第107話 昼食

 午前の授業が終わり食堂で七海さんたちと昼食を取りながら会話をする。


 「そういえば蒼月君、みんなの対戦数が少ない理由が分かったよー」


 「え? 何かやっぱり理由があったの?」


 「うんうん。学年掲示板を見ていたら正式ランキングが決まるまでの2週間は出る杭は打たれるらしくて、ランキングに載ったら対戦申し込みが一斉にきて潰されるらしいよ。部活動をしていたら1年生に対戦は少なくするように助言があるんだってー。本気での対戦は精神力を疲弊させるから、様子見をしていなくても元々対戦数自体は少ないみたいなんだけどねー」


 ふむ。

 たしかに正式ランキングが決まるまでに対戦をたくさんして勝利すればランキングに載る事はできるが、その場合はターゲットにされるということか。

 ランカーはポイントも多くなるし……。

 いやまてよ、普通にしたくない対戦は断ればいいだけじゃね?


 「でもターゲットにされても対戦したくない相手なら断れば良いだけじゃないの?」


 「そうそう! 私もそう思ってこっそり匿名で掲示板にその辺を聞いたらね! それを知らないとかお前1-5のランカーの3人のうちの誰かだろとか匿名なのになぜかバレちゃって……。あ! それは良いんだけど、多くがバカにしてきた中で教えてくれる人もいてね。なんでも普通は対戦の申し込みを受けたら受諾するのがあたりまえらしいのよ。この高校に所属している時点で同世代のトップクラスという自負があって対戦を断るのは周りから侮蔑される行為だって!」


 葉月さんも同じく個人戦のランキングのことを調べたようで、自分で調べたことを教えてくれる。

 対戦を受けて断るのは自分の能力を信じているから誇りが許さないのか。


 「葉月さんは対戦の申し込みをどうするの? 受ける?」


 「そんなわけないじゃない! このまま対戦をしなければすぐにランクから落ちるだろうしいつも通りよ。ね、由愛!」


 「うんうん。30件くらい申し込みが来てるけど全部断るつもりだよー。蒼月君はどうするのー?」


 「いや……それが一件も対戦の申し込みがきてないんだよね」


 「「ええ~!」」


 そりゃ朝から30件も対戦を申し込まれていたら1位の俺はもっとかと思うよね。

 でもゼロなんだよなぁ。

 俺がこのまま対戦をしなければ必然的に順位がさがるし総合ランキングにも載らないから、何らかの話し合いがあったのかもしれない。


 「たぶん俺を1位から引きずり下ろすために対戦をさせなければいずれ下がるってことじゃないかな」


 「それってでもおかしいよねー。プライドは何処に行ったのよー」

 

 七海さんが対戦を受けたら断らないはずなのに1位相手に申し込まないのはおかしいと言うと、葉月さんがおもむろに立ち上がる。


 「きっと蒼月君に負けるのが怖いのよ!」


 葉月さんが良く通る大きな声で周りを煽る。

 葉月さんって興奮したら大声になるのはどうにかした方が良いと思うんだよね……。


 「葉月さん声。どのみち俺に対戦が来ても俺は断るんだから」


 「ご、ごめんね」


 「でも蒼月君は対戦を申し込まれたら断っちゃうのー? もう蒼月君はやっちゃえばいい気がするー」


 七海さんがとんでもない事を言いだす。

 たしかに東三条さんの対戦で彼女自身が魔法を初手で使えばまず勝てると言う話をしていたから、それ基準で言えばステータスを偽装した状態であっても殆どの相手に勝てるはずだ。

 ハブられたりボッチになるのは嫌だけど、無駄に注目を浴びるのもしたくないんだよなぁ。


 「うーん。もう十分に対戦数をこなしてるしこれ以上は良いかな」


 「蒼月君らしいねー」


 「でも中間試験がない代わりに対戦が始まったからポイントは個人評価にかなり重要そうだよね!」


 葉月さんの言う個人評価点は確かに気になる。

 2年生に上がる時にどうせなら上位クラスに行きたいという気持ちもあるからだ。

 ただ、対戦の結果をどういう評価係数で計算しているかは表明されていないので上位クラスには加算したりしそうな所がこの学校の怖い所だ。


 「対戦による評価点数は気になるね。そうなると対戦はした方が良いって事になるけど悩むなぁ」


 「うーん。とりあえずはランク外になるまでは私たちはおとなしくしておこうかって話してたのー」


 たしかにまだ期間は長いから様子見するのも悪くないと思う。


 ピコン


 そんな話をしていると端末がなったので見てみると、鏡君から対戦の申し込みが届いていたので俺はそっと拒否を押したのだった。


 

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