第126話 護衛の人選を間違えてない?

 次の日の日曜日。


 何時ものメンバーとダンジョンに行こうとダンジョン前に家族で行くと、日曜日なにの先週と同じくなぜかここにいて七海さんと葉月さんと話をしている東三条さんと目が合った。


 まあ俺たちのことを話せなくなる契約はすでに結んでいるし、一緒に攻略をするのはこちらも望む所ではあるのだが、東三条さんって休日は護衛のチームと一緒にダンジョンダイブをしてると言っていたような?



 「ごきげんよう。蒼月君」


 「ごきげんよう。東三条さん」


 俺たちがにこやかに上流階級の挨拶を交わしていると、気にはなっていたがスルーをして見なかった事にしていた黒服集団のうちの二人から俺に対して威圧が掛かる。


 俺は溜息を吐きながら、仕方がないのでそちらを見ると……、東三条さんの運転手ともう一人初対面の黒服さんが俺に威圧をかけている。

 東三条さん! あそこに無礼な人が二人もいますよ! ドナドナした方が良いんじゃないですかね!?


 そう思って俺は東三条さんを見ると、今度は父さんと母さんとの3人で談笑していた。

 今宵はキィちゃんやマコト達の中学3生組の場所へ行ってこちらも話をしている。


 いや、全員わかっているだろ!

 直接威圧をされていなくても、少なくとも俺の家族は確実に俺が威圧を受けていることをわかっているよね? 

 特に魔力感知を持ってる母さんと今宵! 何でスルーなの!?


 「蒼月様、うちの者がすみません。お前たち威圧を止めろ!」


 俺が困惑していると、いつものリーダーっぽい黒服さんが二人を注意する。

 いいぞ! もっとやれ! 俺はリーダー黒服を心の内で応援する。


 「ああ、ありがとうございます。えぇ……っと」


 「ああ、申し訳ありません。私は護衛部門を統括している熨斗のしと申します」


 東三条さんといると良く会うこの人は護衛部門の統括者か。


 「熨斗さん? あっ……。そう言えば紹介がまだでしたわね。皆さんこちらに来て下さる?」


 東三条さんが護衛を呼ぶと黒服の男が三人、スーツ姿の女性が二人こちらにやって来た。

 というか、一人以外は東三条家で見た事がある人達だ。

 東三条さんがこの5人を呼んだ事で今宵たちもこちらにやって来る。


 「蒼月君はもう何回か会っている人もいると存じますが、皆さん紹介をお願い致しますわ」


 東三条さんがそう言うと、一列に並んでいてリーダーだろう護衛統括の熨斗さんが1歩前に出て話し始めた。


 「熨斗のしです。東三条家では護衛統括をしています。ダンジョン活動でのパーティではお嬢様に次ぐ副リーダーをしています」


 熨斗さんはそう言うと、一歩下がり列に戻った。

 そして次の……態度の悪い運転手が一歩前に出る。


 「俺の名は仙道! 神仙しんせんみちきわめんと熊野の蓬莱ほうらいよりお嬢様の元へと馳せ参じた次第…「仙道さん?(怒」」


 仙道さんは患っているのかな? 

 名前をかっこよく紹介しようとして、普通は仙人になるには修行をするために蓬莱……霊山へ登って修行をするはずが、逆に降りて来ちゃってるんですけど!? 

 しかも熊野からってことは和歌山県出身なの? 

 旧国で言っている場合は紀伊国は……和歌山県と三重県からなっているので、三重県の可能性もあるのか? 

 てか、わかりにくいわ! 出身とか聞かなくても良いけど、どっちの県かモヤモヤするぅ。

 しかも自己紹介の途中で東三条さんに怒られて終了してるし……。


 「せ、仙道の悪い癖が出てしまったようですわ」


 「すみませんお嬢様」


 いやその人態度悪いから! 

 お客様に威圧かけて来ますから! 

 しかも職務中に東三条さんにMeTubeを進めて来てたって言ってたよね? 

 解雇が妥当だと思いますよ!


 俺が内心で罵倒を飛ばしていると、東三条さんの目線で仙道さんは下がり、次の……先ほど威圧をかけてきたもう一人が一歩前に出る。


 「俺は坐間。お嬢様の護衛兼ダンジョンでのパーティでは斥候もしている。俺に索敵で勝てると思うなよ」


 えぇ……。態度が悪い人その2なんですけど……。でもこの人たちは、バーゲストを相手に無傷じゃないって東三条さんは言っていたんだよなぁ。索敵でも負けるとは思えないけど……。


 東三条さんって猪瀬さんに馴れ馴れしく呼ばれた時もそうだけど、仲間に対して心が広すぎる気がするよね。


  「そこぉ!」


 唐突に坐間さんが俺の後ろの空間に威圧をかける。

 俺は振り返って後ろを見るが特に気になるものは何もない。


 「ふっ。君は今りつかれていた。な? 俺の勝ちだろ」


 ?? 幽霊ゴーストがいたとでも? 

 何もいなかった自信はあるが、念のために俺は魔力感知の一番高い今宵を見る。

 今宵と目が合うと、今宵は首を横に振った。


 やべぇよ。

 仙道さんは仙人の修行なんたら言っていたし、坐間さんはスピリチュアル電波さんだよ。

 でも俺は大人だからノリについて行ってあげるかな。


 「す、すごい! 霊を払ってくれたんですね。昨日ゴーストを倒しすぎたせいで憑かれていたのかもしれません!」


 俺が大げさに驚いてお礼を言うと、坐間さんは満足したのか頷いて下がっていった。


 母さんが何となく俺を見てる気がしたのでそちらを見ると、「矜一モルダーあなた疲れているのよ」という視線を向けられていた。




 次はいつぞやの東三条家へ訪問した時に、俺の背後をとって移動しなかったスーツ美人が一歩前に出て自己紹介をする。


 「沢城 芽里めり です。使用人兼暗さ……請負人です。よろしくね」


 何の請負人なんだろうなー。

 俺の背後をとっていたのって、タマをるためじゃないよね?

 会話をするために横か前に来てもらおうとしたのに、頑なに背後から動きませんでしたけど! 

 私メリ―、今あなたの後ろにいるのってね。


 そして最後の一人、東三条家の屋上で東三条さんについて来ていた……たしか花沢さんだったかな? が前に出る。


 「花沢 加奈かなです。使用人兼お嬢様のパーティではヒーラーをしています」


 5人の自己紹介が終わる。

 しかし東三条さんのパーティって熨斗さんと花沢さんしかまともな人がいなさそうなのは大丈夫なのだろうか。

 というか、この人たちがいるということは東三条さんは俺たちではなくこの5人とダンジョンに潜るけど、たまたまダンジョン前で会ったから紹介という感じなのかもしれない。



 「父さん今日はチームはどう分けるの?」


 俺は今日は昨日にキィちゃん達の親御さんへ父さんが話をしに行ったことから、何か分け方を考えている可能性を考えてチーム分けを聞いてみる。


 「あ、ああ。そうだな。昨日いなかったメンバーを16階層までと思っていたんだが……」


 父さんはそう言うと東三条さんをみる。

 東三条さんが俺たちと行くのか、護衛たちと行くか分からないからだろう。


 「まあ! 16階層にはもう行かれたのですね。16階層はウチの者が得意だから案内をすると言って聞かないので、今日は連れて来たのですが……」


 いや、俺たちの秘密を喋れなくなっているとはいえ、護衛の方々が一緒だとこっちが困るんだけども。

 俺はそう思い、東三条さんに手でジェスチャーをして呼び寄せる。


 そして内緒話をしようと顔を近づけて耳元で話そうとすると、


 「ちょ、ちょっと蒼月君。ち、近いですわ」


 東三条さんはそう言うと、俺から離れてしまった。

 うーん。内緒話をしたいから普通の距離では困るんだが……。


 「じゃあ少し向こうで話せる?」


 「わ、わかりましたわ」


 俺はそう言うと、みんなから離れて東三条さんと話をする。


 「16階層って言うけど、紹介してくれた人たちは空間魔法が使えるの?」


 「? いいえ、使えませんわ」


 「それだとどういう方法で16階層に行くつもりだったの? 俺たちは転移するけど、それを東三条さんのパーティには知られる訳にはいかないんだけど」


 俺がそう話すと、東三条さんは忘れてたという様な表情をする。


 「そ、そうでしたわね……。では彼らには帰ってもらいますわ」


 東三条さんはそう言うと、5人の所へ行って帰るように促した。


 「しかしお嬢様。16階層に行くならどちらにしても我々もいた方が安全なのでは?」


 熨斗さんが安全のために自分たちもついて行くべきではないかと進言する。

 安全面を考えれば確かにそうなんだけど、ダンジョンパーティの人数もあるし、16階層まで普通に移動するとなると半日くらいかかってしまって、まともな探索ができなくなってしまう。

 

 「それは蒼月君もいますし、大丈夫ですわ」


 「わかりました。では我々はダンジョン近くで待機しておりますので、戻られたらご連絡ください」


 熨斗さんはそう言うと、近くのファミレスで時間を潰そうという話を他の護衛の人たちと話している。


 「熨斗さん~ノシバイバイ


 ……今宵がなぜか古いネット用語を口にする。

 しかも実際にはネット用語で顔文字と組み合わせて書かれたりするものなので、ノシのしとは読まずに手を振っている動作を表す表現を口でハッキリとノシと言ってしまっている。


 熨斗さんは理解ができずなんで二度呼ばれたのだろうという表情をしながら移動していく。

 仙道さんは「プハッ」ッと笑い、坐間さんはニヤニヤしながら移動していった。

 あの二人は理解したようだ。

 まあ職務中にMeTube見る人だから気づくよね!


 というか、護衛のみんなは東三条さんが戻ってくるまでファミレスで時間を潰すの!? 仲良いな!


 今宵は今宵で二人にウケたことに満足したのか、ウンウンと頷いていた。

 あれだろ? 今宵は護衛の二人がノリが良かったからやったんだろうけど、熨斗さん相手には滑っていたからな?


 


 「しかし、16階層に行けていないメンバーが5人か。俺か矜一が一人で引率というのは安全面で厳しいか?」


 うーん。

 初見ではないので行けないこともないとは思うけど、13階層のリビングアーマーからとなると一人一人が対応できるまで戦って移動して行く場合は、時間的にも厳しいし俺の目も行き届かない気がする。


 「今回は12人でレイドを組んで13階層から行った方が良いかもね」


 「無理をする必要はないか。じゃあそれで行こう」


 今日の予定が決まり俺たちは12人という大人数で13階層に飛ぶと、戦ったことがない人が優先的に敵を倒して戦いながら、最終的に16階層の無限部屋でレベ上げをして1日が終了したのだった。


 さすがに12人だと無限沸きの状態にはならず、休憩しながら倒すことになったのだけど、東三条さんはゲームのような沸き状態での対戦が楽しいらしく無限部屋を気に入ったようだった。


 今宵も昨日は無限沸きを楽しんでいたし、二人は気が合うのかもしれない。






――――――――――――――――――――――

本文外。キャラが多く出ましたが、名前は特に覚えなくても大丈夫です。

コイツらわけわからないな、しかもファミレス行くのかよ! みたいなノリでお願いします(ノシ •ㅅ•)ノシ


東三条さんがいる関係でちょい役での出番が割とある可能性があるので、紹介として出しておきました。スタンピードなんかが起きて最終局面の場合には、この人たちがここは任せて先に行けってやって逝く人達かもしれません。


 


 

 

 


 

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