第108話 マジックバッグ
放課後。
七海さんたちは俺と東三条さんを除く部活のメンバーで今日もダンジョンに行くようだ。
東三条さんからは午後の授業と授業の間の休み時間に学年ランキングの戦いはどうするのかという質問があったので、俺は申し込みがあっても受けないよと言うと「それならば
そうそう、連絡先もスマホの方にも登録をして良いと言ってくれたのでお互いに登録している。
というか部活動は桃井先生に聞いた所、正式にはまだ決まっていなかった。
基本的に同好会から昇格するのが普通らしいのだが、今回は東三条家の後押しもあり、外部指導員が必要であれば学校に寄越してくれると言う話と顧問も決まっているので生徒会と学校教員の認可はすでに降りている。
そこから全部活の部長会議で承認されれば校長が最後の決定を下すそうだ。
なので今は、部長会議の前までは進んでいる事になる。東三条さん的にはすでに部活動をしているつもりのようなんだけどね。
そして俺が七海さんたちとダンジョン探索に行かない理由は、オークを売り続けて1ヵ月以上が経ったこともありマジックバッグが買える資金が貯まったので妹と買いに行こうと思っているからだ。
ちなみに今宵もマジックバッグのためにお金を貯めていると言ってはいたが、俺と一緒の時は報酬が高いが、そうではない時は低いのであまり貯まってはいないだろう。
ダンジョン用品専門店の前で待っていると、今宵がやって来た。
「お兄ちゃんおまたせ!」
「おーってか、また今日もキィちゃんたちを連れて来たのか?」
「「こんにちはー」」
うーん。何千万という買い物をするところを妹の同級生がいる中でするの? 正気か!?
「いや今宵よ。今日はなにを買うかわかっているのか? 値段的に友人に見せるものじゃないだろ」
「えー、でもいずれは二人も買うことになると思うしその勉強だよ」
まあ確かにいつかは必要になるかもしれないけどさぁ……。
「それにダンジョン関係のことはもうほとんど二人は知っているんだし、金額だってどうせわかるんだから」
高額商品を友人の前で買うって事がだな……、いやまあ良いか。
「わかった。じゃあ入るぞ」
俺たちは店に入った。店内は結構賑わっているようだ。
今回は買うものが決まっているので俺は店員に声をかけた。
「すみません。マジックバッグを買いたいんですけど」
「はい。いらっしゃいませ。マジックバッグですね。それですとこちらです」
店員に案内されて行くとガラスケースにいくつかのマジックバッグが置かれていて厳重に鍵がかけられていた。
さすが高額商品と言った所だろうか。
「おー。タイプが結構ある!」
今宵はそう言うと、ガラスケースに張り付いた。
キィちゃんとさっちゃんもそれに続いて行く。
たしかに種類が結構あるな。
リュックタイプ、ショルダーバッグタイプ、メッセンジャーバッグタイプ、デリバリーバッグタイプ、ウエストポーチタイプ、ボディバッグタイプ、そしてドラムバッグ(スポーツバッグ)といった感じかな?
メッセンジャーバッグタイプはファッション性が高く自転車に乗って颯爽と移動する姿はカッコよさそうだ。
まあショルダーバッグの一種ではあるけどね。
デリバリータイプは自立する形状で安定性が高い。
ウーバー〇ーツの配達員が背負っているアレと言えばわかりやすいかもしれない。
ファッション性があって持ち運びに便利そうなのはメッセンジャーバッグかボディバッグ、ウエストポーチの3種類のように思う。
「これってバッグの大きさや入口の大きさで中に入る容量に違いがあったりしますか?」
というかウエストポーチやボディバッグなんてタブレットが入る程度の大きさしかない。
まあ大きいやつでも小太刀が入るか入らないくらいの大きさではあるんだが……。
「ああ、それは関係ありません。容量の方は値段が高いものほどたくさん入る仕様です」
俺が店員さんにバッグの大きさは関係があるのかと聞いてみた所、それは関係ないようだ。
「オークが何体か入れられるとなるとどれになるでしょうか? それと入れ方はどうすれば? 入り口があまりに小さすぎるので……」
「ああ、入れ方についてはマジックバッグの口を向けて視認してから入るように願えば入りますし、出す時はその逆をすれば大丈夫ですね。オークが何体か……ですか。となるとこの4500万前後の値段帯で3匹は確実にはいると思います」
……? 4,4500万!?
あれ?
1000万は最低価格くらいだから容量が低くてダメかもしれないとは思ったが、4500万だと既に予算オーバーなんだが?
今ある予算が3200万円でこれでマジックバッグを2個か3個買う予定だったのに……。
「オーク2体だと……どの価格帯になるでしょうか。ちなみに1体入るやつの値段帯も教えてください」
「2体ですか。それでしたらこの3100万付近の値段帯で……、1体だとそうですねこちらの1800万円台付近のものですね」
一応は容量が上がるごとに少し安くはなっているのか?
1匹タイプを買うのは明らかに損な気がする。
「今宵、3100万円付近の値段帯で良いのあるか? 俺としてはこのウエストポーチのやつがお洒落で両手もあくし良いかなと思うんだけど」
俺は値段の高さに固まっていた今宵に声を掛ける。
今宵も1000万くらいの商品を買うと思っていただろうからね。
まあそれでも車なら超高級車が買えちゃうけれど。
「ちょ、ちょっと待ってお兄ちゃん。ウエストポーチ!? キィちゃんさっちゃんちょっと会議」
今宵はそう言うと、キィちゃんとさっちゃんを呼んで何やら話はじめた。
「ちょっとどう思う? ダサいよね?」
「お父さんのセンスかなって」
「まー最近だとマシなのもあるけど……」
いや丸聞こえなんだが。
でもさっちゃんだって剣帯ベルトに付けられるポーション劣化機能付きのポーチをつけていたはずなんだが?
まあバッグよりもかなりコンパクトで見た目もそっちの方が悪くはないが大差ないだろ。
だいたいウエストポーチ愛好家に失礼じゃない?
「お兄ちゃん。ウエストポーチタイプはダメだよ。ちょっとセンスが疑われる!
こっちのボディバッグタイプにしようよ。それなら外套の上でも下でも付けられるよ」
「いや、センスは悪くないだろ? ポーションを入れるポーチだって似たようなもんだし、ほらコレ。2WAYタイプって説明にあるからボディバッグにもなるじゃん」
俺がそう言うと今宵はまた二人に目配せをして集まった。
「どう思う?」
「うーん……2WAYならアリかなとも思うけど……ありよりのなし」
「えー? 私はなしよりのありかな?」
何だコイツら呪文か?
『ありよりのなし』とか『なしよりのあり』ってなんだよ……。
「お兄ちゃん。会議の結果、有りよりの無しでなしになりました」
「……じゃあどれが良いんだよ。今回は今宵が持ち歩くやつだから選んでくれ」
「え? 今宵のなの!? やったー! じゃあコレ!」
今宵は声をあげるとボディタイプのマジックバッグを選んでいた。
いやほぼ同じじゃん。
俺が選んだのと。
たしかにシュッとし具合が違うか? うーむ。
「ではこのボディタイプでお願いします」
俺がそう言うと店員さんは手袋をはめ、ガラスケースのカギをあけてボディタイプのマジックバッグを取り出した。
「こちらの商品は……税込みで3410万円となっております。また登録者限定で使える事となっています。もしその方以外が使われますと、特別刑法に違反する事になりますので犯罪です。十分にご注意ください。では使用者の探索者証を……っとそうでした、東校の生徒さんだから大丈夫かとは思いますがギルドランクの購入制限もありました。この値段帯の商品ですとギルドランクDからとなっています」
はい、まず値段。
持ち金オーバーで買えません。
しかもギルドランクが今宵はGのはずなんだよなぁ。
俺だってEで買えない。
「あー、すみません。ギルドランクの事をしらなかったので……。ギルドで更新してDを超えていたらまたきます」
「そうでございましたか。わかりました。またのご来店をお待ちしています」
さすがに高額商品を取り扱っているとあって店員の教育は行き届いているが、お金が足りない事もギルドランクがかなり低いこともわかってそうだよなぁと思いながら3人を連れて退店した。
「今宵、いくら持ってる? こっちの持ち金が3200万で消費税分足りなかったんだけど」
「あんなに高いなんて思わなかったね。今宵はたしか150万円ならあったはず!」
なら今日オークを3匹狩れば金額的には明日には買えるのか。
しかしギルドランク……。
ギルドランクの話なんて完全に頭の中になかった。
オーク肉をギルドに卸せば早くランクは上がるはずだが、魔石以外は企業買取の方がほとんどだ。
とりあえず、ギルドランクを更新しに行ってみるか。
俺達4人はそう話すとギルドに向かったのだった。
そして俺たちは久々にギルドで決めたパーティ名のディスティーノを受付嬢から聞くとランクを更新した。
俺と今宵は魔石の量での貢献が凄かったらしくてあっさりとDランクに昇格した。
俺にいたってはCランクにも上がれる貢献ポイントがたまっていたみたいなのだが、Cランクからは試験があるために上がったのはDランクまでだった。
キィちゃんとさっちゃんのギルドランクも上がっていたらしく、Eランクになったと話していた。
俺達4人はその後に暇を持て余し、ダンジョンに入りオークを狩った後はライブ配信用の衣装に着替えて12階層で訓練したのだった。
ちなみに配信はしていない。
まあ、マジックバッグは明日には買えるし、店員さんに話を聞いて良かったなと思う1日なのだった。
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