第57話 全裸事件

 「じゃあそろそろ、行く? 父さんたちは探索者復帰の手続きで一度ギルドによるんだっけ?」


 「そうだな、復帰の手続きと貸倉庫に置いてある装備を母さんと取りに行ってくるよ」


 「了解。じゃあその間に俺は昨日、手に入れた魔石を企業買取所の方に持って行こうかな。ミノタウロスの魔石がまだ買取価格上昇中だったはずだから。今宵はどうする?」


 俺と両親の取りあえずの行動は決まったが、今宵はどっちについて行っても良いしついて行かなくてもよい状態だ。


 「うーん。マコトちゃん達と合流する時間にはまだ早いし、ミノタウロスの魔石を売る所を見たいからそっちに行こうかな」


 「ギルドと殆ど同じだぞ? まあ良いか」


 魔石を売る所を見たってやる事はギルドと同じだ。


 「うーん、そっちの方がなんか面白い事が起きそうな気がする! それよりもお兄ちゃん見てみてっ。今宵もチェンジで服を瞬時に着替える事ができるようになったよ!」


 そういって今宵はチェンジの話をすると、おもむろに第一東高校の女子用制服、男子用のヅカジェンヌヴァージョン、お気に入りの私服、ジャージ、そして全裸……にチェンジした。


 「きゃあああ!!」


 俺は正面、両親は後ろから今宵の全裸を唐突に見る事になってしまった。

 流石に予想外すぎるでしょ。

 顔は幼く見えるが、体の方はそれなりに成長していたようだ。

 大きくもないが、小さすぎもしない。


 バッチリ拝見させてもらった後で、今宵は下半身と上半身を手で隠してしゃがみ込んだ。

 お尻がたぶん両親に丸見えだぞ。


 「み、見ないで!」


 「いや、そういう時こそチェンジだろ」


 『服が瞬時に着替えられるの』と言って見せていたんだから、全裸になった瞬間に別の服に変えられたでしょ!


 「あ、、そ、そうだった。チェンジ!」


 すぐに着替える事ができる事を思い出した今宵は東校の女子用の制服にチェンジした。


 「見たよね?」


 「いや、あれは仕方ないだろ。バッチリ拝見したよ。むしろ被害者は俺と父さんと母さんだろ」


 俺は俺だけが追及される事を防ぐために、後ろでビックリしていた両親を巻き込んだ。


 「ああっ 後ろからも見られてた!」


 「今宵、家族の前だからまだ良かったが、破廉恥な事はダメだぞ」


 父から真顔の注意が入る。


 「というか、なんで着替えの登録に全裸があるんだ?」


 俺は何でそんなミスをしたのか今宵に聞いてみると、


 「そんなのお風呂に入る時に一瞬で脱げるんだから登録するでしょ!」


 確かに! 盲点だった。

 俺も登録しておこう。

 服や装備はクリーンをかければ、綺麗な状態も維持できるしね。


 体もクリーンで綺麗になるって? 

 まあそうなんだけど、お風呂に入るのってなんか疲れも取れるし良いよね。


 「まあ、お風呂に入る時には便利そうではあるけど、そんなミスしてたら使えないだろ」


 「そうよ、人前では使わない魔法とは言っても気をつけるのよ」


 母からも注意が入る。


 「ううっ。うん。気を付ける」


 ミスを反省して今宵は気を取り直したようだ。


 「よし、じゃあもう行くか」


 父が全員に号令をかけると俺達は家を出て、ギルドへ向かった。



 昨日の夜に大体の話はしているが、いくつかの決め事をしていたので向かいながらその確認をする。


 今日のメンバーは全員で7人なので、パーティが組める人数を一人上回ってしまっている。

 そこで現在一番レベルの高い俺が単独で動き、他の6人は父さんをリーダーにしてパーティを組んでもらう事になった。


 「しかし矜一、レイドパーティは本当に組まなくて良いのか? お前の話からすると、今日は殆ど全てをこっちのパーティで倒す事になるが、それだとお前に経験値は入らないぞ」


 父親がレイドパーティを組めば俺にも経験値が入るぞとという話をする。


 「そうなんだけど、さすがに俺がたった一人増えるせいで全体の経験値が50%になるのはね」


 「きぃちゃん達も誘えれば良かったんだけど、さすがに夜遅くに連絡して次の日の早朝にダンジョンって言うのは予定が合わないだろうと思って誘ってないしね」


 昨日は家族で夜遅くまで話し合っていたから、そこから今宵の友人を誘って次の朝6時に集合なんていうのは確かに急すぎるし誘われた方も困るだろう。


 「まあ、俺は11階までの露払いとトラップ部屋に着いたら待ち時間のあいだに皆の所を回って、魔力を流したりして魔力操作なんかのスキルが覚えられるように、今日は裏方に徹するよ」


 「悪いな、矜一」


 父親が謝って来るが、今日の俺はガイドとして頑張るぜ!


 しかしせっかく魔法陣転移ができると分かっても、メンバーが行った事のない階層には連れて行けない事が残念だ。


 それでも帰り時間が短縮されるだけで、往復する時間が半分になるから凄いけどね。







 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る