第33話 兄と妹②
「ここが探索者協会だ」
しばらく歩いて俺たちはギルドに到着した。
「すごーい、大きいね」
中に入ると俺は番号札を受け取り、待合室で今宵と一緒に座って待つ。その間に、ギルド内の事を今宵に教えていた。
「あそこに買取される素材やこなしてほしいクエストが貼られる掲示板で、近くのPCでも見る事ができるぞ。掲示板は内容を覚えて、PCの場合はそれを印刷も出来る。素材のクエストなんかを受ける時は一度受付に先に行く感じだな。取得してそのクエストが残ってたら、後からでも良いけどな。魔石だけなら後からでも問題ない」
「へー、お兄ちゃんは何時もクエストしてるの?」
「俺はしてないな。魔石を売って貢献ポイントにはしてるかな」
他にも上の階層の話や絡まれた時の話をして一人ではダンジョンに行かないように言い含めていると、自分達の番号が呼ばれた。
「すみません、妹の探索者登録をしてほしいのですが」
「はい、妹さんですね。登録料が7500円となっております」
あれ? そう言えば俺の登録の時には登録料は取られていない。
学校端末があったからなのかな?
今宵が自分の財布からお金を出そうとしていたので、ジェスチャーで静止させ俺が払う。
「これでお願いします」
「はい、お釣りの2500円です。ではこの用紙に必要事項を書き込んで下さい。それからこちらの端末に1分ほど触れてもらう事で、生体情報をスキャンしますので合わせてこちらもお願いします」
「はい」
俺はやり取りを妹と交代する。俺の場合は学校端末があったから、用紙への必要事項記入とかはなかったなと思いながら見ていた。
「はい、問題ないようですね。ではカードが出来るまで少々時間が掛かりますので、其れまでに探索者証で出来る事や注意事項など基本的な事を説明させていただきます」
そう言うと、受付のお姉さんはダンジョンへの入り方や緊急時の助けの求め方、クエストや貢献ポイントの話を今宵に話していた。
「何か気になる事や質問はございますか?」
「特にないです」
「では、探索者証がそろそろ出来ていると思いますので持ってきます。こちら、探索者の規約や注意事項などが確認できる小冊子ですのでお持ち帰りください」
俺も貰った小冊子だ。
「はい」
しばらくして今宵の探索者
「これが今宵さんの探索者証です。なくした場合は再発行に3800円かかりますので無くさないようにして下さい。ではご利用ありがとうございました」
「「有難う御座いました」」
礼を言って振り返ろうとすると今宵が声をあげた。
「あっ」
ん? 気になって俺は今宵が見て声をあげたクエストボードのあたりを見ようとするが今宵に引っ張られて見えなかった。
「お兄ちゃん。早くいこっ」
登録後は一応このギルドの2階より上や雑貨屋を案内するつもりだったので、直ぐにそこに行きたい様だ。
2階に上がる階段に足を掛ける直前に俺はクエストボードの方を確認する。
そこには椿が九条、一ノ瀬、堂島、榎本の5人で居てダンジョンに潜る前にクエストボードを見に来ていたようだった。
椿は順調に……パーティを組んで探索をしているようだ。
今宵は椿と仲が良い筈だが、俺と合わせないようにしたのは他の年上4人がいたから人見知りか?
まあどの道、椿たちとは一緒にダンジョンに行かないので話す必要もないか。
しかしギルドに来るようになって思ったのは、クエストが想像と違っていて素材の物納や魔石の納入以外はあまり種類がなかった。
肉……も素材のウチに入る気がするしね。
街を防衛するための緊急クエストやゴブリン村の討伐といったクエストはないのだ。
階段を登ると2階は資料室と売店、3階は別の資料室と食事が出来るテナントが幾つか入っている。
2階の売店で今宵用の帯剣ベルトを購入し、地下1階の練習場でこっそりと出した剣を2人でそこで装着した。
「ジャージに帯剣ベルトと剣かー。カッコいい装備が今宵もほしいなぁ」
「俺の制服の丈を直す時に1着、今宵用にSサイズにしてもらったから、5月6日辺りに受け取れると思うぞ? ただ、男性用だし下はズボンだけどな」
「えー? ほんと? ならお揃いだね。それまではジャージで我慢かなー」
男性用でズボンと言うのは気にならないのか。
と言うか、ワッペンを外せば丈を直して妹が着ても良いのなら、新品で校章を付けなければ直ぐに購入できるのでは?
それならきちんとした女性用が買える。
校章さえつけなければただのコスプレだし問題ないよな。
今は時間が早いから、ダンジョンに潜った後の帰りにでも学校に今宵と一緒に寄ってみるか。
「ほっ、よっ、たぁ!」
俺が制服の事を考えていた間に、今宵はベルトから剣を抜いて試しているようだ。
てか、ジャージなのに妹が剣を持って動くと似合っているのはなんでなの?
「お兄ちゃん、必殺技を考えた!」
ん? 今宵がハッとした表情で言ってくる。んん?
「んー? ど、どうぞ?」
とりあえず促してみるか。
「行くよ! 必殺、3分クッキング! 3時間スペシャル!」
どーん!!
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