第109話 活動内容が被っているんだ
今週は今宵のマジックバッグを買ったくらいで特に何もなく迎えた金曜日の放課後、俺と七海さんはダンジョン攻略道のことで話があると生徒会室に呼び出されたので向かう。
コンコンッ
「失礼します」
七海さんはそう言うと生徒会室に入ったので俺も続いてはいる。
そこには生徒会のメンバーの他に桃井先生と別の教員、そして上級生らしき人が二人いた。
「七海さんに蒼月君。来てくれたのねぇ。先生、面倒ごとは嫌っていったよねぇ?」
桃井先生が俺たちを非難してくるが何のことかわからない。
ゴホンっ
生徒会長が咳ばらいをして話し出す。
「今日君たちに来てもらったのは部長会議で活動内容が被っているのに、部活に昇格するのはおかしいという苦情がダンジョン探索部から出てな。それで両者の顧問と部長、副部長に集まってもらったわけだ」
なるほど。
たしかに部活名を決める時にダンジョン探索部って名前はもうありそうだってことで検索したらたしかあったっけ。
「そうだ! すでに同じ活動をしている部活があるのにもう一つ出来てしまえば部費も分散されることになる。それはおかしいだろう!」
ふむ。
ダンジョン探索部の部長さんかな?
そりゃこっちが加入申請した時に簡単に入れるなら良いが、実際には1-5クラスは差別を受けていた。
ここは七海さんではなく俺がまず反論するかな。
部長ではなく先に副部長の俺が言うのにも意味が勿論ある。
もしも俺が反論に失敗した場合でも、副部長の言う話というのはそれは部の意見の一つにすぎませんと言って上の部長が出れば話し合いは継続できるからだ。
「同じ活動をしている部活があると言いますけど、1-5クラスからの申請は簡単には受け取ってもらえなかったはずです。部活をする権利があるのに、そもそも断られて入部ができないのなら同じ活動をしていても、もう一つ部活動は必要だと思いますが?」
「なんだと貴様! 1-5クラスのような落ちこぼれがダンジョン探索部に加入してみろ。そいつらに足を引っ張られて部全体がまともな活動ができなくなるんだぞ。断るのは当たり前だろう!」
「ですから、断られれば部活動をしたい人は他の部活に行くしかないですよね。そしてやりたい活動がある。なら別の同じ活動をしている部活があれば、それが受け皿になるわけです。活動内容が同じ部活があっても問題ないと思いますが?」
「だからそれが無駄だと言っているだろう! まともにダンジョン探索も出来ない落ちこぼれたちが何を偉そうに」
「偉そうなのはそちらでは? こちらがまともにダンジョン探索ができないと言う言い分も単なる決めつけです。むしろダンジョン探索部の方が最初から物事を決めつけてレッテルを貼るような判断力では、まともにダンジョン探索ができるとも思えませんね」
「貴様……!」
「はは。今年の1年生はほんとうに生きが良いな。東三条がそちらの部活動に参加をするからかな? たったそれだけのことで、こちらに大きく出られる事が不思議でしょうがありませんよ。桃井先生? 貴女の教育はどうなっているのでしょう?」
ダンジョン探索部の顧問と思われる男が口を挟む。
「ちょ、ちょっと蒼月君~? 私の立場が悪くなりそうじゃなぃ。どうなってるのよぉ」
俺は任せてくださいと無言で桃井先生に手を挙げると相手の顧問に話しかける。
「桃井先生の俺たちに対する教育がどうなっているのかと言うのなら、それこそブーメランではないのでしょうか? なぜならそちらは指導した結果、まともに考える頭もなくなって物事を決めつけるような残念な部員が育っているようですし」
「貴様! それが教員に対する言葉なのか! 退学にしても良いんだぞ!」
……、さっきまで冷静そうに嫌みを桃井先生に言っていたのに、逆に嫌みを言われたら簡単に口調を崩して切れすぎじゃないの?
パンパンッ
「そこまでです原先生。そうか君が蒼月君だったのか。なにやら今は東三条を使って暗躍をしているみたいじゃないか。そこまで君も言うんだ。東三条がいなくてもダンジョン探索ができると言うことだろう? 君の言い分ならば、ダンジョン探索部と変わらないレベルでダンジョン内での活動ができるということになる。東三条を除いて……そうだなここにいる二人と前回きた頭が悪そうなギャルっぽく制服を着崩していたのを含めて3対3で時間を決めて、どこまで深くダンジョンに潜れるか競争をしてみては」
「き、君! いくら生徒会長だからと言って勝手に! 5人ならまだわかるが3人で潜って階層の競争などと!」
「原先生。たしかに3人でのダンジョンの探索は危険でしょう。ですがどちらが時間内に深く潜れるかを競争するだけです。相手も同じ条件です。ダンジョン探索部の部員なら安全に攻略ができても、東三条抜きの彼らなど相手にならないと思うのですがね」
「そ、それはそうだが……」
まず東三条さんを使って俺が暗躍しているってなんだろう?
ここ最近は東三条さんが忙しいと言うのは個人戦を放課後に申し込んでいる事が理由らしかった。
何でもすぐに同じクラスの3位で無敗だった男を倒した東三条さんは総合ランキングに載り、同じく総合ランキングに載ってきた二年のランキング1位を激戦の上に倒したそうだ。
そのあとは強いと言われて総合ランク入りをした人の全員に対戦を申し込んでいるのだと言う。
そして3年のランク1位が総合入りをした際に、今は戦う時ではないといって対戦の申し込みを断った事から3年が逃げたとして今は大きな噂になっているそうだ。
そう考えると俺は自分が良く頑張ったなと思う。
まあこれは七海さんや猪瀬さんに聞いた事なんだけどね。
今日も俺たちがここに呼ばれたことでダンジョン攻略道のメンバーは放課後にどうするかって話になって、東三条さんの対戦の応援をしに行っているはずだ。
いやまあ今はそんなことを思う時ではなかったか。
東三条さんの名前がやたら教員や生徒会から出てくるからつい気になってしまった。
ダンジョン探索での攻略階層勝負か……。
前回生徒会に来た制服を着崩したギャルって猪瀬さんのことだよね。
葉月さんなら勝てる自信はあったが、猪瀬さんとなると強さよりも階層移動をする体力が気になる所だ。
「蒼月君。君はどうだ? 君の言う勝手な決めつけという論が正しいのならば、この競争の対戦を受けても良いはずだが。まさかあれだけの口を聞いて受けないということはないんだろう?」
「ちょ、ちょっと蒼月君大丈夫なのぉ」
桃井先生が心配そうに俺に聞いてくるが……、俺は副部長であって部長ではない。
俺が先に出た方が良いかと思って発言をしたが、少し口が過ぎてしまったようだ。
七海さんの意見を聞かずに俺が暴走した感じになってしまっている。
「七海さん、ごめん。俺が勝手に発言したせいでこんな事になって」
「何を言ってるのかな蒼月君は。受けて立つに決まっているでしょー! 蒼月君があんなに熱く反論をしてくれたのに、私たちが対戦しないなんてありえないでしょう! それでその競争とやらはいつにするんですかっ!」
おお……さっきまで静かだった七海さんが、いつもと感じが違う様子で生徒会長に聞き返している。
「ふむ。では競争するということは成立ということで。どうせなら部活の認可を掛けて戦うべきだと思うのだがどうだろう?」
「やるに決まってるでしょー!」
「まさか、1年にこんなに舐められるとはな。こちらも勿論OKだ。同じ1年を出して競争させれば良いのかな?」
七海さんがもう競走馬かな? というくらい興奮し始めた。
結構アツくなるタイプだったんだね。
いつもは話し方がほんわかしてるからちょっと意外かもしれない。
「1年生ー!? いえいえ、こちらは部長と副部長が出るんです。ダンジョン探索部も少なくともお二人は出場してもらいたいですねー!」
……七海さんやー。
相手が舐めてくれているのだから、そこの部長と副部長よりも確実に弱い1年生が相手の方が良いんじゃないですかね。
しかしこれは勝負までに猪瀬さんには壁を超えてもらう必要が出て来たな。
「は? さすがに……煽りにしてもその言はいただけない。部活の認可が掛かっているのに、3年の俺たちが出ても良いというのはいささか舐めすぎではないだろうか。良いだろう。全力で相手をしようじゃないか。後悔をしないことだな!」
……。
「では日程についてなのだが……、生徒会でもこの件を長引かせたくはない。だから明日の朝からでどうだろうか。ちょうど土曜日ということで学校は休みだし……、生徒会から審判員として各チームに二人つけよう。生徒会は通常時は何もしないが合計で5人となり、もしもなにか不測の事態が起きた場合には戦闘に加われば安全性も確保できるだろう」
ちょ……。
これはまずいぞ。魔獣は俺と七海さんで対応するとしてもただ走るという、その行為だけで猪瀬さんは後れを取るはずだ。
さすがにここまで急であれば延期する事は可能ではないだろうか? 俺はそう思い口を挟もうとする。
「それ「わかりました。こちらはそれで大丈夫です」
「こっちもそれでOKだ」
……。七海さんが俺の発言を遮って承諾した。こうなってしまったら全力を尽くすだけだな。
こうしてダンジョン探索部との対戦が決まった俺たちは詳細を話し合い退出した。
その後に東三条さんの対戦を見終えて、東三条さんと一緒に戻ってきた猪瀬さんたちと合流した俺たちは生徒会で決まった話を伝えて作戦を考える。
ある程度作戦を考えてからは俺たちは猪瀬さんが壁を超える事を祈ってダンジョン探索に向かい、遅くまで活動をしたのだが結局壁を超える事はなく次の勝負の日を迎えることになるのだった。
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