつけてくれるという話までまとまっている。
安全性を確かめると言っても、もしあの女性がまた出てきて今度は戦闘になったりしたら普通に俺たちはやられてしまうからね。
「しかし暇ですねぇ。ネットが繋がれば私たちの活躍を見ながら時間が潰せるのに」
キィちゃんが愚痴る。
金銀の宝箱を開けてしまえば、その後の30分は特段することがない。
てか私たちの活躍ってお前ら二人は登場時にした大爆死を忘れたのか?
「お前らこの時間を無駄にするなよ。基礎魔法だって覚えていないんだし、気配察知や魔力感知とか幾らでも訓練できるんだぞ」
「ちゃんとやってますよー」
まあ、口を動かしながらも魔力を循環させたり色々確かにしているのはわかるんだが、こうなんていうか真剣味がさぁ。
「お前ら、今宵と差がつき過ぎたら一緒にダンジョンに潜れなくなるぞ」
「むむぅ。今宵ちゃん! 魔力感知のやり方教えて!」
「私は先に属性魔法!」
「いいよ! 魔力感知は~こんな感じでぇ~」
今宵の感覚レッスンが始まる。
アレで本当に大丈夫なのか?
俺たちはその後に何度も金銀トラップを発動させてみるも、変わった事が起きることはなく、安全を確かめると家へと戻ったのだった。
ちなみにキィちゃんが魔力感知、さっちゃんが属性魔法を会得することに成功した。
この二人も天才なのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます