第5話 レベルの壁
日曜日。
今日は少し体を動かしておこうと朝食を食べた後に中学の時のジャージに着替えた俺は玄関を出た所で軽く体操する。
「お、矜一君も頑張ってるね。ウチの椿も朝からダンジョンに行くって言って昨日も来た友人たちと朝から出かけたよ」
声がした方に振り返ると、椿の父親である
椿の家はウチの3軒隣なので結構な確率で遭遇する。
しかし2日連続ダンジョンデートか。
これもう会わない日はないとかそんな感じなの?
良く晴れた日なのに、俺の心は朝から昨日と同じ曇天です。
「浩二さんおはようございます。今日は天気が良いので体でも動かそうかと思ってます」
「若いって良いねぇ! また今度、椿とも行ってやってよ」
一緒に行きたいんですがね……、誘われないし会話すると常に嫌悪感丸出しなので誘いにくいんです。
「勿論です。じゃあ少し走ってきます」
俺は短く答えるのが精いっぱいだった。
「おう、気をつけてな」
玄関前の通りを抜けて俺は川沿いに向かって走り出す。
中学で呼ばれたデブというあだ名からすれば巨漢のように思えるかもしれないが、自分ではぽっちゃりだと思っている。
173センチで85キロ。運動能力にしても中学3年時で運動能力テスト2級、体力測定A判定でありクラスでも実は上位だった。
レベルで身体能力や知能が上がる事は周知の事実である事から確かに落ちぶれはしたけれど、馬鹿にされるレベルではなかったと思っている。
動けるデブだぜ!
まあレベルアップだけで上がる能力はそこまで大きくはなくて、その後の訓練や学習を積極的にすることでレベルアップの恩恵は大きく実感できることになるみたいではあるけどね。
軽く流しながら近くの遊歩道へと入る。
川の流れの音が心地よい。
時折、すれ違う人から「おはよう」との声がかかるのでこちらも挨拶をし返す。
てかこの挨拶、こっちからするとなると結構悩む。
挨拶されるからこういうものかと自分もすれ違う人に挨拶をしていると、うっとおしそうにする人や無視はまだいい方で稀に舌打ちが聞こえてきた事があり、基本自分からはしなくなった。
まあ、今の俺が今宵のような相手に挨拶なんてしたら、そもそも事案発生で捕まりそうだしな。
挨拶もできないこんな世の中になったなんてポイズン。
走っていると心の曇天が気にならなくなる。
どこかで読んだデータで精神的なストレスは体を動かす事で解消できるんだそうだ。
確か、運動する事で分泌されるセロトニンは精神安定剤とよく似た分子構造なんだとか。
そして疲れてぐっすり眠れる事からも疲労回復やストレス解消になるらしい。
走りながらレベルの事を考える。
殆どの人は普通に生活しているだけでも成長するにつれてlv5までは上がる。
そこが一つの
探索者やプロスポーツ選手でない限りは半数がそこでレベルの上昇は止まる程、lv6になる事は難しい。
それを超えた半数も殆どがlv10で頭打ちだ。
レベルは5単位で次に突破するまでが難しくなり、高くなるほどその難易度は劇的に大きくなると言うのが現在の定説になっている。
このレベル差というのは身体能力、知力ともに大きく差が出る事から覆しにくいと言われているが、レベルがなかった時代に普通の人とオリンピック選手で天と地の差があったようにlv1同士、lv5同士などでもそれと同じだけの差が当然開く事になる。
俺で言えば、その5単位にある壁が1でもあると言う事ではないかと考えている。
そもそも、このレベルの壁がある以上国立第一東校であってもレベルの上昇が停滞する人が出てきているはずだ。
1-5クラスに関して言えば、椿が3位の成績で入学した事から多くがlv5で6以上はまずいないのではないかと思う。
それと同時に中学入学で国立第一からスカウトが来た今宵の事を考えれば、スカウトが来るほどの人材が入学したら1-4クラスでしたと言う事もないだろう。
普通に考えれば1-1か1-2に1年次は入学していただろうと想像できる。
であるなら、今の今宵のレベルは5だったはずであるから、国立と一般の差があるとはいえそれは技術的な事や知識に大きな差がつくのであってレベル差はそれほどでもない可能性がある。
国立第一大学卒業のトップレベルで30に到達できるかできないかという話を聞いた事があった気がする。
そう考え逆算すると1年の他クラスはlv10以下が大半か?
ただ、普通よりレベルが上がりやすい事も確かである。
一般の大学を卒業する場合その殆どがlv15以下となる。
探索者のレベルが一般より高いのは探索者学校卒業者が多いせいかと思っていたがもしかするとダンジョンで魔物を倒す事がレベルが上がりやすい秘密……?
探索者登録をすると一定のクエスト(納品など)が発生して階級が低いとその頻度も高くなる事とダンジョンでは命のやり取りになる事、自分のレベルが上がらない事でその危険が他の人より大きいために、魔物を倒して経験値を得るというゲームのような考えに至らなかった事に気づく。
そうとなれば学校から支給された端末で探索者登録も済んでいるのと同じ状態だ。午後からダンジョンに行くべきだなと考えがまとまった。
――――――――――
本文外
ここでいうレベルの「壁」の壁にはただの障害ではなく、限界という意味合いを含んでいます。(壁の後の超えるはそのために、こちらの漢字を使います)
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