第127話 ダンジョン攻略道創部!

 月曜日。

 授業を終えて放課後に部活のメンバーと話をする。


 「桃井先生からの連絡はみんな見た? ダンジョン攻略道が校長先生の認可を受けて正式に創部できたみたい。良かったー」


 七海さんが午後に送られてきた桃井先生の連絡の話を皆でする。


 「うんうん! でも部室については準備室(仮)とか書いていて文章から他の部屋を部室にすることを諦めていなかったのが面白いよね!」


 葉月さんが創部の話と一緒に送られてきた、「部室はここの準備室(仮)だけどぉ~、私が仕事をしているから集まられると困るのよねぇ~。渋い校長先生にも会えるから、変えてもらえるように交渉するつもりだからね~。まだ部室は完全にここに決まったわけじゃないからここで騒いじゃダメよぉ」とか書いてあった話をしている。


 俺がこの文を見た時には校長に会いたいだけだろと思ったけど、たしかに仕事をする場所でたむろされると嫌かもしれない。

 でも俺たちの部活動に関わること以外でまともに仕事している所を見たことがないんだよなぁ。


 「集まるなって言われたけどー。部活を始める前には普通は一度は部室に集まるものよねー。今だとメンバーがほとんど1-5クラスに所属しているから部室に行かなくても話はできるけど、東三条さんはクラスが違うしねー」


 せっかくの部活動なんだからやっぱり部室で一度集まりたいよね。


 「あたしが休み時間にあまちーに放課後にどうするのか連絡したら、部室に机とか椅子とかみんなが座れるように搬入してくれるって言ってたよ。まだ搬入してる所かもしれないからお菓子でも買いに行って、ダンジョン攻略道創部パーティーを部室でしようよ!」


 猪瀬さんの言葉に一瞬『?』っとなるが、同じクラスではない部活のメンバーだと東三条さんのことだろう。

 ひがしっち呼びからあまちー呼びに変えたのかな? 


 たしか猪瀬さんは自分のことを名前で呼んでほしいと東三条さんに言ってたし、ニックネームも名前の方にしたのかな。


 俺のことをあおっちと呼んだ後に、ひがしっちだと似ているからどうなんだろうとは思っていたから、似ているニックネームじゃなくなってわかりやすい気はする。


 てか桃井先生が部室でたむろするなって連絡をして来ているその日に部室でパーティを提案する猪瀬さんは流石だと思う!


 「じゃあ、買い物にでも行こうか。パーティとかあんまり経験がないから楽しみだ」


 そして俺と同じくらいボッチ発言をする水戸君。

 自分から話の輪に入れないとそうなっちゃうよねぇ。


 「東三条さん一人で机の搬入だと悪いから、手伝いに行ってその後で皆で買いに行かない?」


 東三条さんが机や椅子を準備室に搬入しているのに、それをほっておいて買い物に行くのは気が引けたので、先にみんなで部室に行って手伝ってから買い物に行こうと俺は提案する。


 「たしかに! 今も搬入してくれているなら早く行った方がいいね!」


 葉月さんも俺に同意してくれたようだ。


 「あ、それなんだけど、あまちーがやるんじゃなくて家の人? がやるって言ってたから大丈夫かも?」


 なるほど。

 東三条さんなら一人で学校の備品を運んで準備してくれそうなイメージが俺にはあるけど、そこはやはりお嬢様だからしないのかもしれない。

 いや、学校に東三条家の人を入れるということはもしかして学校の備品を入れているのではない可能性もあるのか。


 「それなら東三条さんも誘って買い物に行った方が良いんじゃないのかなー?」


 七海さんが東三条さんも一緒に買い物に誘おうという話をする。

 まあ創部パーティで買い物に行こうという時に、一人だけ学校に残って誘われないと仲間感がでないよね。


 「あ、そうだね。あたしが連絡するし」



 猪瀬さんが東三条さんに連絡をいれると、一緒に買い物に行けるそうで1-5まで来てくれるという返信があったようだった。




 


 俺たちは近くのスーパーで買い物を終えて下駄箱で履き替えると、桃井先生のいる別棟準備室……部室へ向かう。


 「家の者からの連絡ではすでに机と椅子の搬入は終わっているそうですから、ちゃんとした部室に変わっていると思いますわ」


 東三条さんが俺たちに机や椅子の搬入が終わったことを教えてくれるが、ちゃんとした部室ってなんだろう?


 「楽しみだねー」


 「うんうん!」


 「ダンジョン攻略道って言うくらいだから、武器とかをおける個別のロッカーみたいなのもあれば嬉しいな」


 水戸君は個別の武器を入れるロッカーがほしいと言う。


 「それでしたら今後部員が増える可能性も考えて20個ほどロッカーを備え付けてますわ」


 「それはありがたい。今はギルドのロッカーをレンタルしているからこっちに置けるなら嬉しい」


 学校では武器をそのまま学校に持ってきている人とダンジョンに行く時に家や寮にとりに戻る人、ギルドの貸しロッカーを借りている人と言うように結構違いがあったりするからね。

 

 でも桃井先生の仕事場でもあるから、24時間装備を取り出せたりはしないんじゃないだろうか?

 俺はそれが気になって話に混ざることにした。


 「でも部室に武器を置いておくのは良いとして、放課後にダンジョンに行って最大何時までなら確実に部室に入れるかとか時間制限があるんじゃない? 桃井先生が帰る時には鍵を閉めそうだし……」


 「ああ、そう言えばそういう問題もあったか。それを桃井先生に聞いてからギルドのロッカーはどうするか決めよう」


 桃井先生だと定時で帰るから17時で鍵を閉めるとかいいそうで怖いんだよなぁ。


 

 話をしながら歩いていると部室(準備室)に到着する。


 「私様わたくしさまも部室の内装を考えて指示を出しましたけれど、搬入してから中を見るのは初めてですから楽しみですわ」


 ガチャリ


 部室のドアを開けて中に入ると、前に見た部屋とは大違いで全く別の部屋のようになっていた。

 俺はその事を後から入ってきた皆と話そうとするが……、


 「あ、蒼月君! ちょ ちょっとなんなのよこれ。なんなのよぉ!」


 入室した俺を見つけた桃井先生がダッシュで走ってきて俺の足元に縋りつく。

 えぇ……。


 「すごーい。もう全く別の部屋だねー」


 「いやこれは流石におかしくないか? 部室というよりどこかの高級ホテルみたいな内装に変わっているんだが」


 七海さんは普通に驚いて、水戸君はこの内装は部室ではないと言う。

 

 「凄いね! でもこんな快適空間だとダンジョンに行く前に一服しちゃいそう!」


 「あたしはもうここに住みたいし」


 葉月さんは凄すぎてダンジョンに行くのが遅くなりそうと言い、猪瀬さんはここで住みたいと言う。

 

 準備室は元々かなり広かったのだが、それが今では絨毯が引かれていて高級そうな大きなソファが、凵 の形のように置かれている。

 さらにはシックなデザインのテレビとホワイトボード、そしてロッカーが設置されていて会議もできる仕様となっていた。


 「概ね指示通りに設置されているようですわね。向こう側のパーティションで仕切って空間を分けてあるところには、流し台にポット、電子レンジ、冷蔵庫もあるはずですわ」


 「それよ! 蒼月君なんとか言ってやってよぉ。パーティションで仕切られて私の仕事場が二畳くらいにされているのよぉ。広々空間から窓際部署に早変わりよぉ」


 足元に縋りついて来ていた桃井先生が東三条さんの説明を聞いて、俺に苦情を言ってくる。

 いや、俺に言われても困るんだが……。

 たしかに部屋自体は前より少し狭く感じたけど、ソファーのせいかと思っていたら物理的に部屋を3つに分けられてたんだね。


 「いや、先生。それは俺に言われても困るんですが」


 大体、ここをこんな高級空間にしたのは東三条さんなので、俺に苦情を言われても困るのだ。


 「蒼月君。貴方にわかるかしらぁ? 急に黒服の屈強な男たちが何人も来て貞操の危機を覚えていたら部屋がどんどん様変わりして行って、最後はパーティションで区切られて狭い場所にお払い箱されたのよぉ。怖くて直接に言えるわけがないじゃない」


 俺に縋りついて会話している時点で東三条さんには丸聞こえだと思いますけどね。

 俺たちがそんなことをしている間に、七海さんたちは流し台のある場所……給湯室とでも言えばいいのだろうか? の見学をして、さらには隣の桃井先生の仕事をするところを開けて見ていた。


 チラッと俺にも見えたが、そこだけ前のまま変わらず机と椅子が置かれただけの殺風景な感じで七海さんたちもこれはまずいとそっと閉じていた。


 「ほらぁ! 今の見たでしょぉ! こんな絨毯がひかれて高級な室内になっているのに私の仕事場だけあれよ、アレ!」


 だから俺に言われても困るんだよなぁ。

 俺は縋りついて来ている桃井先生を見ると、なんだかチワワ犬のような小動物に思えてきて、頭に手を当ててナデナデしてみる。


 「ちょ、ちょっと止めなさい。先生の権威がなくなるでしょぉ」


 先生の権威……、そんなもの最初からなかったような……。

 俺は憐憫の目を桃井先生に向けて話しかける。


 「ほら、先生も。もうみんな座って創部パーティーの用意が出来ていますから。ジュースで乾杯する時の音頭をとって下さい。部活を先生が仕切っていることを皆に見せれば、権威を示せます」


 「そ、そうね。仕方ないわねぇ」


 桃井先生はそう言うと、既に皆が飲み物を用意したりして準備が終わっている場所に行くと、急に元気になって俺に早く来いとジェスチャーする。



 

 「では皆コップを持ったかしらぁ? ダンジョン攻略道がここに創部されました。かんぱーい!」


 桃井先生はそう言って皆を見渡すと、ノリノリで音頭をとって乾杯をした。

 さっきまで泣いていたのは何だったの?


 「「「かんぱーい!」」」


 

 皆で楽しく飲んだり食べたりして騒いでいると、東三条さんが昨日のダンジョンの話と俺の父さんがダンジョンの近くで倉庫を探していると言っていた話をする。


 「七海さんも葉月さんも13階層から16階層までを1日で物にしてしまうなんて凄いですわ。私様が挑んだ時は3日がかりで野営もして散々でしたのに」


 「あはは。私たちには蒼月君や蒼月君の家族がついているからねー。いずれは野営の練習もしないといけないんだけどねー」


 「そう言えば蒼月君。蒼月君のお父さんが探していたダンジョン付近の倉庫なんですけど、お父様に話をしたらウチの持っている所を格安で貸しても良いとのことでしたわ。なんでも蒼月君を育てた親の顔が見たいとかで、私様がちゃんと良さをアピールしておきましたわ。今日の夜にでも熨斗から一度連絡が行くと思うので伝えておいてほしいですわ」


 ……東三条さんのお父さんが言う、親の顔が見たいって俺が礼儀や常識に欠けているから、育てた両親の顔が見たいって言う呆れに使う言葉だよね。

 東三条さんが良さをアピールしてくれたと言っているから大丈夫だとは思うけど、結構おかしな発言を東三条さんはするからなぁ。

 でも倉庫を貸してくれるという話なら、両親のことは悪く思っていないのかもしれない。


 「ちょっと、蒼月。日曜日はたしかに僕と猪瀬は休憩日って話になって七海さんや葉月さんは蒼月のパーティと潜るって話は聞いていたけど、東三条さんもいたのか? それならもう部活みたいなもんだし僕たちも参加していいかな?」


 「ほんとだし! あまちーなんであたしをハブったん? BFFBest Friends Foreverだと思っていたのに悲しい」


 「BFFってなんですの? そ、それよりハブってなんていないですわ」


 東三条さんが俺をチラチラ見ながら猪瀬さんにBFFが何かを聞きながらハブって無いと言っているけど、こっちを見ていたら逆効果じゃないかな?

 俺が水戸君と猪瀬さん以外を誘ったように思われるじゃん!

 それに東三条さんがハブるに対応できたことに驚きだよ。

 ちなみにBFFはベストフレンズフォーエバーで永遠の親友という意味だと思います、まる。



 「あまちーにハブられた。。。 ちょぉ信じていたのに。。

 ゥチのことゎもぅどぉでもぃぃんだって。。。

 どぉせゥチゎ遊ばれてたってコト。。。。

 もぅマヂ無理。。。オカシ食べょ。。。」



 猪瀬さんが急にギャルネタを言い始める。


 「あ、蒼月君!? ど、どうすればいいのかしら!?」


 だから俺が裏で暗躍しているみたいな感じで言うの止めてくれー。

 こうなると仕方がない。

 桃井先生も含めてちょうど契約魔法を覚えたこともあるので、3人の意思を聞いてみるか。


 「あー、猪瀬さん? 東三条さんは別に猪瀬さんをハブったわけじゃなくて……、水戸君と桃井先生にも聞いてほしいことなんだけど、俺っていうか今だと俺と七海さんと葉月さん、東三条さんも含めて結構秘密があるんだよね。それを話すのは良いんだけど他の人に言われたら困るから、契約を結んでくれたら話すよ。七海さんたち3人もそれを結んでいるからしゃべれないだけなんだ」


 「蒼月君の秘密ねぇ……。それは強さに関してってことよねぇ? でなければ、東三条さんに勝ったりダンジョン探索部に勝てるはずがないものねぇ。ここまで巻き込まれていたら仕方がないから私は良いわよぉ」


 桃井先生はあんなにアホそうに見えてアホ毛まで揺らしているのにまさか薄々気が付いていたなんて! チョロいと思ってごめんなさい。


 「ど、どういうこと? ダンジョン勝負はあたしもいたし、おかしい所はなかったよ!?」


 「猪瀬さん……。貴女を担いで魔物を倒しながらダンジョンを進める人がどれだけいるかわかっているのぉ? 11階層を人一人をおぶって戦うって冴木先生クラスの所業よぉ」


 「あ、あおっちそうなん!?」


 「普通に話していたからレベルが上がればそんなものかと思っていたけど、先生が言うなら違うのかな。それなら僕もその契約を受けるよ」


 桃井先生の話を聞いて水戸君も契約を受けてくれるようだ。

 その二人から猪瀬さんは見つめられて……。


 「あまちーの言ってた話も気になるし、あたしも良いよ」


 俺は3人が契約魔法を受けることを同意した事を確認して、契約魔法を放つのだった。







 ――――――――――――――――――――――――――――

 本文外。読まなくても問題ない所です。

 スーパーの買い物の場面を省いたのに……長くなってしまった……。

 ここまで読んでくれている方、応援をして下さる方、フォロー、☆、レビュー、サポの皆様に感謝します。

 ちなみに、箱庭(矜一が持っているリング)は強敵と出会った時に負けて使いさらに強くなって倒す予定でしたが、その話は消して変更した(二章ラストでそれにするか迷った話)ので本当に危ない強敵が出るまでは出てこないと思います。

 箱庭ゲットはS級の魔石を手に入れる必要があるのでまだまだ先です。

 2ヶ月あの箱庭はまだ使えるよって感じです。

 幼馴染との最終的な関係はまだ未定です(レビューには返信ができないのでとあるレビュー2つへの回答です)

 また、もう一つレビューを見て&この話を書いていて思いついたことがあったので下に書きます。


『ざまぁが……されるのを……ずっとまってた……

 でも……もぅつかれちゃった……

 でも…… これじゃぉ話が進まなぃって……

 読者ゎ……ぉもって……結構まった……

 でも……それ以上に……ざまぁするまでが……長ぃょ……

 バカ……早くして……

 でも……作者と読者ゎ……ズッ友だょ……!!』


 成り上がれは最初から1章終りまで読んで展開される話で構成をして考えていたので、後でWEB小説ではざまぁを早く、主人公は負けてはいけないとかを知っても構成を変える事ができませんでした。

 自分のよく見る漫画やアニメが少年誌的な展開ということもあります。

 皆さまにはこれからも応援をしてもらえれば嬉しいです。

 次回は登場人物紹介を挟んで四章になると思います。




 





 

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