挿話 ギルド受付 間宮雫の日記帳(SS)
カクヨムの企画でこちらの作品を応援してくれた方が複数いらっしゃいました。
お知らせを確認すると、限定ノートはこの企画では見えないようですので急遽その話を解放します。(短いです)
挿話で時系列的にはゴールデンウィーク頃となっているのでお気をつけ下さい。
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―― 間宮雫視点 ――
ゴールデンウィーク最終日。
夜勤勤務の先輩と交代するために、ギルドへ出勤して更衣室で着替えを済ませてバックヤード(ここでは休憩室)に向かう。
24時間体制のギルドでは業務を円滑にまわすために、仕事を始める時間より30分は早く出勤するというのが、暗黙のマナーのようになっているために交代の時間になるまでは休憩室で待機するのが日課でもある。
私が休憩室に入ると、いつもよりも休憩室内がざわついていてなぜか興奮して話しているベテランの先輩方が多かった。
特にこの休憩室はダンジョン内での救難信号を受けた時にすぐに行動に移せるように元冒険者の職員がダンジョンに向かうための待機場所の一つでもあるので、受付担当よりもベテランの方が多く使っている場所だ。
「何か救難信号でもあったんですか?」
救難信号があった場合にはピリピリした空気に装備を付ける音や救難者が今どこにいてどういう状況なのかを的確に判断するためにその話し合いがされる。
そのため、この休憩室は喧騒に包まれることも多いのだが、今日はそれとは違う騒がしさではあるがざわついていることもあって救難信号があり救助前ではなく救助後の可能性も考えて私はベテランの男性職員に話を聞いてみる。
受付に行く前にギルドであったことを知っておくのも、重要なことの一つと思うからだ。
「ああ、いやな。もう15年? もう少し前か? そのくらいの時にギルドで物凄く有望な冒険者がいると話題になった事があってな。男女の二人組なんだが、いつも野良パーティに参加しては成果を出していた二人が冒険者に復帰するってさっきまで手続きをしていたんだよ」
ああ、物凄く有望な冒険者カップルだったのに、二人とも生活魔法を選んでいていつの間にか冒険者を辞めていたという話のやつね。
この話はギルドの忘年会やそういった何かの集まりがあった時に、定期的に話題になってベテランの女性の先輩方は男の方を称賛して、ベテランの男性職員は女性の方を称賛し、最終的に口論になるやつ……。
「そうよ! 雫ちゃん。蒼月君が冒険者になった時は私が担当してね! あの時もカッコ良かったけど、今はちょい悪な感じで渋くなっていたのよ!」
蒼月君? 蒼月君なら私も冒険者登録をしたし、ギルド講習でも話をしたけど……。
物凄く珍しい苗字だけど、血縁者だったりするのかしら。
「お前はあからさまに粉をかけていたのに、咲江さんをあいつが連れて来てパーティ登録した時の落ち込みようは……。今でも思い出すよ」
「うるさいわね! 貴方だって蒼月君がいるのに咲江ちゃんに鼻の下を伸ばしていたじゃない!」
私がベテランの男性職員に話を聞いたのを耳ざとく見つけた、受付の統括マネージャーであるベテランの先輩が話に割り込んできて男性職員と喧嘩をし始めた。
しかし蒼月君か。そう言えば腐れ縁で、いつも私をライバル視してくる楓ちゃんも蒼月君の話をしていて、しかも連絡先を渡したとか言っていたなと思いだす。
「ふふっ 最初はあんなにぽっちゃりしていたのに、最近はスマートになって。でもあんまりギルドには来ないのよねぇ」
「雫ちゃん? 急に笑い出してどうしたの?」
つい蒼月君のことを思い出して口に出すと、耳ざとく拾われてしまった。
「いえ、前に担当した子を思い出してしまって」
「なになに? ついに鋼鉄の乙女にも気になる人ができたの!?」
「おい、それ女性同士じゃなかったらセクハラだぞ!」
3人でワイワイ言い合い、交代時間になった私は今日も1日仕事を頑張るぞ! と気合を入れて受付窓口へと向かうのだった。
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