第119話 両親

 父さんが会社を辞めた(実際にはまだ有給中だが)次の日。

 今宵は学校があるが、父さんと母さんは家にいるために今回は3人でダンジョンに潜ることになって、ダンジョンにやってきている。。


 昨日の家族会議では契約のスクロールの重要性も話し合われた。

 俺から話を聞いていた2人はそれぞれ独自に付与や契約に関係する訓練をしていたようなのだが、自然に会得するのを待つよりも一刻も早くスキルなり魔法なりで代用するべきだろうという結論になったのだ。


 幸い全員がそれを得るために独自で訓練をしていたので、壁を超えた時に出る可能性も高い。

 最近ではレベル上げよりも動き方や魔獣への対応の方の訓練を多くしていたのだが、レベルが21になるまではレベ上げを優先しようという話に決まって今に至るというわけだ。


 「矜一、俺たちは先週の日曜日に13階層までは攻略しているから、14階層から探索しよう。11階層のトラップ部屋でもずっとやれば上がるような気はするが、最近はレベルが上がることも無くなっている。敵のレベルが低くなりすぎているのかもしれない」


 父さんから先をどんどん進んでみようという提案を受ける。

 今までは安全第一だったが、レベルを上げるという面で見れば確かに俺はここの所ずっと停滞していた。


 「わかった。じゃあ14階層に飛ぶね」


 俺たちはそんな会話をすると14階層へ移動する。


 「矜一でもヘルハウンドは最初は1撃で倒すのが無理だったのよね? 少しお母さんたちにも試させてもらえる?」


 「もちろん。もう少し行くとヘルハウンドが二匹いるみたいだから、一匹ずつ試してみて」


 「おう」 「わかったわ」



 「お、来たな。よいしょっとぉ!」 「ウインドカッター」


 父さんはヘルハウンドを視認した後に相手が飛びかかってくるタイミングに合わせて、バスターソードを持ち上げると一気に振り下ろして真っ二つにする。


 母さんはヘルハウンドが飛びかかってくる前には既に魔法を発動していて、これも真っ二つにして瞬殺していた。


 家族内で一番弱そうなのがもしかして10ヶ月も修行した俺なの!? 

 魔法やスキルを沢山持っていても使いこなせていない典型が俺か……。

 もっと頑張らないといけないな。


 「矜一に話を聞いていたから難しいと思ったが、そうでもないな?」


 「そうね。これなら集団で来ても対処できそうよ」


 ……。


 「じゃ、じゃあ15階層を目指そう」


 「おう」 「行きましょう」


 父さんと母さんがヘルハウンドを特に問題なく倒せるのを確認した俺たちは、15階層へいける魔法陣を求めて端末で地図を見ながら進む。


 「矜一、空間把握はどんな感じだ? 隠し部屋なんかも気にしながら頼むぞ。部屋が続いてあったりする場合も怪しい。そういう所があれば一度見てから行こう。レベ上げポイントを探すのも重要だしな」


 「了解。でも今の所はそう言うのはないみたい。今までの感じから本道からそれないとないのかもしれないよ」


 「それもそうか。それならとりあえずは今宵が合流する午後までは階層移動をして、その後にもう一度探しながら上がるようにするか」


 「うん。それが良いと思う」


 俺たちは進路上の邪魔なヘルハウンドだけを倒して14階層を進んでいく。

 しばらくして15階層への魔法陣を発見した俺たちは15階層へ足を踏み入れるのだった。


 「15階層はハイオークとオークの集団がでるんだったか? 」


 「だね」


 「ふむ。それならハイオークを全員でストックしておいて今宵のマジックバッグでギルドと買取所へ持って行ってもらって4匹、矜一が企業買取に3匹持って行けば午前中だけでかなり稼げるな」


 「お父さん恭也さんハイオークはいくらになるんですか?」


 「たしか……ミノタウロスと同じで綺麗な状態なら1匹が50万だったかな? 味はミノタウロスの方がまだ上みたいだが、高級ブランド豚ぐらいには味も美味しくなるって言われていたはずだ。買取が高いのは10階層なら日帰りも可能だけど、15階層だと1泊が前提になるかららしい」


 「そうなのね。1泊かけてもマジックバッグがあったら、ミノタウロスと違って確実に狩れるわけだからそれだとハイオークはかなりお得ね」


 ふむふむ。

 オークで美味しいと思っていたけど、ハイオークだと金銭的にもっと美味しいのか。

 俺たちみたいに階層移動ができたら相場が下がりそうな気がするけど、その辺は大丈夫なのかな。

 まあ……父さんが独自に直接企業なり料理屋さんに売れば需要はいくらでもありそうだから問題はないか。


 「あ、敵がいるみたい。たぶんハイオーク1、オーク4かな?」


 「ほー、結構な集団だな。ハイオークは任せてくれ。咲江さんは周りのオークを頼む」


 「はいはい。わかりましたよ」


 父さんと母さんはそう言うと、ハイオークの集団に向かった。

 父さんは進路上に現れたオークを一体倒すと、そのまま奥で指揮をしているハイオークに向かう。


 「ウインドカッター!」


 父さんが後ろに抜けたことで残りの3匹が父さんへ向かおうとするが、そこに母さんが魔法を放つ。

 スポポポンッとでも言うのだろうか?

 放たれたウインドカッターはオークの首をブーメランのように動き3匹の首を落としたのだった。

 いやどうやっているの? 

 単発の魔法のはずなのに、範囲攻撃みたいになったんだけど!?


 「よいしょっー!」


 ガンッ


 父さんはハイオークと切り結ぶ。

 父さんでもハイオークは1撃とはいかないようだった。


 「ふむ……。身体強化アビリティライズ


 少し手こずると感じたのか、父さんは無属性魔法のアビリティライズ身体強化を使った。

 スキルの身体強化と無属性魔法の身体強化アビリティライズの重複効果を得た父さんは、それまで切り結んでいた攻撃をかわし始め、後ろに回るとジャンプをして上からバスターソードをハイオークの首を目掛けて振り下ろす。


 完全に死角から無防備な首を狙われたハイオークは首を切り落とされて、ハイオークとオークの集団との戦闘は終わったのだった。


 「母さんさっきのあれってどうやったの? 軌道が変化してなかった?」


 「ああ、あれね。あれは今宵ちゃんが魔力を込めれば威力が上がるって先週の夕食の時に言っていたでしょう? まずそれで魔力を多く込めて攻撃後も消えないようにしてから、なんて言うのかしら……魔法は撃ってもその軌道上に魔力の残滓が残っているから、 それを意識して動かせば魔法の軌道もかえれたのよ。それの応用ね」


 母さんのこの魔法の応用の仕方は……、東校で習った魔法の使い方とは全然違う。

 これって魔法やスキルの使い方も勝手に俺たちが使い方を決めてしまっているだけで、実はもっと多くのことができるのでは? と、俺はこの時に気づかされたのだった。


 




――――――――――――――――――――――――

以下本文外、3人のステータスです。


<名前>:蒼月 矜一

<job> :魔法剣士

<ステータス>

 LV  : 20

 力  :B

 魔力 :B

 耐久 :B

 敏捷 :B

 知力 :C

 運  :D

 魔法 :生活魔法5、基本属性魔法(火2・水2・風2・土2・光2・闇2・無2)、回復魔法1、空間魔法3

 スキル:剣術4、体術3、槍術1、杖術1、危険察知2、気配察知3、気配遮断1、空間把握2、魔力制御3、ステータス偽装2、孤独耐性1、暗視1、身体強化2、思考加速1、疲労耐性(NEW)



<名前>:蒼月 恭也

<job> :剣士

<ステータス>

 LV  : 20

 力  :B

 魔力 :C

 耐久 :C

 敏捷 :C

 知力 :C

 運  :C

 魔法 :生活魔法7、空間魔法2、基本属性魔法(火・水・風・土・光・闇・無)

 スキル:ステータス偽装1、気配察知1、剣術3、身体強化1



<名前>:蒼月 咲江

<job> :マジシャン

<ステータス

 LV  : 20

 力  :D

 魔力 :B

 耐久 :C

 敏捷 :C

 知力 :B

 運  :C

 魔法 :生活魔法8、空間魔法2、基本属性魔法(火2・水2・風3・土2・光2・闇2・無2)

 スキル: ステータス偽装1、魔力感知1、魔力制御2、身体強化1、

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