98 嵐の前日


 まだ夜が明けきっていない早朝……

 シンはモリスと共に厨房に居た。



「すみませんモリスさん。後はお願いできますか?」


「はい、もう大丈夫です。手伝いも来ますので」


「急に無理を言ってすみません」


「全然大丈夫ですよ。仕込みを手伝って頂いて、こちらこそすみません」


「いえいえ。じゃあ、ちょっと出かけてきます」


「はーい」


 シンが向かった場所は、いつもの野外劇場。

 

 昨日の暴風雨で散乱している草や葉っぱを一人片付け始める。

 それは、午前から練習するというレピンとの約束を守る為であった。

  

「よいしょっと」


 淡々と作業を進めて行くシンは、朝食も取らずここで掃除をする。




「うーん……」

 

 ナナちゃんの声が…… 


「……あっ!? ごめんなさい! ついウトウトと!?」


 急いで体を起こすユウは、見慣れた眺めに驚く。


「あっ、あれ!? 確か僕は…… 夢じゃないよね!?」


 そう、夢じゃない。と、いう事は……

 また、またやっちゃった……

 僕はナナちゃんの話の途中で寝てしまったんだ!?


 どうして…… お昼だって沢山寝てたくせに、どうして仲直りしたばかりの大切な時に寝てしまうのかな僕は!?


「もぉーーー!」


 自分にいら立つユウは、シンがいない事に気付く。


「今何時?」


 まだ6時半…… 馬の散歩かな?


 と、兎に角、ナナちゃんに謝らないと…… 今日、練習に来てくれるかな!? って、練習もどうしよう!? 何も考えてないよ…… また同じになってしまう。

 

「あー、もぉー!」





 その頃ピカワンは、ある決心を固めていた。


「……ちょっといいっペぇかぁ」


「……」


「話があるっペぇ」


 その決心とは、祖父と会話をすること。


「ほぉ~、お前が話しかけてくるとはの、いつ以来かの? 覚えておらんの~。昨日の大雨はこれを予見しとったのかもしれんの?」


 くっ、いきなり嫌味から入って来たっぺぇ……

 腹が立つけど、我慢するっペぇ。


「じいちゃん」


「なんだの?」


「どうして村長さんや、シンの邪魔をするっペぇ?」


「邪魔? 邪魔なんぞしとらんがの?」


「おらは知ってるっペぇ」


「何のことだの?」


「じいちゃんは村長さんやシンに協力しないよう周りに言ってるっぺぇ。それは邪魔してるっぺぇ!」


 冷静に話をしようと決めていたが、惚ける祖父を見てつい語気を荒げてしまう。


「それは邪魔ではないの、強要している訳でもないの、わしらの考えを伝えているだけだの」


 その言葉を聞いたピカワンは、呆れた感情を声に乗せて口に出す。


「……意味が分からないっペぇーね?」


「何がだの?」


「前はこの村にはガルカスあいつらは居なかったっペぇ!? 平和な町だったって言ってたっペぇ? その頃に戻ろうとしているのに、どうして邪魔をするっペぇ!?」


 今度は逆にスピワンが呆れたかの様な声を出す。


「……無駄だの」


 その言い方に、ピカワンは感情を露わにする。


「何がだっペぇ!?」


 早朝から声を荒げ言い合いをする祖父とピカワンを、ピカツーと祖母は無言で見ている。


「ガキに何を説明しても無駄だの。理解できる訳無いの」


 ガキ……


「ふっ、ふふ」

 

 ピカワンは小馬鹿にした様に笑う。


「どうやらお互い様っぺぇ」


「……どういう意味だの?」


「死にかけで脳みその腐ったジジィには、おら達がやろうとしている事は分からないみたいっぺぇ」


「なんだのその言い方は!?」


 スピワンも声を荒げる。


「息子夫婦がいない間、お前の世話をしているのは誰だの!?」


「恩着せがましい事を言うでねっペぇ、別に頼んでないっペぇ」


「恩など着せとらんの! 事実を言っておるだけだの!」


「世話するのが嫌なら、いつでも出て行くっぺぇーよ」

    

「あー、出ていけのぅ! 二度と帰ってくるなの!」 


 その言葉を聞いたピカワンは家を飛び出して行く。

 黙って見ていたピカツーは、祖母と目を合わせた後ピカワン追う為に出て行った。

 

「じいさん……」


「黙っとれの!」


 そう言われた祖母は、開けっ放しの玄関のドアを閉めに向かい、ピカワンを探すピカツーの背中を見ていた。

 

 いったいいつまで…… いつまで続くのかの、この村の争いは……




 一方ナナの家では……


「ジージおはよう」


「おはよう。昨日は酷い雨だったのう」


「うん」


「畑への道が崩れとらんといいがの」


「うん……」


 昨夜のことが嘘の様に何の変化もない日常であった。



   

 時刻は7時前、モリスの食堂には続々と少年少女達が集まり始め、ナナも既に来ていた。


「モリスさーん、ハンボワンスープをお願いするっペぇ」


「はーい」


「おらも同じの頼むっペぇ」


「はーい」


「フォワフォワフォワー」


「はい!?」


「プフフ」 「クッフフ」


 

 少年達から笑い声が漏れる。


 

「フォワも同じの頼むって言ってるっぺぇ」


「同じのね、はーい」


「クルクルクル、クルは手伝うよ」


「えらいねクル。お姉ちゃんはお手伝いをするクルのお手伝いをするね」    


「クルクル~」


 賑わう食堂に、ユウが入ってくる。


 あれ? 皆いる!?

 

 そう思っているユウの目にナナの姿が映る。


 うっ!? ナナちゃん……


「おはようっぺぇ」


 ナナはユウを見つけると、笑みを浮かべあいさつをした。


 えっ……


「おっ、お、おはよう」

 

「ユウ君おはようっぺぇ」


「フォワフォワー」

  

 ユウに気付いた少年達も次々と挨拶をする。


「皆、お、おはよう」


 あれ? いつもと同じ…… まさか、昨日の出来事は本当に夢だったのかな?


 そう思ったユウはナナに目を向ける。

 すると、ナナはスプーンを少し持ちにくそうにしていた。


 あっ!? ナナちゃんの手……

 やっぱり、やっぱり夢じゃなかったのか…… 



 

 野外劇場で一人片づけをしているシンの元に、ピカワンが現れる。


「シン…… 何してるっペぇ?」


「ん? おぅーピカワン! おはよう」


「おはようっぺぇ……」


「いやな、昨日の大雨と風でえらい事になっててさ、片付けていたんだ」


「……おら達に言ってくれれば一緒にやるっぺぇーよ」


「今日はさ、レピンと約束してたからさ。朝から練習するって」


 そう言って、一人で黙々と掃除をするシンをピカワンは見ている。

 辺りを見回すと、落ちている葉っぱなどが他の場所より明らかに少ない。

 だいぶ前から作業していたのだと容易に理解できる状況であった。



 レピンとの約束を守るために、朝から一人で……

 おらは…… おらはシンの事を信じてついて行く。



「手伝うっペぇ」


「ん? メシは食って来たか?」


「まだっぺぇけど、昼に沢山食べるっぺぇ」


「そうか。じゃあ~、どっちが沢山食うか勝負するか?」


 沢山食うか勝負…… ふふ。


「時々思うっぺぇけど……」


「ん? どうした?」


「シンは子供みたいっペぇ」


「んなことねーだろ? りっぱな大人だよ」


 そう言ったシンは、ズボンを下ろす仕草をする。


「んふふ、ふふ。見せなくてもいいっぺぇ」


「そうか? 一見の価値はあるぜ。あははははは」


「んふふふ、さっきの発言は撤回だっぺぇ。おっさんみたいっぺぇ」


「あははは、どっちだよ」


 そのやりとりを見ていたピカツーの元へ、二人の笑い声はまるで風のように流れてきていた。




「皆、ごめんなさい」


 プロダハウンへ移動した少女達の前でユウは謝罪をしていた。


「昨日は僕が買ってあげたとか、上から目線なことを言ってしまったり、指摘された事を素直に認める事が出来なくて、本当にごめんなさい」


 俯いて謝るユウを、少女達は黙って見ている。


「まぁ、分かればいいっぺぇーよ」


 そう口にしたのはリンだった。


「あたしのアンクレットを持ってるっペぇ?」


「あっ!? うん!」


 返事をしたユウは、昨日拾っていたリンのアンクレットをポケットから取り出して渡す。


「これでまたナナとお揃いだっぺぇ」


「そうっぺぇね」


 リンとナナの二人の笑みを見たプルが口を開く。


「これで元通りだね」


「本当にごめんなさい」 


 プルはユウの謝罪に対して頷く。

 それを見たユウは、続けて話をする。


「シンが作曲してくれた曲に僕が作詞をしないといけないけど、それが全然まだ出来てなくて…… それで練習が単調になってしまっていて…… だから、まだしばらくは同じ事の繰り返しになると思うけど、基礎練習だと思って我慢して下さい」

 

「……我慢も何も、うちらは言われた事をするっペぇ」


 ナナちゃん……


「昨日は、うちもごめんなさい」


 ナナの謝罪を聞いた少女達は、驚いて一瞬ナナに目を向けた後、優しい笑みを浮かべる。

 

「クルクルクル~、練習始めよう」


「あっ、うん。そうだね。始めましょう!」





 ヨコキの売春宿やどでは……


「いいかい、近隣の村や町に行って、この村から出て行った奴等を探すんだよ」


「分かりやした」


「生活の保証はあたしがするから、この村に来たいって奴も探すんだ。売春宿の客として迎えれば、原則として村への出入りは自由だからね。客として寝泊まりさせればいいのさ」


「どんな奴でもいいんですかい?」


「そりゃ使える奴に越したことは無いけどねぇ……」

 

 あたしが出て行くように促した連中を戻そうとするなんて、不細工な話だねぇ……

 まぁ、数十人は戻ってくるかねぇ……


 このヨコキの目論見は外れる。


 時が来れば農業ギルドがそれなりの人材を送ってくれる約束は取り付けてある。

 金の為なら、Sランク冒険者がいるこの村に来てもいいなんていう、脳みその足りない馬鹿をあえて集めるのもいいさねぇ。


「どんな無法者やつでもいいさぁ」


「はい」


 裏の物流を掌握し、農業ギルドからのバックアップを得たヨコキは大きく動こうとしていた。


 昨晩はナナが居なくなってたのかい? 探すガキ共の声が村中に聞こえていたよ。

 フフ、ナナは冒険者嫌いのロスの孫娘だろ? 

 あたしが首を突っ込まなくても、勝手に騒ぎを起こしてくれるなんてねぇ。

 どうやら、あっちは放っておいても大丈夫だねぇ。

 ウッシシシシシ。

 

 ヨコキの企みは、メンディッシュを通じシンの耳に入る事になるのだが、シンはそれに対して何も策を講じなかった。




「ドンドン」


「誰かの? おぅ、どうしたかの?」


 ロスはピカワンの祖父、スピワンを訪ねていた。


「実はの、話があるのだがのぅ……」


 そう言ったロスの表情を見たスピワンは何かを感じ取る。


「……中で話そうかの」


 スピワンはロスを招き入れ、辺りを見回した後にドアを閉める。




「おはよう~」


「おはようでごじゃ……」


 ごじゃるの声をかき消すかのように、もう一人の門番が大声を出す。


「バリーさん!? おはようございます!」


「る……」


「あら~、元気そうねぇ」


「はい! めちゃくちゃ元気です!」


「今日はシャリィと二人で魔獣退治に行ってくるわ~」


「はい! どうぞお気をつけていってらっしゃいませ!」


 門番は笑顔でバリーを見送る。


「朝から魔獣退治だってよ! いや~、バリーさんって素晴らしい人だよな!?」


「……隣にいたシャリィ様が驚いていたでごじゃるよ」


「朝からバリーさんに会えるなんて、今日はラッキーだな~」


 ……いったいどうしたでごじゃるか急に? 昨日とは態度が違いすぎるでごじゃる。


「……」


 ……まっ!? まさか!? 


 ごじゃるはピンと何かを感じる。


 まさか、バリーさんと肉体関係に……


 ごじゃるは目を見開き、音を立てて唾を飲み込む。


「ゴクリ」


 こんな奴でもイケるでごじゃるかバリーさんは!?

 それは確かに、ある意味素晴らしい人でごじゃる……





 1日が終わろうとしていた夜、モリスの食堂にある人物が訪ねて来る。

 それは……

 

「シンさん!」


 皆で賑わっている店内に駆け込んできたのは……


「村長さん……」


 えっ、本当に村長さんだっぺぇ…… 

 

 急に痩せすぎてねっぺぇか!?


 短い間に面変わりしたレティシアを見た少年少女達の中には、直視出来ずに目を逸らす者もいた。


 村長さん…… 聞いていたよりも…… 

 

 ナナはげっそりと頬のこけたレティシアを見て俯く。

 そして、心の中で謝罪をする。



 ごめんなさい…… 何も出来なくて、ごめんなさい……



「どうしました?」


 シンの問いかけに口を開く。


「明日の午前10時に話し合いをしたいと……」


 話し合い…… 


 何かを感じ取ったシンは、ナナの事を気にかける。


「村長さん、外でお話ししましょうか?」


「いいえ! ここで構いません」


「けど……」


 レティシアはシンから目を逸らし、少年少女達を見つめこの場に居る全員に語り掛ける。


「場所は私の家です。明日の午前10時にドリュー・ロスさん、それにスピワン・プイスさんを始め、他にも沢山の方が来る予定です」


 ジージが……


 じいちゃんも……


 ナナとピカワンは祖父の名を聞き、床を見つめるかの様に下を向く。


「その話し合いにシンさんを始め、ピカワン君に、ナナちゃん達、皆にも是非参加して欲しいとご要望が……」

 

「俺達は構いませんが……」


 そう返事をしたシンはユウに目を向ける。


「うん!」


 ユウの返事を聞いたシンは、次は少年達に目を向ける。


 じいちゃん……


 ピカワンは顔を上げて答える。


「当然おらも行くっペぇ」


「フォワ!」


「ピカワンが行くならおらも行く」


「いぐっべぇ」   

  

 少年達の全員が参加の意思を示す中、まだ少女達からは返事がない。


「……」


 ナナ、どうするっぺぇ……


 リンはナナに視線を向ける。


「……うちも、うちも行く」


 村長さんの為にも、うちの言いたい事を言う!

 だけど今日は、ジージに会いたくない……

 帰りたくない……


 ナナの返事に続き、少女達も参加する意思を口にする。

 そんな中……


「あの~」


「な、なに?」


 ユウに声をかけたのは、プルであった。


「どんな話し合いになるのか分からないけど、クルはまだ小さいから、参加させたくないです……」


 確かにそうだ……


「うん、そうだね。クルちゃんには、明日は休んでもらおう」 


「はい、お願いします」



 夜も更けてきた頃、奥の席でレティシアはシャリィと何やら話をしている。

 殆どの少年少女達が食堂を後にしたが、ピカワンとピカツー、それにナナとリンの4人は食堂に残っている。

 それを見たシンはユウに声をかける。


「ユウ……」


「何?」


 シンの視線の先には、項垂れ元気のないナナの姿が。


「ナナちゃん、どうしたのかな……」


「たぶん、帰りたくないんじゃないか? 明日、急に決まった祖父との話し合いの前に、家でどんな顔して祖父に会ったらいいのか分からないんじゃないかな……」


 ……そうだよね。


「どうしよう?」


「部屋は沢山空いているさ」


 シンはそういうと、ピカワンの元へと歩いて行く。


「ピカワン」


「なっ、なんだっぺぇ?」


「ピカツーから聞いているよ。今日はここに泊まっていけよ」


 空き家で夜を明かそうと思っていたピカワンだが、シンの言葉に素直に従う。


「……分かったっぺぇ」


「ピカツーはどうする?」


「おらもここに泊まりたいっぺぇ」


「じゃあ、モリスさんに頼んでくるよ」


 厨房に居るモリスの所へと向かう途中、ユウに目を向ける。



 どっ、どっ、どうしよう!?

 なんて声を掛ければ!?

 女の子に泊まっていくかなんて、どういう風に言えばいいのかな……

 だっ、駄目だ! もしかすると、僕の部屋に誘ってるみたいに誤解されるかもしれないし、言葉が見つからないよー、分からないよ。

 だけど、これは僕の役目なんだ。少女達みんなの事は僕がしないと……


 ユウは席を立って二人に声をかける。 


「ナッ、ナナちゃん、リンちゃん」


「何だっペぇ?」


 リンは返事をしたが、俯いていたナナは返事はせずに黙って顔を上げる。

 そのナナの顔は、ユウが初めて見る表情であった。 


「あっ、あの、もぉ、もももし、帰りたくないのなら、ここに泊って……い、いく?」


「わぉ~、意外に大胆っぺぇねぇ~」


 ユウの言葉を聞いたリンが揶揄からかう。


「ちっ、ちち違うよ! ぼ、僕が誘っているんじゃなくて、部屋は沢山空いているから!? だ、だから……」


 その言葉を聞いたナナはユウを見つめ礼を言う。


「ありがとうっぺぇ、けど……」


「あたしはお邪魔虫っぺぇねぇ」


「そそそっ、そんな事無いよ! リンちゃんも是非」


「そうっぺぇ? じゃあ、あたしは、シンと同じ部屋がいいっぺぇ」


 その言葉を聞いたユウが目を剥く。


「冗談だっぺーよ、冗談」


 はぁー、びっくりしたぁ……


「ナナ、どうするっぺぇ?」


「……」


 ナナは奥の席でシャリィと話をするレティシアに目を向ける。

 それに気づいたユウが口を開く。


「あっ、レティシアさんの家に泊めてもらう?」


「……うん」


「聞いてくるね」


 ユウは席を立ち、レティシアの所へと向かう。


 少女達とユウのやりとりを見ていたバリーは思った。


 いいわ~ユウちゃーん。ういういしくて、昔のあちきにそっくりだわ~。っと!



 レティシアの承諾を貰ったユウは、厨房に居るシンに声をかける。


「シン、ナナちゃんはレティシアさんの所に泊まる事になったから」


「そうか…… モリスさん、一部屋だけお願いします。泊まるのはピカワンとピカツーです」


「はい」


「ユウ、俺はあの子達の家に行って泊まる事を伝えてくるよ」


「うん、分かった」 


「先に休んでてくれ」


「うん」


「シン」


 外に行こうとするシンにバリーが声をかける。 


「いいんだ、俺が行ってくるよ」


「そう?」


「ありがとうバリー」


 外に出たシンは夜空を見上げる。

 

 ふぅー、明日か……

 あの人達から話し合いを……


 この後シンは、ピカワン、リン、ナナの家の順番で訪ねて行く。

 一悶着ひともんちゃくあるかと思われたが、老人達は意外にすんなりとシンの話を受け入れる。


「と、いう訳でロスさん。ナナちゃんはリンちゃんと村長さんの家に泊まる事に……」


「……わざわざすまんかったの」


「いいえ。では、明日」


 その言葉を聞いたロスは、シンの目をじっと見つめながら二度三度と頷いた後ドアを閉める。


「……」 

 

 冒険者のシンが訪ねても、穏やかな老人達の態度は、まるで嵐の前の静けさを感じさせるようであった。


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