第56話 ご飯論争
次の日。
今日は家族とマコト達7人でダンジョンに行く事になっているために、5時30分に起床した。
端末を見ると、昨日卸したオーク3匹とミノタウロスの買取の査定結果の通知が来ていたので承認する。
約140万円で売れた。
今宵との半額なので一人頭、約70万。
もう学校に行かなくて良いんじゃないかな?
しかも魔石は抜き出してアイテムボックスにしまったままで、まだ売っていない。
昨日の夜にパワーレベリングの件で矜侍さんからの返信があった。
そこでは俺が思っているようにパーティを組めば一気にパワーレベリングをする事はできるが、戦いの経験が疎かになると、対処が出来ずに強くなっても負けるから気をつけろ、基本を大事にしろと書かれてあった。
また、パーティを組んで別々の事をするだけで自分がしていない事の経験は溜まるのか? という事については、自分が経験する1000分の1くらいは入っているという事だった。
1000分の1というのは単に分かりやすく説明をするために言った話だそうだが、結論としてはゼロではないが、ほぼ経験値は溜まらないという事だ。
ただし、壁を越えた時に選べるスキルや魔法にはその少しの経験値でも影響があるために、覚える事が出来るリストにそれらのスキルや魔法が出現する事があるらしい。
当然、スキルや魔法を覚える程ではなくても、覚えようと努力していればその場合は壁を越えた時に選べるリストに載る確率はその分、高くなるそうだ。
今宵が壁を越えた時に、ステータスの偽装が出現したのは恐らくこのためだろうと思われたので、昨日の夜は家族全員で鑑定付与の魔石を持って訓練をしたり、魔力制御の練習、矜侍さんから聞いた事の共有に時間を費やした。
父と母は既に生活魔法を取得しているために、魔力制御や鑑定に抵抗する事にも直ぐに適応していた。
「おはよう」
俺はリビングに降りると、朝の挨拶をする。
既に家族の全員が起きていて、父と今宵は食卓に座り、母は忙しく台所で何かを作っていた。
「おはよー、お兄ちゃん」 「「おはよう」」
挨拶を交わすと、俺も食卓に座る。
「今日の朝は今宵が作ったサンドイッチよ」
スリッパの音をさせながら、母親が食卓に並べる。
「へへー、お母さんが朝早くからお昼のお弁当を作ってたからね。今宵が作ったよ!」
昨日の夜に母親はマコト達の話を聞き、7人でダンジョンに行く事になると思うと聞くと「ピクニックね! 明日は早く起きて皆のお弁当を作らなきゃ!」 と意気込んでいた。
ダンジョン探索をピクニックて……。
今宵もそうだが、ウチの女性陣はお気楽すぎない?
マコト達には昼の弁当はいらないという事を今宵に連絡してもらっている。
いや、俺も3人の連絡先は聞いたからね?
でも女性に気軽に連絡するのは気が引けるし、聡に送るのも……。
無口キャラすぎるんだよなぁ。
「美味そうに出来てるじゃん」
「でしょー、レタスもぱりっぱりだよ!」
俺がサンドイッチを褒めると、嬉しそうに答えている。
でもレタスはそれ新鮮だからで今宵の腕は関係ないと思う。
「あっ! レタスはお湯に5分くらいつけるとパリパリになるから! 手間をちゃんとかけているからね~」
俺の考えが見透かされたのか、レタスのパリパリに今宵から注釈が入る。
へー、しんなりレタスもお湯に浸けるとパリパリなのか。
「そう言えば矜一、お弁当はアイテムボックスに入れてもらえる? アイテムボックスの話は今日、一緒する子たちには伝えるのよね?」
母親が「手荷物で持って行けるけど、少し多いから出来ればダンジョンでは動きやすくしておきたいわ」と言っている。勿論、自分が食べる弁当を母親に持ってもらう訳にはいかない。
「うん、大丈夫。もう作り終わってる?」
「ええ、ここにあるのを仕舞ってもらえるかしら。サンドイッチは朝にしちゃったから、炊き込みにして皆によそって、おかずは大皿から取り分けるようにしたわ」
これまたご飯をよそうとよそる論争が起きそうな……。
まあどっちも正解だからっ。
よそうは支度をするって意味が元って感じかな。
え? なんだって?
ご飯を盛る派とつぐ派も忘れるなって? どれも正解だからっ!
ちなみに一番古いのはよそうで1000年前から使われている言葉です。
「矜一、どうしたの? アイテムボックスがいっぱいなら今宵に頼むわよ?」
俺が台所まで移動したのに直ぐにアイテムボックスに入れない事が気になったのか母親が聞いてきた。
「あ、いや俺の脳内でご飯をよそう派とよそる派が喧嘩しててね」
母親が俺に何を言っているのこの子は? という目で見ている。
「え? 盛るじゃないの?」
リビングにいる今宵から声が掛かる。
「盛る? よそうとよそるは聞いた事があるが……」
父親も参戦してきた。
そこは父さんにはつぐであってほしかった! ってこれって使ってない地域や場所だと何を言ってるか分からない論争なのか?
「そういう馬鹿な話は良いからお弁当をしまってちょうだい」
やいやいと言い合っていると、母親が強引に場を収める事に成功した。
「はーい」
俺は弁当をアイテムボックスにしまうとリビングに戻り、サンドイッチを食べながら今日の予定について話し合うのだった。
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